眼鏡と眼鏡で通じ合う
鈴木の腕の中にいるので、安心して眼鏡を使うことができる。鈴木の愛がこもりまくったこの眼鏡は、私の眼鏡力を異常なまでに引き上げる。この眼鏡があれば格上であろうとも、隠蔽スキルがあろうとも、全てを見抜く。
「眼鏡力!二百!パーセント!!」
情報量が多すぎて読みにくいのがたまに傷だね。悪魔的なナニかは、やはり悪魔だった。ほー、何百年もかけてー、力をためてきたわけねー。
ちなみに、私が呑気に敵の弱点を探している間に鈴木、陽菜ちん、穂積が戦っている。
「鈴木、殺さないようにね!」
「任せて!半殺しだね!」
鈴木さん、オーバーキルじゃね?と思うが……本人なりに加減しているらしい。うあ、剣が山のようにふりそそいで串刺しとか、こんがり焼いたり……なかなかレパートリー多彩だね。
「はっ!」
陽菜ちんは身体強化魔法を使いながら鈴木の魔法の隙間に入り込み、悪魔的なナニかに斬りつける。マオラさんと毛玉も力を貸しているようだ。
そして、穂積が意外に強い。よく考えてみたらあの陽菜ちんと討伐をしていたのだから、当たり前なのかも………。でも、料理スキルを使って戦う人は初めて見たよ。
なんというオーバーキル。
ステータスをざっと視ただけでもわかる。悪魔的なナニかには、万に一つも勝ち目がない。鈴木達は私の指示通りに『殺さないで削る』を実行している。致命傷一歩手前になるため、悪魔的なナニかはせっかくためた力を使わねばならない。ジャンジャン吐き出していただこうではないか。
「真生様!」
「敵か!」
「敵だね!」
「真生様に加勢しろ!二人は前衛!グッピーは真生様の魔法で前衛が死なないよう補助!!」
四天王も騒ぎを聞きつけて参戦。オウルドがリーダーなわけねー。いいタイミングで来てくれたわ。
「…………!総員、敵を殺さないように!!」
「はああああああ!!」
「にゃああああああ!!」
「は!?殺すなって意味わかんないんですけど!や、やれるだけやるわ!」
脳筋二人には聞こえなかったようだが、金魚鉢にいる人魚のグッピーには聞こえたようだ。
「………鈴木」
鈴木に目線で訴えたが、鈴木は私をガッチリ捕獲している。おい。やることがあるんやって。ダダこねるなよ。可愛すぎか。
「………わかった。オウルド、ミチルちゃんに擦り傷一つつけるなよ」
鈴木から解放され、秘書眼鏡の元へ。既に私は奴に眼鏡の輝きで情報を伝えていた。超☆眼鏡のスキル、眼鏡コミュニケーションである。眼鏡の煌めきで眼鏡に情報伝達するスキルだが、相手も眼鏡でないと送れないという致命的な欠陥がある。
魔的なナニかは、鈴木達の猛攻でこちらに気がつく気配はない。
私とオウルドは、ひたっすらに地面をガリガリしまくる。いやあ、一人だとキツかったわ。オウルドが来て良かったわー。
「き、貴様ら……もう許さん!!」
作業が終了した瞬間に、悪魔的なナニかがキレた。このままではためた力を使いきる羽目になると気がついたからかもしれない。今さらだけどねぇ。
一部を治癒と強化に回し、残りを上司というか……悪魔の王に送ろうとした。
『床にあった』陣を起動したのである。
床の陣は、魔法陣だった。悪魔の王に、命の力と魔力を捧げるためのものだった。それがわかったので、オウルドとガリガリしたわけだ。
悪魔的なナニかの後ろの黒幕もギャフンと言わせたかったからね!
「ぬあ!?な、なんだ!?」
最初だけは命の力と魔力を捧げる陣として起動。接続した途端に、反転するようにしておいた。捧げるのではなく、奪うように。
悪魔王からしたら、どう思うかねぇ?接続した途端に、力を一気に吸われたら……?
「な、なんだ!?」
悪魔的なナニかがアワアワしていたら、陣から手が出てきた。更に、頭、首……上半身……たくましい悪魔的な巨人が現れた。
「ベルゾ………貴様、我の力を奪うとは……」
なかなかの迫力だねぇ。必死に頭を横に振るベルゾ。
「違います!違います違います違います!!俺は陛下に力を送ろうとしただけです!!俺は陛下を裏切ってなどいない!!
「では、何故今なお我の魔力がお前に注がれておるのだ!?」
「それは………俺では………」
陣に触れ、ようやくベルゾは『書き換えられている』ことに気がついたのだろう。私達は無駄にゴリゴリしていたわけじゃない。これを狙ったのだ。
頭の回転は悪くないようだ。ベルゾの表情が憎悪に染まっていく。
「あは………あははははははは!!おっかしー!お前が何十年、何百年かかった計画を私が台無しにしてあげたんだよ!人間なめんな!!」
「貴様アアアアアアアア!!」
しかし、ベルゾの手は私に届かない。
「つまりは、敵を甘く見た貴様の責任だ」
ベルゾは、あっさりと悪魔王に潰された。
「そんな…………」
同情はしない。騙して争わせ、魔力と命を吸い上げていたやつだから。
「………小娘、お前の力は脅威だが………こうしてしまえば、お前は無力だ」
「眼鏡が……!」
鈴木の眼鏡を破壊するだなんて………!しかしスペア……も壊れている!?
悪魔王は愉快そうに笑って下半身を陣から出そうとした。
「!!?」
悪魔王がわりと必死に下半身を陣から出そうとした。
「!???」
「バーカ。こっちに来ちゃう可能性を考慮しておいたんだよ。抜けないし、逃げられないからね。陽菜ちん、穂積ー、こいつはSSランクの賞金首だよ。やっちゃってー」
「任せろ」
「おう!」
二人が息の合った連係を見せる。上半身だけで動きを制限されているため、悪魔王は翻弄されている。さらに四天王も参加。やったれやったれー。
「鈴木の眼鏡、ごめん……」
「いいんだ。ミチルちゃんに怪我がなければ……!?ミチルちゃん、傷!」
「ん?本当だ」
眼鏡が割れたときに切ったかな?少しだけ血が出ていた。
「ぶっ殺す!!」
ガチギレ鈴木も参戦。もはやオーバーキルな気がしてきた。いやあ、いい仕事したよ、私!!