大きな一歩
映画が終わったら、ランチタイム。鈴木の胃袋を掴むため、全力で作った愛情弁当を……重たいんで家に置いてきた。
「ミチルちゃん、お昼どうしようか。まだお腹すいてないかな?」
そう。私はうっかりしていた。緊張もあってか、ポップコーンを食べまくったのでお腹がすいていない。しかし、時間的には今食べるべきだろう。
「あ」
可愛らしく鈴木のお腹がなった。
「お昼にしようか。うちで食べない?」
温かいスープも出せるし、やはりご飯は温かい方がおいしいと思うのよ。
「あ、ありがとう……」
そして並べられた重箱を見て、思った。
作りすぎやん。
いや、自分でも途中でこの量はアカンやろと思ったんだ。でも、気がついたら作ってしまっていたのだ。一人暮らしが長いから、こんな初歩的なミスはしたことがない。それだけ初デートに浮かれていたのだろう。
「鈴木、ごめん」
「ごちそうだね!」
まあ、ごちそうではある。鈴木が好きなものをたくさん詰めたお弁当だ。
「作りすぎちゃったから、残してね」
「いや、全部食べるよ。ミチルちゃんが俺のためだけに作ってくれたお弁当だもの。それに、このぐらいなら余裕だから」
「え」
鈴木はおいしそうにお弁当をたいらげた。え?少なく見積もっても五人分はあったよね??私はポップコーンのせいで普段より食べられなかったから、鈴木がほぼ一人で食べたようなものだ。
「胃薬とか、いる?」
「大丈夫。本来はこの半分ぐらいが適量なんだ。魔力が高いせいか睡眠や食事はためておけるし、なくても魔力で補える」
「……それは……」
どう考えてもいい状態ではない。
「今はミチルちゃんがいるから、補ってないよ。寝てるし食べてる。そのおかげか、体調はすごくいいよ」
私が手伝っている分鈴木の負担が減り、睡眠がとれるようになったらしい。正確には、私一人の手柄ではない。私は一人で仕事をどうこうしようとしてもできないと理解しているからオウルドなんかの使える人材に仕事を振っているのだ。眼鏡があれば、適正もわかる。
「私だけの手柄じゃないよ。仕事を振ってるだけだもん」
実際に私が片付けているのは微々たる量だ。そもそも、私は厨房のバイトなのだからお手伝いは休憩時間にしかできない。
「ミチルちゃんが城に来てから、色んな事が変わったよ。ミチルちゃんのおかげで、やりたいことがスムーズにいくんだ。ミチルちゃんは、すごい」
「私は鈴木がすごいと思うよ」
仕事を手伝うようになって、鈴木の望みがわかるようになった。鈴木は、魔族達を大切にしたいと考えている。反発されながら、弱い種族を城で雇い、保護していたのだ。弱い種族の中には頭脳労働向きな者達もいて、鈴木のためになるならと頑張ってくれている。
「はああああ………やっぱりミチルちゃん、好きだなあ。ミチルちゃん、俺と今すぐ結婚しようよー。ミチルちゃんと暮らしたい……」
「……………」
私の膝に甘える鈴木。なんだこれ。ご褒美か。鈴木が可愛すぎて辛い。
「まあ、すごいと思ってはくれているわけだし、好かれるように頑張るよ。嫌われてはいないみたいだし………脈はあるよね?ミチルちゃん、俺の外見が好きみたいだし」
顎クイいただきましたああああああ!!
「いや、内面も好み。外見だけじゃなく、内面『も』好み。はう……尊み秀吉………」
大事だから二回言った。推しのアップ……尊い………。
「えええ………なら、何を頑張れば結婚して……いや、俺を好きになってくれるの?」
「そもそも今の鈴木が大好きだから、頑張る必要はないけど」
「……………………え?」
「……………………あ?」
コマンド→にげる
ミチルはにげだした!しかし、まわりこまれてしまった!
ミチルはにげられなかった!コマンド?
流石はラスボス(予定)である。逃げても逃げられなかった。
「ミチルちゃん、もう一回!」
嫌だ無理だと言いたいが、きちんと言うべきなのも理解している。今日は地味ダサ眼鏡のミチルではなく、小洒落た眼鏡のミチルなのだ。だから、少しだけ勇気を出せた。
「………す、鈴木が、好き………だよ」
「ぐふっ…………」
ミチルのこうげき!
かいしんのいちげき!きゅうしょにあたった!
鈴木はたおれた。
「いやいやいや、鈴木いいいいい!?鈴木いいいいいいいいいいいいいいい!??」
「あ………川の向こうでひいばあちゃんが手を」
「うおおおい!?それガチでヤバいやつ!!帰ってこおおい!!鈴木いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」
鈴木は自分からグイグイくるくせに、私からアプローチには弱いようだ。
ママン、ミチルはそんな鈴木に萌えています。ミチルは悪い女になってしまったようです。




