第122話 お見舞い
フィーと二人で病院へと向かう。
アリスが入院している病院は、学院からはそう遠くはない。ということで、フィーと一緒に並ぶようにして歩みを進める。
「それにしても……」
と、彼女は話題を切り出してきた。
「今回の件は、なんだったのかしら」
「そうだな。特に後半においては、相手の勢いが全く感じられなかったな」
敵側にいた兵士たちだが、詳しく話を聞くとその時の記憶を失っているらしかった。また死者も大量に出ているとの報告だったが、それは相手がそう見せかけているだけの嘘。
実際は負傷はしているが、生きている人間の方がほとんどだった。
今回の件は一見すれば派手に見えるが、実際のところは王国はそれほど損害を負っていないのが現状だった。
だからこそ、俺たちも早くにアリスを救うことができたのだが。
「オスカー王子はまだ見つかっていないそうよ」
「そうか……」
そう。アリスが首謀者ではなく、オスカー王子がこの内紛紛いのものを引き起こしているのは明らかだった。それはアリスの証言や、他の人間の証言からも明らかになっている。
そもそもどうして、このようなことを引き起こしたのか……それは依然として謎のままである。
「そろそろ着くわね」
「あぁ。それにしても、アリスと喧嘩するなよ? いつも二人で騒ぎになるから俺も対処に困る」
「う……だ、だってあっちが先にふっかけてくるから!」
と、年甲斐もなく言い訳をする始末。フィーは基本的にはしっかりとした大人ではあるが、アリスとは相性が悪いのかいつも喧嘩してばかりだ。
そうして病院へと到着すると、彼女の病室へと向かう。
軽くノックをして室内に入ると、そこでは読書をしているアリスがいた。窓を開けて空気の入れ替えでもしているのだろうか。外からは心地よい風が室内に入ってきていた。
サラサラと流れるその青い髪。やはりこうして見ると、改めて王女なのだと再認識するのだった。
「アリス。今日も来たぞ」
「あ! 先生! 今日も来てくれたんですね! ありがとうございます」
顔を綻ばせると、パタンと本を閉じてニコニコと笑みを浮かべる。その一方で、フィーに対しても声をかける。
「……フィーも一応来てくれたのね」
「はい。何かあってはいけませんから」
「ふ〜ん。先生一人でも大丈夫だけど?」
「いえいえ。エル一人だと、何をしでかすか分かりませんから」
酷い言われようである。しかし、こればかりは学生の頃からフィーに迷惑をかけているのでどうしようもないことだろう。
「今回もフルーツ持ってきたぞ。アリスはすぐに食べるからな」
「あっ! やった! ちょうど切らしていたところなんです」
そうして俺たちは、椅子に座るとアリスと向き合うのだった。




