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第129話 研究室へ


 学院の研究室へと俺は向かっていた。


 あの騒動から学院もまた復興作業などがあったのだが、それもすでにほぼ終わっている。俺も色々と尽力して、学院はもうすぐ始まろうとしていた。


 今までは迷宮に向かっていたこともあって、授業はそれほど多くはできていなかったのだがこれからはしばらくは王国にいる予定だ。


 そのため事前の準備をする必要があるので、こうして一人でやってきた次第だ。


「……? 空いている?」


 なぜか閉めたはずの鍵が開いていたので、不思議に思って室内に入るとそこにはなぜかフィーがいた。それにこちらに下着を見せるような形で転がっていたのだ。


「先に行くとは聞いていたが、俺の研究室でパンツを見せることが目的だったのか?」

「そんなわけないでしょっ! エルの研究室に貸してた本を取りにきたのっ! それでちょっと高いところにあるから、背伸びして取ろうとしたらこけちゃって……」


 フィーはすぐに体勢を立て直すと、じっと俺のことを睨んでくる。


「それにしても、エルってば最近私の恥ずかしい姿ばかり見てるわね……」

「いや、俺としては勝手にその場に遭遇しているだけだが」

「まぁもう今更だしいいけど。で、あの本返してよ」

「あぁ。確か、錬金術概論か?」

「そうそう」


 俺は本棚の上の方にその本をとると、それをフィーに渡す。


「じゃ私は行くから。今日は一緒に帰りましょ。食材とか買っておきたいし」

「分かった」


 フィーはそういうと颯爽とその場から去っていった。


 さて俺も色々と準備をしないとな……と思ってすぐに授業用の資料をかき集めようとするが……。


「ふむ。まずは軽く掃除でもするか」


 人間という生き物はどうしてだろうか。やるべきことは明確で分かっているはずなのに、そのような時に限って掃除をしたくなるのは。


 これはもはや人間のある種の性質である気がする。


 そして俺は少しだけ散らかっている室内を掃除する。特に本棚には乱雑に本を縦や横に突っ込んでいるのでそれを整理する。その際に、一冊の本が落ちてくる。


「おっと……危ないな」


 受け止めた本。それは学生時代に勉強をしていた教科書だった。


 そうか。こんなものも突っ込んでいたのか、と内心で思う。正直言ってすでにこの程度のレベルは頭の中に入っている。学生の当時も教科書の内容など一読しただけで全て覚えてしまった。


 しかしどうしてだろうか。卒業してこの学院の教師として働くようになって、これにもなんだか愛着が湧いているような気がした。


「おっと……まずはささっと掃除しないとな」


 少しだけ過去のことを想起しながら、俺はまずは掃除に取り組むのだった。

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