第125話 帰宅
あれから二人でフィーと帰り道を進んで、ついに自宅へと戻ってくることになった。しばらくずっと戻ってきていなかった自宅。俺とフィーは同じ建物に住んでいるのだが、ここには今回の騒動での大きな被害は及んでいない。
ただずっと帰ってきていないということで、中はどうなっているのだろか。いやきっと変わりはないに違いない。そうして鍵を開けて室内に入ると予想通り、そこには最後見たままの自分の室内が広がっていた。
「ふぅ〜。なんだか、久しぶりねぇ〜」
「フィー。当たり前のように入ってくるが、先に自分の部屋に行かなくてもいいのか?」
「うん。着替えとか、こっちにも置いてるし」
「……」
いつの間にそんなことをしていたんだ? と思うが今更何かを言うのも面倒なのでとりあえずは黙っておく。詰問するのは、まだ時間と心の余裕のある時でいいだろう。
「はぁ〜。何だか色々とあって、やっと寛げる時が来たわねぇ〜」
開いている部屋で着替えると、フィーはすぐに大きなソファーにダイブ。そこでゴロンと横になって、そんなことを口にする。
しかし、その言葉は互いによく理解できる。迷宮から帰ってきたと思えば、急な騒動に巻き込まれることになった。おそらくはこの王国始まって以来のものだ。
そこで紆余曲折を経て、やっと無事に収束しつつある今回の事件。まだ真相は完璧には分かっていないが、とりあえずはこうしていつもの日常を再び享受できそうで本当に嬉しく思っている。
「フィー。今日はカレーでいいか?」
「え、作ってくれるの!?」
「あぁ。元々その予定だった」
と言うよりも、今の状態のフィーは完全にリラックスモードに入っているので、食事を作るのは俺がしたほうがいいだろう。普段も俺が作っていることが多いからな。
そして一人で台所へ向かうと揃えてきた材料でさっそく調理を開始する。今までは携帯食料を食べることが多かったので、こうして料理をするのは本当に久しぶりだった。
色々とあったが、概ね無事に収束。しかし、改めて考えてみると学院を卒業してから本当に数多くのことがあったものだ……。フィーにもすでに伝えてあるが、しばらくは王国の復興を手伝う傍ら、ゆっくりしようかと思っている。
迷宮の探索はきっとレイフたちが進めているので、少しは時間があるだろう。
「よし。できたぞ」
「うわー! いい香りねっ! エルは料理うまいから、本当に助かるわ!」
二人で手を合わせて、カレーを食べ始める。
「うん! とってもおいしいわっ!」
「そうか。それは本当によかった」
微笑む。
俺は改めて知った。このささやかな、日常の素晴らしさというものを。
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