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史上最高の天才錬金術師はそろそろ引退したい  作者: 御子柴奈々
第四章 王国内乱編-When she cry-
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第110話 Alice in wonderland 25:動き始める日


 いつものように過ごす日々。


 そこで私はある噂をサリアから聞いた。


「え? それて本当なの?」

「いえ。ただの噂ていどです。メイドの中でも話題になっているのです」

「いやいや。さすがにそれはないでしょう」


 その話は、この王国でクーデターを起こそうとしている連中がいるというものだった。


 過去には王権を巡って何度か血を流したことのある国ではあるが、ここ数百年は大きな戦争もない。


 王族の地位も揺るがないし、錬金術で世界的に有名なこの王国は完全に安定期に入ったといっていいだろう。


 この手の与太話は、よくあることだ。

 

 さすがにこの王国をひっくり返すという話は初めて聞いたが、私はその話を一蹴する。


「私もメイドたちから話を聞いて、ありえないと言いましたが。中にはその噂を楽しんでいる者もいるようです」

「まぁ……噂は好きよね。特に女性は」

「それはそうですね。メイドの間では、誰と誰が付き合っているかなど、その手の話は数多くあります。今回のものもどうせその程度の噂でしょう」

「そうね」


 今は学校から帰ってきて、紅茶と茶菓子をいただいている。


 この時間は何よりも好きだった。今日は午前中だけ授業で、午後からは何もなかった。


 学院で勉強して帰っても良かったが、今日はサリアの淹れる紅茶がどうしても飲みたくなったので、こうして帰ってきたところだった。


「アリス様。学院はいかがですか?」


 そう尋ねてくるので、私は素直に自分の気持ちを答える。


「そうね……まぁ、楽しいけど。やっぱり先生がいないのは、寂しいわ」

「そろそろ帰ってくるとか、私は聞いていますが」

「本当!?」


 体を乗り出す。


 その話を聞いただけで、私は自分の心が踊るようだった。


「はい。確か、魔術協会にそのような情報が入ったと」

「そっかぁ……やっと帰ってくるのかぁ……」


 期間としてはそれほど長いわけではない。


 でも私にとって、何週間も先生に会えないということは、一年会えないことと同義だ。


 やっと。やっと先生が帰ってくる。


 帰ってきたら、どんな話をしようか。


 そんなことを脳内で巡らせる。


「ふふ……」

「顔、にやけていますよ」

「いいの! だって先生が帰ってくるんだもの!」


 サリアに指摘されるが、にやけてしまうのは仕方がない。


 そうして私は立ち上げると、その場でクルクルと回り始める。


「アリス様。はしたないかと」

「だーかーらー! これが踊らずにいられるの!?」

「……まぁ、気持ちはお察しますけれど……」

「でしょ! あーあ。早く先生に会いたいなぁ……」


 心待ちにしている。


 だが、確実に迫っている異変に私はまだこの時は気がつくことはなかった。

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