眼鏡の真髄
ガチギレ鈴木参戦でオーバーキルになるかと思いきや、なんか様子がおかしい。もしや、アレ悪魔的な生き物だから鈴木の怒り……負の感情でパワーアップしてるんじゃ!?
ぬああ、伝えようにも眼鏡がなきゃ自衛すらできないし!グッピーが防御魔法かけてくれてるけど、いつまでもつかわからない。
考えろ!考えるんだ、北條ミチル!眼鏡の代用……眼鏡とはなんだ!?
「鈴木!怒ったらダメ!そいつ、鈴木の怒りと魔力を奪ってる!!」
「ミチルちゃん!?そ、それ…………」
「眼鏡裏奥義…………お手ての眼鏡!!」
「アホか!!」
そう。私は新たなるステージへと踏み出した。スキル超☆眼鏡は眼鏡なしでは使えない。だが、眼鏡とは、顔の一部。うっかりつけたまま入浴してしまったり、頭の上にあるのに探してしまったりするぐらい、馴染んでいるのだ。穂積からのツッコミはスルーである。
そう、眼鏡とは、眼鏡を選ばず!手でわっかをつくったお手ての眼鏡でも発動するのだ。
「ハハハハハハハ!だが、それがわかった所でなんになる!?そいつは俺への憎しみや怒りを捨てられぬ。かといってそいつがいなければ勝てまい!」
勝ち誇るヤツに、私は覚悟を決めた。
「鈴木、私、こいつ倒したら鈴木と結婚する!」
「ミチルちゃん!本当!?本当だよね!?本気だよね!?ついに覚悟を決めてくれたんだね!??そうだよね!?」
鈴木の魔力による影響か、なんか床に花が咲き始めた。
「うん。だからサクッと倒して、結婚の話をしようね」
「はーい!」
鈴木は満面の笑みだ。敵はさっきより明らかにパワーダウンしたけど、まだ決め手に欠ける。奴の弱点を探ろうにも、お手ての眼鏡では眼鏡力不足で手が弾かれ、痛くなるだけだった。手が壊れなくて良かった。軽率だった。めちゃ痛い。
やはり、鈴木の眼鏡が必要だ。壊れた眼鏡を手に取る。今まで色んな眼鏡を使ってきたけど、この眼鏡のつけ心地は格別だった。ひしゃげて割れてしまい、かけることはできない。しかし、私はこの眼鏡を……この眼鏡の感覚を覚えている。
そう、眼鏡は顔の一部。感覚を思い出せ。眼鏡の触感、かけ心地、視界の変化……鏡に写るのは、眼鏡をかけた自分。そう、皆も心に眼鏡を持っているのだ。
「これは………眼鏡力が上がっていく……だと!?」
「いや、眼鏡力ってなんだよ!?」
秘書眼鏡の眼鏡が弾けて飛んだ。
「ぐっ!?眼鏡が!なんという眼鏡力だ!」
「いや、お前の眼鏡はスキャウターかなんかかよ!?」
某アニメの戦闘力を計測するやつみたいな能力が、眼鏡系スキル持ちには発現しやすい。眼鏡的常識なのだが、裸眼の穂積は知らなかったのだろう。
「見える……!私は今、眼鏡の新境地へとたどり着いた!!」
「いや、ただの裸眼だろ!」
「穂積殿!今ミチル様は眼鏡の真髄であるエア☆眼鏡を習得なされたのです!邪魔をしてはいけません!!」
ナイスだ、秘書眼鏡!そう、これぞ秘奥義!エア☆眼鏡!!
「いや、そっち俺じゃないから」
「穂積殿!」
「いや、それも俺じゃないってか、お前眼鏡が無いと目が数字の3になるのな。昭和の漫画かよ!」
眼鏡コント組はさておき、身体中に眼鏡力が溢れている。そして、私はこの眼鏡力を使うことにした。超☆眼鏡の究極最終奥義……数えるほどしか使ったことのないスキルだ。
「ニメガ召喚!!」
場に曲が流れる。讃えよ讃えよ眼鏡を……。眼鏡を讃える歌だ。
「うふふ、我こそは眼鏡の女神!略してニメガ!!」
「容量ちっさ!」
ニメガのNGワードを言っちゃった穂積がヘッドロックをくらった。それは言ったらあかんやつなのよ。
「久しいわね、我が宿敵………悪魔王コンタクト!」
「くっ………ニメガまで召喚するとは………」
「すまん、展開についていけないんだが?」
ニメガから解放された穂積に聞かれたので説明しよう!悪魔王コンタクトは、ニメガにフラれてカラコンに神としての座も奪われ………落ちぶれて悪魔王落ちしちゃったのだ!
「だ、黙れ!黙れ黙れ黙れ黙れぇぇ!!」
「眼鏡奥義!メガ☆メガビーム!!」
「目が!目がぁぁぁ!!」
ニメガ召喚により、現在私の眼鏡力は数百倍!さらにパワーアップしたメガ☆メガビームは、敵の目を焼きつくし、某アニメの悪役眼鏡的な叫びをさせちゃうのだ!
「鈴木!あれが弱点だよ!」
鈴木にバフをかけるためしがみつく。額に出てきた第三の目(コンタクトレンズ装備)が弱点だ。
「任せて!ミチルちゃんとの結婚……俺たちの未来のために……俺は戦う!」
鈴木の魔法で一撃でした!
「あはん☆ミチルんはあたしの寵愛持ちだから、ミチルんのダーリンにもバフがついたようね」
鈴木にも数百倍強化がついた結果のオーバーキルだったらしい。
「くっ………コンタクトレンズは………医療用………」
悪魔王コンタクトは滅びた。まあ、別に用途で使い分けるからいいじゃんと思わんでもない。
「じゃあ、ミチルんまったねー☆」
こうして、鈴木の危機は去った。色々細かい問題はあるが、めでたしめでたしである。
……………………たぶん。