第119話 たどり着いた、その場所
あれから何度か休憩を繰り返して、道を進んでいた俺たち。その中でやはり、あの青い光は徐々に近づいている。
そしてそれと同時に、アリスの声がしっかりと聞こえるようになってきたのだ。
しかしそれは、やはりどうやらフィーには聞こえないらしい。
「ヒィィイイイ! なんか今、大きいネズミがいたんだけどっ!」
「ネズミくらいどうってことないだろう。いくぞ」
「エルは大丈夫でも、私は無理なのー!」
と、震えながら俺の腕をしっかりと掴んでくる。今はあの青い光のおかげで、しっかりと前に進むことができているのだが、まだ薄暗いことに変わりはない。
地面にはネズミだけではなく、他には虫なども這いずり回っている。それが怖いらしいフィーは、こうして怯えながら歩みを進めている。
俺としては色々と面倒だな、と思うところはあるがフィーには助けられている面も多い。それに怖がっている様子を見るのは今更なので、とりあえずは気にせずに二人で歩みを進める。
「うぅ……なんか、お腹も減ってきたよぉ……」
「文句が多いな」
「だ、だって! こんなに時間がかかるなんて、思ってなかったし!」
「まぁ……それはそうだな。この地下空間は予想外過ぎた」
「でしょ! はぁ……早く戻って、綺麗な部屋で食事がしたいわ」
「それは同感だな。それに、早くいつもの日常に戻りたい」
「そうね。でもきっと、もうすぐ終わるわよ」
王都での反乱も、もう少しで落ち着くのは間違いない事実だった。というのも、相手の進行が途中からまるっきり勢いを無くしたのだ。それはいまだに謎ではあるが、こうして俺たちが王城まで進行できているのがその証。
きっと、アリスを救出しているころには、外では全てが終わっているのかもしれない。
「む……フィー。見てみろ」
「ん? え、あれって」
ついに俺たちは、青い光の元へとたどり着いた。
そしてそこは、牢獄だった。その場で寝転ぶようにして蹲っている一人の少女を発見した。青い髪で、少し華奢な身体。
間違いない、彼女は……。
「アリス! 無事だったかっ!?」
「先生……?」
声を上げると、こちらに顔を向ける。それは間違いなくアリスのものだった。顔は少しやつれているようだったが、正気はしっかりと宿っている。
俺はその牢獄を無理やりこじ開けると、すぐに彼女の元へと寄り添う。
「やっとたどり着いた」
「せ、先生……? 幻覚じゃなくて?」
「あぁ。幻覚ではない。それにフィーもいるぞ」
「どうも。アリス王女」
「そう……そうですか……」
ホッとしたのか、アリスは俺に抱きついてくるとそのまま静かに涙を流した。
こうして俺たちは紆余曲折を経て、アリスを救出することに成功するのだった。
しかしどうやら、まだまだ謎は残っているようだった。




