個性的なキャラが増えました
午後の授業は問題なく終わり、放課後はまた校舎を案内することにした。
「ここは、技術室。うちは窯もあるから焼き物ができるんだ。美術部がたまに作品を作ったりしてるよ」
今日は焼き物の日だったらしく技術室に来ていたアホ部が新入部員さんに説明をしていた。
「折角だから、お前達も作ってみたらどうだ?」
「いいの?」
「ああ、かまわん」
アホ部は私たちの分も粘土を持ってきてくれた。
「色がつけたければこれを」
白と黒の薬品をアホ部が出してきた。ふむ、これを塗って焼くとこわれにくくなるし、この色がつくのね。
「初心者は箸置きなんかが作りやすい。ろくろもあるが、初心者には難しいし他も案内するんだろう?なら小物を作って行け。焼いたら渡すから帰りに寄ればいい」
「そっか。じゃあお言葉に甘えて作ろうか」
「うん」
というわけで、私たちは箸置きを作ることに。
「うーん…」
何にしようかな…チラッと鈴木を見てから決めた。
「あれ?鈴木…ずいぶん可愛いね」
「ミチルちゃんのは凛々しい感じ?」
鈴木のは可愛らしい白い小鳥の箸置き。私のは黒い小鳥の箸置きだ。つい、鈴木イメージで作ってしまった。なんと言い訳しようかと迷っているとアホ部が話しかけてきた。昼休みの件もあり、ついつい鈴木を意識してしまう。
「北條、須藤!!俺の作品を見ろ!!」
「だから鈴木だって」
「鈴木だよ」
「申し訳ございません…うちのぼっちゃまは色々と残念な頭の持ち主で「ごらぁぁぁ!聞こえてるぞ、瀬羽巣!!」
「聞こえるように申し上げてございます」
言い合う瀬羽巣さんとアホ部。なんか和む。今日も平和だね。固まってる鈴木に話しかけたら、いきなり机の下から出てきたので驚いたとのこと。
「ああ…一応瀬羽巣さんは部外者だからさ、先生に見つかると追い出されちゃうんだよね」
「…それでいろんなところに潜んでたんだね…」
もう瀬羽巣さんはそういうモノだと先生も諦めてる。建前上追い出しているのだ。追い出してもどうせまた瀬羽巣さんは侵入するしね。
「ああ!??」
鈴木がやけに焦った声を出したので鈴木の方を見たら、鈴木は手に何かを隠していた。嫌な予感がする。
「アホ部、私の焼いといてね~。お邪魔しました~」
素早く鈴木の手首をつかみ、教室を出た。
「で、鈴木はどうしたのかな?」
「…その、心を籠めすぎちゃったみたい……」
鈴木の手のひらには、可愛らしい白い小鳥さんがいた。
「………………」
さっき見たような?
ツン、とつつくとくすぐったそうにするし、仄かな熱を感じた。
「マスター、わしは姫をお守りすればよいのですな」
「ん?」
可愛らしい見た目とは裏腹に、低音じい様ヴォイスですなぁ。
「あの、えっと…うん」
頬をそめて照れる鈴木、かわゆす。鈴木は意を決した表情で私を見た。
「その、この鳥はミチルちゃんにあげようと思った箸置きだったんだけど…手違いで使い魔になっちゃったみたいなんだ。害はないし、いざって時にはボディーガードになるから…もらってくれない…かな?」
「誠心誠意お仕えいたしますぞ、姫!」
んん?とりあえず、鳥さんをスキャンしてみた。
【魔王の使い魔】
【魔王の想いが結晶化して進化した元箸置き。箸置き姿にもなれる。北條ミチルを護るために産まれた】
「鈴木ぃぃぃぃ!??」
いや、ナニコレ!どっからツッコミしたらいいの!?鈴木がこねた粘土は想いが強いと進化するの!??しかも私を護るためにって……ぬあああああ!照れるじゃろうがあああああ!!鈴木ぃぃぃぃ!!!
※魔王については全力で見るのを拒否しています。
「えっと………よろしくね?」
内心は地面で萌え悶え転げ回っているけども、外面は取り繕いまくって普通に笑顔を向けていた。
「はっ!普段は姫の影におりますゆえ、御用の際にはいつでもお呼びくださいませ!」
「名前…小文吾でいいかな?」
文鳥っぽいし、犬田小文吾みたいに強そうだし。いや、あれマッチョだから名前負けしてるな。
「おお、姫様から名前を賜るとは…ありがたき幸せ!姫様、これからよろしくお願いいたしますぅぅ!!」
小文吾は影に潜った。喜んでるからいっか。なんか、あいつちょっと私に似てる気がする。あれか、ペットは飼い主に似る的な?
「えっと…別のとこも案内してくれる?」
「オッケー」
「こっちが第一理科室、そっちが第二理科室ね。第一は実験をしたりするから薬品や実験機材があるよ。顕微鏡とか、ビーカーなんかね。第二は生物部が飼ってるカエルとか虫がいるよ。あとホルマリン漬けが多数あるので長居したくない部屋だね」
「なるほど」
「あと、第一には自称魔女がいます」
「え?」
すると、第一からか細い声がした。
「自称じゃないわ…本物よ…」
人見知りで光を嫌う彼女が珍しく第一理科室から顔を覗かせていた。
「魔女(笑)の馬飼野布里ちゃん。アダ名は魔界のプリンセス、略して魔プリン」
ちなみに魔プリンちゃんもゲームに出ていた。通って仲良くなると、惚れ薬等のお役立ちアイテムをくれる。つまり私と同じ友情サポートキャラなのである。
「ご当地スイーツみたいに略さないで…呪うわよ…」
確かに!魔プリン…魔国名物とかでありそうだな。笑いを堪えながらすましたフリで返事をする。
「どーぞ、ご自由に」
スキルのおかげで私に呪いは効かんのである!効かないから、私は呪われようが心底どうでもいい。しかし、私の『護衛』はそれをよしとしなかった。
「ピピピピピ!」
影から飛び出して、小鳥のフリをしつつ高速で魔プリンちゃんをつつく小文吾。文鳥みたいな見た目だが、動きはキツツキのようだ。
「いたたたたたた!」
「ピピピピピピピ!!」
あ、よく見たら嘴になんかつけてる。嘴が尖ってるから加減してるんだね。後でほめてやろう。
ふと気になってチラッと隣を見てみたら、鈴木は無表情でちょっと怖かった。よくわからんが、明らかにイラついているようだ。鈴木がイラつく要素、あったでけ?小文吾は鈴木の怒りに反応したのかもしれない。
「いたいいい…わ、わるかったわ…呪わないから助けてぇぇ…」
ただでさえ無い体力が尽きたらしく、魔プリンちゃんが倒れた。
「小文吾~」
「ぴ!」
小文吾は肩にとまって『姫様!悪者はこの小文吾がこらしめましたぞ!』と誇らしげだ。可愛いので撫でてあげた。
「くっ…光の守護鳥を連れているだなんて…」
いや、これ魔王の使い魔だから多分闇属性だ。そうは思ったが、ややこしいので言わなかった。
「ふっ…これに懲りたらすぐ呪ったりしないことね。とりあえず、差し入れよ。今日はイイモノはないの?」
「あっ、クッキー!んん…そうね……この間作った化粧水があるわ…またこの捧げ物を魔女にすると誓うならば分けてあげる…」
面倒だから素でトークしてほしいのだが、仕方ない。付き合ってあげることにした。
「契約成立ね。わあ、この瓶綺麗!流石は布里ちゃん、センスいい!」
化粧水が入った小瓶はミントブルーで凝った彫刻がされていた。月をモチーフにしているらしい。彼女はこういったアンティーク風の素敵なものを見つけるのが得意だ。
「ふっ…魔女はなんでも知っているのよ…ついでにこれを光の姫に渡しなさい」
光の姫=陽菜ちんである。陽菜ちんの瓶はオレンジで太陽のモチーフだ。
「わかった。渡しとくね。瓶の対価として、闇のケーキを焼いてこよう。明日を楽しみにするがよい」
※闇のケーキ=チョコケーキ。予定はガトーショコラ。
「!!ふっ…よい心がけだ…魔女はいつでもここにいる…また来るがよい…」
布里ちゃんはめっちゃ嬉しそうでした。
理科室を出てしばらく歩いてから鈴木が話しかけてきた。
「結局、あの魔女さんと仲いいの?」
「うん。中二病が面倒だけど、根は素直でいい子だよ。呪いも多分言うだけで本当にはしないだろうし」
「……………」
鈴木がいきなりうずくまった。
「鈴木!??」
「や、大丈夫…あああ、もう!うっかり本気にしてイラついたあげく小文吾をけしかけるなんて大人げない…」
「…鈴木、サバ読んでるの?」
「いやいや!年齢はごまかしてない!!」
「他に何かごまかしてるのかい?」
鈴木は必死に否定した。人間じゃないこと…かな?私はそれよりも私を呪うと言われて冷静さをなくした鈴木に萌えていた。
あかん。萌え禿げる。
外面はなんとか取り繕いまくっているが、もう叫んで転がりたい。スライディング五体投地したい。
鈴木ぃぃぃぃ!!
萌えるんじゃぁぁぁ!
ときめくんじゃぁぁぁ!!
ドキがムネムネなんじゃぁぁぁ!!
鈴木、鈴木、鈴木ぃぃぃぃ!!
「………ミチルちゃん、何してるの?」
「拝んでる」
「なんで!?御利益ないよ!?多分!!」
なんとなく気になって自分をスキャンしてみたら『魔王の加護』がついてた。御利益?御利益なの!??
鈴木ぃぃぃぃ!??と叫びたかったが我慢した。鈴木は魔のつく自由業なんかじゃないんだからね!!と思ってたら『鈴木の加護』になってた。解せぬ。見間違い??
世の中は不思議で満ちています。