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困ってしまいました

 まだまだ案内は続きます。音楽室に来ました。多分学園長の趣味でテルミンまである音楽室です。


「何かご用ですかぁ?」


 音楽室には美少年がいました。攻略対象の……名前忘れた。唯一年下で、ありがちなプリキュン男子から俺様腹黒クール男子にクラスチェンジしちゃうのだ!


「案内してるの」


「こんにちは」


「そうなんですねぇ。ボクはピアノ弾いてますからぁ」


 そして音楽室を案内していたら、ボソッと低音ボイスが聞こえた。


「チッ、男連れかよ」


「え…?」

「どうしましたかぁ?」


 鈴木にも聞こえたらしく、すごく驚いたご様子ですな。私は知ってたから気にならんけど。


 鈴木は楽器を壊しそうだからと楽器には触れなかった。確かに、壊したらシャレにならない。さっさと退散することにした。


「じゃあ、お邪魔しました」

「じゃあね」


 少年は自分に興味がない私にイラついているらしく、ピアノに夢中なふりをして無視した。心の狭い男である。鈴木を見習うがよいわ。

 声をかけて出ていく間際、少年にだけ聞こえるように囁いた。


「…火遊びし過ぎると、火傷じゃ済まないよ」


「!??」


 ハッとした顔の少年に微笑んで退室した。もう関わりたくないなぁ。こいつのイベントって、こいつが女をつまみぐいし過ぎたせいで逆恨みされたヒロインが刺されかけたりするんだよね~。バッドエンドだと刺されて死ぬし。

 陽菜ちんが死ぬなんて嫌だから、陽菜ちんがこやつに会わないよう頑張ったよ。こやつとは接点がないから、ゲームでは会わないで終了する場合もあった。

 まあ、一応知ってて放置も微妙だからと忠告してあげた。他の誰かが刺されても嫌だし。


 それから運動部を見て部室棟に行ったが、その辺りはスムーズに進んだ。そういやこのゲーム、運動部のやついなかったなぁと思った。特筆すべきはうちの学校、プールが温水だってことぐらいかな。

 その後アホ部から上手く焼けたぞと箸置きを渡された。黒い箸置きは、まだほんのりあたたかかった。なんか小文吾が自分を使うよねってうるさかった。





 名残惜しいが学校案内も終わったので、帰らなくてはならない。


「ミチルちゃん、乗って」


「いやいやいや!もうたいして痛くないから!」


 二日連続チャリ二人乗りなんて、お付き合いしてるみたいじゃないか!


 喫茶店のおばちゃんが支払いでもめてるみたいな感じだ。どちらも譲らない。これ以上、鈴木と噂になったりしないんだから!


「ミチルちゃん…俺の家の人、これ縫ってくれたんだ。まさか、一回しか使えないなんて…どうしよう……」


 クッションはなれない人が縫ったのか、とても下手くそな縫い目だったが、とても丁寧に細かく縫ってあった。


「こ、今回だけなんだからね!」


 私は鈴木に負けたのではない。鈴木の家の人に負けたのである。自分でも意味不明ないいわけをしていたせいで、鈴木の接近に気がつくのが遅れた。


「とりあえず、完治するまでは送迎させて。ミチルちゃん…お願い…」


 手を握られ、推しメンに至近距離からお願いされたらどうなるか……完全敗北である。

 鈴木ぃぃぃ!!あざといんじゃああああい!!


「くっ…し、仕方ないわね!」


 こうして、私は擦り傷が完治するまで鈴木に送迎されることになった。


「鈴木、部活決めた?」


「う~ん、まだ。ミチルちゃんは何か部活に入ってるの?」


「漫研に名義だけ貸してる。しいて言うなら帰宅部だよ!」


「…漫研は見なかったなぁ」


「今度案内するよ。あそこに行くとイチオシ漫画を紹介されて動けなくなるから、時間があるときじゃないと行けないんだよ」


「そっか。楽しみにしてるね」


 わりとどうでもいい会話をしていたが、とても心地よかった。楽しい時間はあっという間で、私の家についてしまった。


「明日から、朝来るんだよね?」


「うん」


「なら、朝ごはん食べていかない?」


「いいの!?」


 鈴木はとても嬉しそうだ。誘って良かった。明日の朝はおいしいものを作ろう。材料あったかな?買い出しに行かなきゃかも。そんなことを考えながらポケットに手を入れたら、固い感触が触れた。

 少し迷ったが、鈴木はきっと喜んでくれると信じて鈴木の手を取り、その手に渡した。

 

「鈴木、これあげる。鈴木のみたく使い魔にはならないただの箸置きだけど、鈴木のイメージで作ったんだ」


「………………」


 鈴木は呆然として、ただひたすらに黒い小さな箸置きを見ていた。え?こんながらくたいらなかったし、鈴木はもっと凛々しいって?確かに!

 黒い小鳥の箸置きは可愛らしくできたが、男性向きではなかったかもしれない。


「いらなかった?」


 今なら返却してもらって自分で使うという手段もある。しかし、鈴木は慌てて首を振った。


「違う!気に入ったの!すっごく嬉しい!!ありがとう、ミチルちゃん!」



 ぎゅっと箸置きを大切そう抱きしめる鈴木。そっと手のひらの箸置きを大切だと言わんばかりに撫でる鈴木。


 鈴木ぃぃぃぃ!!

 可愛いんじゃあああ!!

 こっちこそありがとうごちそうさまなんじゃあああああ!!


「…どういたしまして。じゃあ、また明日!」


 このままだと鈴木の可愛さにより、私が鼻血ブースケへと進化しそうだから逃げるように立ち去った。



「うおおおお!!鈴木ぃぃぃぃ!!」


「ぬあああああ!!鈴木ぃぃぃぃ!!」


 鈴木の愛らしさにしばし萌え転げる私がいた。

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