第134話 帰宅!
学院での仕事も一通り終わったので、俺は帰宅することにした。今までは何かと誰かと一緒にいることはあったが、今日は一人だ。
フィーは今日は夜に予定があると言っていたし、アリスも王族の方で色々とあるとか。おそらくは今日は久しぶりに一人の時間を過ごせるだろう。
元々俺は、一人でいる時間の方が好きな方だ。別に誰かと一緒にいるのが嫌なわけではないが、たまにはこうして一人でいたい時もある。
「ふぅ……疲れたな」
帰宅。
誰もいない家に戻ってくると、俺は荷物を部屋に置いていく。そしてシャワーを浴びることにした。今日は少し汗をかいてしまったので、軽く汗でも流そうと思った。
「よし。こんなものか」
シャワーを終えると夕食を手早く作る。といっても今日はそれほど手間のかかるものを作る気は無いので、昨日のあまりのシチューを温め直すことにした。
フィーが数日は食べれるようにと多めに作っていたので、ちょうどよかった。
そして俺は久しぶりに自室の研究室にこもって新しい農作物について研究することにした。品種改良、中でも寒さなどに強い農作物を作ることができればいいと最近は思っている。
特に北の方では、最近は野菜などが育ち難い上に輸入に頼るしか無いためかなり苦労しているとか。
だからこそ、俺のこの研究が役に立ってくれればいいのだがと思っている。
没頭して作業をしていると、気がつけば二時間ほど経過していた。今の時刻は、夜の十時。いつもは徹夜して取り組むのだが、明日も学院での授業もあるということで俺は一旦そこで研究をやめて、明日の準備をすることにした。
「ん? これは?」
部屋の中を歩いていると、ふと地面に乱雑に落ちている書類に目が止まる。掃除は定期的にしているつもりなのだが、どうしても溢れてしまうので一箇所に纏めようと思っていると……それは、学院の卒業証書だった。
「こんなところに置いてたのか」
当時は学院での卒業など、どうでもいいと思っていたので乱雑に書類の中にまとめていたようだ。しかし卒業して時間が経ってみると、それはやはり俺にとってかけがえのないものだと改めて思った。
じっとそれを見つめる。
「……」
学院に学生としていた期間は短かったのだが、それでも思い出というものは確かに存在している。色々と実験などを派手にして、大暴れしてしまった自覚はあるのだがそれもいい思い出として今は記憶に残っている。
まぁ……フィーのやつには本当に迷惑をかけたな。今度改めて、何か贈り物でもするか。それで贖罪ができるとは思っていないが。
そして俺は、その卒業証書を額縁に入れると部屋の目立つところに飾るのだった。
決してその記憶を忘れないようにするために──。




