第120話 全ての終わり
「先生、どうしてここが?」
「青い光が見えて、それを追いかけてきた」
「青い光……ですか?」
「あぁ。心当たりは?」
「いえ。特にありませんけど……」
「そうか。今はとりあえず、休もう。アリスもずっとここにいて、大変だっただろう」
すると、彼女の瞳が徐々に潤んでいく。
アリスの手を握ると、自分の胸元へとゆっくりと抱き寄せる。
「よく一人で頑張ったな。もう大丈夫だ」
「……先生」
そして、俺の肩に頭を押し付けてくると静かに涙を流した。そんな彼女の様子を俺とフィーは黙って受け入れる。
どれだけの時間、ここに一人で閉じ込められていたのか。それを考えると、涙を流すのも当然というものだろう。
そうして色々と疲れが溜まっていたのか、アリスは眠りについてしまう。
「寝ているけど、大丈夫なの?」
「あぁ。疲れていただけだろう」
「そっか。でも仕方ないよね。こんな場所にずっと一人だったんだから」
「そうだね。さて、と」
眠っているアリスを優しく抱きかかえると、背中に彼女を背負う。
ここから先は戻るだけだ。おそらくはこの王国の騒ぎも、すでに終わっている頃かもしれない。この王城にたどり着いて、ここまでたどり着いたということはそういうことなのだ。
フィーと牢獄を出ると、今まで進んできた道とは違って、明かりがしっかりと灯っていた。それに道も一本道で、視線の先には上の階へと登るための階段が見えた。
「ねぇ、エル。なんか来た時と構造が変わってない?」
「変わっているな。こんなにシンプルな構造ではなかったはずだ」
「だよねぇ……どうなっているのかしら」
「今考えても仕方ないだろう。とりあえずは、アリスを安全なところまで運ぼう」
「分かったわ」
二人で歩みを進める。
なんてことはない。ただまっすぐ歩いて、階段を登ると普通に王城の踊り場へとたどり着くことができた。
そこではどうやら、俺たちの仲間がこの城を制圧していたようで、本当に終わりがやってきたのだとホッとする。
この王国で起きたクーデターの主犯格はアリスとされていた。しかし、牢獄に囚われていた時点でそれはあり得ないだろう。俺たちはもともと、オスカー王子が主犯だと確信していた。
そんな彼を探しているのだが、どうやら王城の中には全く痕跡がないらしい。
「う……うぅうん……」
「アリス。起きたのか?」
「え……って、私寝てました?」
「あぁ。疲れたいたんだろう」
「それは、お恥ずかしいところをお見せしました」
「下ろした方がいいか?」
そういうと、少しだけ小さな声で彼女はこう言った。
「いえ。その……もう少しこのままだと助かります」
「分かった」
こうして俺たちは、アリスを無事に救出することに成功するのだった。




