ツッコミどころがありすぎる件
野生の眼鏡と化した私、北條ミチル衝動のままにひとつ目毛玉を消し去ろうとしたが、意外な人物が間に入った。
「ミチル、待ってくれ」
「メガネ?(なんで?)」
「ミチルの怒りはわかる。私も晃太の命を狙う馬鹿がいたら、塵ひとつ残さず消し飛ばすだろう」
「メガネェ(だよね)」
「だが、すまない。この毛玉の件で、一つ約束をしたんだ。それが済めば、煮るなり焼くなり粉砕するなり好きにしてくれ」
「オイイイイイ!?オマエもオマエでナニいってるの!??なんなの、オマエら!!発想が物騒すぎるだろ!!」
ツッコミするひとつ目毛玉。ちょっと消してもいいかな?または、ハゲ目玉にするとか。そんなことを考えていたら、陽菜ちんが剣を取り出した。なんかゲームで見たことあるやつ。聖剣だったかな?
「出てこい、マオラ。お前の会いたいやつはこの毛玉じゃないか?」
漆黒の髪をした、どこか鈴木に似ている美女が聖剣?から現れた。そして、毛玉に重たい右ストレートをかました。
「ムァァリオォウゥ!?」
どこかのゲームキャラ名的なものを叫びながら、毛玉は壁に叩きつけられた。
「シャオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」
そこから怒濤のラッシュが始まった。毛玉はひしゃげ、ボロボロになっていく。ワイルドメガネの出番はなさそうだから、別眼鏡に代えて色々確認することにした。
「おい!そのぐらいしにとけ!死んじまうぞ!!」
マオラさんとやらが止まると、毛玉はボロボロになりつつもマオラさんを呼んだ。
「マオラ、マオラ………あいたかった………ごめんなさい、ごめんなさい……マオラに怒られても………怒られたかった。二度とあえないぐらいなら………」
毛玉がシクシク泣いた。許す気はないが……その気持ちはわからないでもない。恐らく、毛玉は禁忌を犯そうとした。
愛している者が死んだなら、誰もが一度は願うだろう。生き返って欲しいと。
反魂。それは、神への反逆。生の冒涜。魔族も人間も……あらゆる種族にとっての禁忌だ。毛玉はそれを知りながら、マオラさんとやらを生き返らせようとしたらしい。めっちゃ本人から叱られてる。つうか、マオラさんスゲー。幽霊なのに毛玉を殴ってらっしゃるわ。
「さて、貴様の願いは叶ったな?」
なんかムキムキないかにも悪魔ーなオッサンが現れた。
「まだだ!マオラはフッカツしていない!!」
「お前の願いは、その女に会うことだ。会っただろう。願いは叶えた。対価をよこせ!」
「キール!」
マオラさんが毛玉の名前を呼ぶ。毛玉は諦めたようで、ただ悪魔?を見つめていた。逃げずに、ただ見つめていた。
「フハハハハハ、寂しく思うことはない。あの女の魂も使ってやる。偉大なる我が主の糧となれることを、誇るがいい」
「!??マオラはカンケイない!やめろ!!」
毛玉が必死で暴れるが、悪魔?には効果がなかった。ムキムキ悪魔が毛玉の魂を抜こうとしたので、尻に陽菜ちんから借りた聖剣を思いっきり刺してやった。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!?な、なんてことをしやがるんだ、貴様!!」
流石聖剣。勇者でない私が刺しても大ダメージである。私がヨッッワイからって無視しているからそうなるのだ。後ろに回り込んでたの、気がついていただろうに。
「え?つまり、元凶はオジサンでしょ?あの毛玉に余計な情報を吹き込んで魂を集めてー、主だか親父だかに送ってたんでしょ??悪魔だかなんだか知らないけどー、鈴木も狙ってたんだよね?つまり………有罪だメガネエエエエ!!」
ワイルドメガネ、再発進!敵を殲滅じゃああああいああメガネエエエエエ!!
「いや、ちょ!!なんだ、この娘………フギャアアアアアア!!」
「私を忘れてもらっては困るな」
悪魔?が私に攻撃しようとしたら、尻に刺さったままの聖剣を陽菜ちんがグリグリしてくれた。なーいす、陽菜ちん!!
「うわあ……」
「えっぐ………」
男性二人はドン引きです。いや、仕方ないじゃない?聖剣、尻に刺さってるから。ドン引きしながらも、足手まといな私をフォローしようと動いてる辺りは流石だねー。
「貴様がキールを唆したのか……」
マオラさんが悪魔?をぶん殴ろうとしたが、あっさり捕まってしまった。
「くそっ……!実体さえあれば!」
「フハハハハハハハ!いかにも!貴様らの憤怒……甘美だな。もっと怒れ!フハハハハハハハ!!」
「マオラ!マオラああああああああ」
毛玉が泣き叫ぶのは別にいいんだけど、マオラさんは助けたいかなー。すっかり冷静になってしまった。あの悪魔?は人の感情を糧にするようだ。
私は鈴木に抱えられながら考える。降ろしてくれと頼んだが、がっちりホールドされてしまった。この方が強いからと言われ、そんなアホなと思いつつステータスを視たら……。
『伴侶への愛』というスキルがあった。伴侶に関わる事で戦う場合、全ステータスが五倍。おかしくない?
そもそも別に抱える必要はないんじゃ??と思ったが、悪魔?が無差別広範囲をしてきたので降りれなくなった。落ち着かないけど仕方ない。マオラさんを助けて、後で詳しい顛末を聞かせてもらおう。
とりあえず、眼鏡をガチで怒らせたこと……後悔してもらおうじゃないか!!メガネ………メェェガネエエエエエエエエエ!!
最近更新滞ってすいません……