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史上最高の天才錬金術師はそろそろ引退したい  作者: 御子柴奈々
番外編 2 リタ大佐の軍事教練
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第54話 リタ大佐の軍事教練


 どうもリタです。先生は今迷宮に行ってしまい不在です。と言っても、先生の出勤は週二回なので授業とゼミには顔を出してくれます。でも、先生は今までなら出勤のない日でも研究室にいて、私もそこに遊びに行っていたので寂しいです。


 だがしかし! 今の私には使命があるのです!!


 それは、プロトと一号から四号までのお世話です。先生にはこう言われて任されました。


「リタ、こいつらのこと頼んだ」

「任せてください!」

「なかなか言うことを聞かないかもしれないが、しっかりと教育してやってくれてもいい。ただ厳しいのはダメだぞ? 体罰とかな」

「先生、そんなことはしません。私がしっかりとこの子たちを導いてみせます!!」

「お、おう……それじゃあ、任せた」


 そうして先生は迷宮に行ってしまいました。寂しいけど、今の私には使命があるのです。そう、この本を読めば教育の何たるかがわかるはず。


 その本とは軍事教練のものでした。軍人である兄の部屋にあったのですが、それを拝借。まぁいいでしょう。有効利用するんだから。


「ふむふむ……」


 読んでいくと、やはり厳しい指導が大切だと書いてあります。それに規律も。


 なるほど。規律かぁ……これは何をすれば……。


 そう思っていると、頭にあるイメージが浮かんできました。


「あ! そうだ、みんなで行進の練習をすればいいんだ!」


 閃きました。行進。そうです、マーチです。みんなで足並みを揃えて進むあの姿はまさに規律の象徴。野菜たちには行進を教えよう。難しいことはできないけど、行進なら何とかなるはずっ!


 それで、私の立場だけど……そうだ、大佐にしよう。こう言うのは軍曹とかが相場が決まっているらしいけど、私はもっと上に行くのです。


 ちなみに軍の階級はこうなっているみたいです。本に書いてありました。


 総司令官→元帥

 士官→大将>中将>少将>大佐>中佐>少佐>大尉>中尉>少尉

 准士官→准尉

 下士官→兵曹長>曹長>軍曹>伍長

 兵→兵長>上等兵>一等兵>二等兵


 大将だと盛りすぎなので、大佐にしました。


 私が天に立つのだ!


 と言うことで、士官の中でも大佐に自分を任命しました。リタ大佐です。なんかカッコいいです。あの野菜たちは二等兵にしておきましょう。大佐から直々に指導とは、彼らも贅沢なものです。



 そしてある日、私はホイッスルを首にかけて先生の研究室に向かいました。


「整ええええええええええええええ列ッ!!」

「「「「「……!?」」」」」


 中にいるプロトと一号から四号の五人がビクッとします。最近は言うことを比較的に聞くので、厳しいことは言いませんでしたが、今日からは違います。私が彼らを導くのです。


「ほらっ!! ちゃんと並んでっ!!」

「「「「「……?」」」」」


 全員がきょとんとした様子でおずおずと移動して並びます。


「はい、ではしっかりと聞くように」


 全員はじっと私を見ています。ふふん。最近はずっと私がお世話してきましたからね。話は聞いてくれます。


「今日から行進の練習をします」


 すると、全員が互いをキョロキョロと見ながら慌て始めるので喝を入れました。


「……静粛にっ!! いいかい、諸君には立派に育つと言う使命がある。あなたたちを生み出した先生にしっかりといいところ見せるのですっ!」

「「「「「……!!」」」」」


 感銘を受けたようで、みんながぎゅっと右手をあげます。でも、これも正していきます。


「まずは敬礼からっ! 返事をするときは、こうすることっ!!」


 そして私がお手本を見せます。右手を頭の前に持ってきて、しっかりと指を伸ばして敬礼ッ! すると、みんなもやってくれました。


「よしよし。いいよ〜、その調子だよ〜」


 おっと。つい優しい声色に。私は鬼軍曹……じゃなくて、鬼大佐。本当は大佐がこう言うことをする立場じゃないのは知っているけど、いいのだ。だって私は先生に任されたのだからっ!


「では、行進の練習からっ! 私が笛を鳴らしたら、みんなで横一列に並んで歩くように!」

「「「「「……!!」」」」」


 ビシッと敬礼。ふむ、いい傾向だね。ふむふむ。


 そしてピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、と笛を鳴らします。すると全員の気が引き締まったのか、背筋がピンとなって何とか歩いていきますが……バラバラです。


「……止まれッ!! うーん、バラバラだなぁ……」


 改善点を上げるにはどうしたらいいんだろう……?


 あ! まずは適切なフィードバックが大切だ。何も、出来ないからといって、頭ごなしに怒っちゃあいけない。何がダメで、どうすればいいのか、教育者に求められるのはしっかりとしたフィードバック。と、本に書いてありました。


「じゃあ、一人ずつやっていきましょうっ!」

「「「「「……!!」」」」」


 再び敬礼。ふむ、やる気は十分。先生を驚かせるには時間がありません。急いで取り組む必要があるのですッ!


「ではまずは、プロトから……」


 ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ。リズムよく笛を鳴らしていると、プロトは意気揚々と行進します。でも、ちょっと動きが大きいかな? 手の振りが大きいし、歩幅も大きい。みんなよりも元気なのはいいけど、ちゃんと周囲に合わせることもしないとね。


「プロト、次からはもうちょっと抑えめでいける?」

「……!!」


 ビシッ、と敬礼。うん。やる気があることはいいことだよ!


 ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ。そしてプロトは大体仕上がりました。やっぱりこの中での一番の成長株は飲み込みも早いです。


 それから一号、二号、三号、四号、も個別に指導しました。私は鬼大佐。心を鬼にして、みんなのことをビシバシ指導しました。時には嵐の中でも、大雨の中でも、火の中でも、煙の中でも訓練を続けました……ごめんなさい、ちょっと盛りました。訓練は先生の研究室の机の上です。でも、そこは彼らにとって訓練場。気は抜けないのです。


 そして数日間、私は彼らと訓練をしました。ちゃんとできれば、ご褒美(栄養剤)をあげたりもしました。さらに、あの本にはこう書いてもありました。


『学ぶことをやめたら教えることをやめなければならない』


 なるほど。素晴らしい言葉です。ただ踏ん反り返って上から押し付けるような教育はダメなのです。こちらもしっかりと学習をする。そう……彼ら以上に学び続ける必要があるのです!


 そして私は寝る間も惜しんで、彼らの癖などを調べました。個人の癖を見抜いて、どうすれば綺麗な行進ができるのか。今となってはこれは私の楽しみでもありました。誰かのために一生懸命になるのは、とてもいいことだと痛感したのです。


 そしてついに……。


「や、やった!! みんな、完璧だよっ!」

「「「「「……!!」」」」」


 みんながビシッと敬礼を決めます。か、完璧です……! やりました! リタ大佐は目標を達成したのですっ! よくやったぞ、二等兵たち!


「リタ、何やっているの?」

「アリスちゃん!」


 そんな時にちょうどやってきたのはアリスちゃんでした。そうだ、私たちの偉業をアリスちゃんに見てもらおうっ!


「全体、整列ッ!」


 ビシッと綺麗にまとまります。


「全体、進めッ!!」


 ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ。そしてリズムよく、さらにしっかりと綺麗に手足を揃えて彼らは進んでいきます。全ての苦労が洗われるようです……。


「よし、止まれッ!」


 みんなが止まります。何度やっても完璧です。私たちは成し遂げたのです、この偉業を……!


「……えぇぇ、何これ?」

「行進だよ!」

「見ればわかるけど、どうしてやっているの?」

「先生に任されたから!」

「うん、リタってある意味天才よね……」


 アリスちゃんはそう言いますが、よくわかりません。でも褒めてくれているのでしょう! 


 今度先生に会うのが楽しみです!

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