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史上最高の天才錬金術師はそろそろ引退したい  作者: 御子柴奈々
第四章 王国内乱編-When she cry-
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第115話 青い光


『先生……助けて……』


 アリスの声が確かに聞こえる。


 だというのに、俺たちはこの地下空間で彷徨っていた。


「エル。声が聞こえるっていうけど、どこにいるの?」

「分からない」

「え……それって、どういうことなの?」


 フィーはポカンとした表情を浮かべる。しかしこれはどう説明するべきか……俺にも詳細はわかっていないのだ。


「すまない。俺にもよくわかっていない。だが、助けて……とアリスが呼んでいるのが聞こえるんだ」

「……そうなのね」


 なんの現象なのか全く理解できていない。


 だというのに、フィーはそれ以上追求はしてこなかった。割と長い付き合いになってきたが、フィーのこのようなところは本当に助かる。


「それよりも、ずっと袖を掴んでいるが……」

「だ、だって! 薄暗いし! クモとかゴキブリもいるし……!」


 そう。この地下空間では、薄暗い明かりしかない。そのため、手元で明かりを生み出してなんとか進行している最中である。


 そして、フィーは俺の袖をギュッと掴んでいる。いや、今はもはや腕に完全に寄り添っている形になっている。


 身動きが非常に取りづらいが……仕方がないだろう。


 それにしても、この空間は妙に異質に感じる。それは、薄暗いという理由ではなく、感覚が鋭くなっているというか……何かを感じるのだ。


 それに前後感覚がかなり怪しい。前に進んでいるように思えるが、実際は自分たちはどこを歩いているのか。


 唯一の手がかりは、この脳内に時折響き渡るアリスの声だった。


 しかし今それはすっかり聞こえなくなってしまった。上にいるときははっきりと聞こえたというのに、今は何もない。


 また、その声を頼りに進もうと思っていたが……普通に迷ってしまった。


 そうだ。ここは似ているのだ。

 

 迷宮と構造が、よく似ている気がするのだ。


「フィー。ここは迷宮に似ていないか?」

「あ……確かに言われてみれば、感覚的に似てるかも……」


 やはり、フィーもそう感じているようだった。


 王城の地下が迷宮に似ている。いや、もしかすればここは迷宮に近い何かなのかもしれない。


 そう考えると、攻略するのはかなり難しいか……?


「ねぇ。エル」

「どうした?」

「あれって……なんだろう?」

「灯りだな。しかし青いな」

「うん。ちょっと不気味かも」


 薄暗い空間の先には、青く光る何かがあった。それははっきりと視認できるわけではない。ただ正面に青い光があるという認識だけ。


「行ってみる……?」

「行くしかないだろう」

「ちょ、もうちょっとゆっくり歩いてよー!」


 そうして俺たちは、さらに深部を目指すのだった。

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