情報共有しましょう
あれからお互い落ち着かず、デートは終了した。鈴木とのデートは、多分成功であった。しかし、今私に試練が訪れておる。
「おはよう、ミチルちゃん」
「おはようゴザイマス……」
鈴木がイケメン過ぎて辛い!!意識を逸らすために大量の朝食を並べる。両思いってナニを話したらいいの!??あかん、こぼす!よそうのに集中せねばあああああ!!
「わあ……おいしそう」
本日の朝ごはんは、ご飯に味噌汁、アジの開きとだし巻き玉子、温野菜サラダ。平常心平常心……平常心ってどうやるんだっけ??
「本当は朝ごはん、足りなかったんでしょ?次からそういうのはちゃんと言って」
我ながらクッソ可愛くない。いや、お前が気づけよ。何のための眼鏡だよって話だべ。
「ミチルちゃん、優しいね」
「なんでそうなった!?」
優しさも愛想も無かったよね!?鈴木はおかしい!そう伝えたが、鈴木は首をかしげた。いちいち可愛いな、おい。
「え?適量出すから遠慮しないで足りないとか言ってって意味じゃないの?俺に気を遣ってくれたんだよね??」
「……………………そうとも言う」
そりゃ、鈴木にお腹一杯食べてほしいし……。遠慮に気がつけなかった自分がふがいないだけだ。
「ミチルちゃんのご飯は、いつもあったかくて優しくておいしかったから……なんかすごく満足で、足りないとは思わなかったんだ」
「尊み秀吉………」
「だから、秀吉って誰!?なんで秀吉って言った後に拝むの!??」
「鈴木が尊いから」
「どういうこと!??」
「詳しく話すと三日三晩は語り続けるけど」
「いや、俺じゃなくて秀吉の説明はそんなに時間かからないよね!?」
「チッ」
流石は鈴木。鋭いな。だが、秀吉の説明はそれなりに面倒だし痛い奴と思われる危険性もある。
「…………今日、陽菜ちんと一緒なら説明する」
「え?わかった」
とはいえ、そろそろどん詰まりだ。裏魔王の情報が少なすぎる以上、鈴木とある程度情報共有をしておくべきだろう。
「とりあえず、ごはんを食べよう」
「「いただきます」」
昼休みはアホ部もいるから、話し合いは学校が終わってからとなった。陽菜ちんの家で緊急魔王会議である。メンバーは私、鈴木、陽菜ちん、陽菜ちんが穂積もいた方がいいというので穂積。
「実は、私とミチルは転生者というものなんだ」
「陽菜ちん!??」
流石は陽菜ちん。常に直球ストレートである。しかし、いきなりのカミングアウト!
「知ってた」
「鈴木いいいいいいい!?」
「たまにいるよな。そんなん今更だろ?」
「穂積いいいいいいい!??」
「というか、ミチルちゃんもだよね」
「鈴木いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!???」
さっさと話しておけばヨカッタヨー。そもそも鈴木様は魔王様なわけで、看破系スキルぐらいお持ちですヨネー。
「は?北條もなのか??」
かくかくしかじか、これこれうまし……。穂積のクッキー、おいしい。とりあえず、私と陽菜ちんが持つ記憶について説明した。
「だから、ミチルちゃんは俺の名前を最初から知ってたんだね。転生者自体は珍しくないけど、界を渡る魂は珍しい。しかも『ゲーム』という形で、偶然ではあり得ないレベルの符合があった……。うん、ミチルちゃんから聞いたシナリオを元に調べてみるよ」
「陽菜はなんか覚えてないのかよ」
「全く!」
陽菜ちんはどこに居たって陽菜ちんだよね。
「少しは思い出す努力をしろよ!北條の話を聞いて思い出したこととか、無いのかよ!」
「…………あ」
何かを思い出したらしい。
「ミチルが言っていたゲームは、私もやったことがあるかもしれない。私はそのゲームで魔王になった」
「ま?」
「お?」
「うええええええええええ!??陽菜ちん、どういうこと!??」
正直、記憶が曖昧だがと前置きしてから陽菜ちんは話し始めた。
「ミチルがやっていたゲームは、途中でキャラが豹変するのをウリにしたゲームだろう?友人が伝説のクソゲーだと言っていてな。借りたはいいが、クリアできなかったんだ」
「なんで?」
「ついついサブクエストをやってしまうから、メインシナリオを忘れたり……だった気がする。見かねた友人がこれだけでいいからエンディングを見ろと隠しルートクリア直前のデータをくれた」
「何故そこまでお膳立てされて魔王になれちゃったの?」
「よくわからんが、魔王を倒したら黒いのが出てきて世界の半分がどうたら」
「ちゃんと読め!」
「ちゃんと読んで!」
「ちゃんと読もうよ!!」
陽菜ちんにノベルゲーが向かないのはわかった。しかし、魔王を倒したら黒いのが?
「でも、私にそんな選択肢は出なかった……隠しシナリオがあったってこと??」
私はバッドエンディングが嫌いなので、基本フルコンプは目指さない。ハッピーエンド以外にヒントがあったってことなの!?なんてこった!!




