初デート?
お互いが落ち着いたところで、まずは映画の時間を確認する事にした。上映時間を確認しに、ショッピングモール内にある映画館へ。丁度これから目当ての映画が上映するらしい。
「鈴木、この『君なんか好きじゃない』でいい?」
「え?………あ、うん」
鈴木の反応がなんだか微妙だなぁ……。他のが良かった?私もどちらかといえば『ウルファネア戦隊ロザリンジャー!最恐の敵、大ママ王あらわる!!』が観たい。このアニメ、面白いんだよなあ。
しかし、これはあくまでもデート。明らかにこのアニメはアウトである。次来たときに見るんだ!今だけ我慢!
「じゃあ穂積からチケット貰ってるんで、交換してくる」
「あ、そうなんだ。ミチルちゃんの事だから『ウルファネア戦隊ロザリンジャー!最恐の敵、大ママ王あらわる!!』の方が観たいんじゃないかなって思った。晃太からチケットを貰ってたんだね。彼も律儀だなぁ」
穏やかに微笑む鈴木、イケメン。
「尊み秀吉……」
「本当にそれ、誰なの!?なんで拝むの!?」
「じゃ、行ってきまーす」
説明が難しいので雑に誤魔化した。頑張れ、ミチル!私には、試練が待っておるのだ!
「前売り券はお持ちですか?」
「はい」
「何時からの回をご希望でしょうか?」
「一番早い回は何時からですか?」
「三十分後ですね」
「じゃあ、それで」
「お席の種類はどうしますか?」
「か、カップルシートでお願いしましゅ」
噛んだ。だが、ちゃんと言えた。実はこの映画館にはカップルシートなるものが存在する。通常の座席と違い、二人用席で二人の間に肘掛け等のしきりがない。正しく、リア充の象徴である。
「かしこまりました。彼氏さん、素敵ですね」
「!??は、はひ……」
社交辞令だと理解している。カップルシートを頼んだ男女。そりゃ、誰だって恋人同士だと思うだろう。でも、鈴木と私が恋人だと認められた気がして、嬉しかった。
「鈴木、行こ」
「うん」
とても自然な動きで私の手を握る鈴木。
「そ、その……今日のミチルちゃんはいつも以上に可愛いし、人が多いからはぐれたら困るし!」
「ソウダネ!」
自分でやっといて、必死に言い訳する鈴木。他のが私もつられてアワアワしてしまった。
「い、行こう!座席はいくつ?俺、座席を確認したら飲み物とポップコーン買ってくるよ」
そんな事を言いながらたどり着いた座席は「HEY、YOU達!ラブラブだNE!」と叫ぶアフロ外人並みに存在感があった。
いや、マジスゲーのよ。背もたれがハートの上半分。ハートのクッション。赤とピンクに目がチカチカする。暗くなれば気にならないかもしれないが、今現在非常に気になる。
「鈴木、私をここに置いていかないで」
かなりガチトーンで鈴木に懇願した。一人でこの席に座っていたくない!
「一緒に買いに行こうね」
鈴木は私の本気を感じとり、そう言ってくれた。売店のグッズを眺めていたら、良いモノを発見してしまった。
「ウルファネアシャドウ、めっちゃ売れ残ってる!」
ウルファネア戦隊ロザリンジャーストラップが売られていたのだ。私の推しが大量に売れ残っている。イケメンだが器用貧乏で影が薄いウルファネアシャドウ。色もグレーが基調だから地味で子供受けしなかったのだろう。
「買い占めてくる!」
次回グッズも出るように、お布施を払わねばならない。
「あ、なら俺が買うよ。いつものお礼だよ」
鈴木君は在庫まで買い占めたらしく、段ボール一杯のウルファネアシャドウストラップを持ってきた。
いくらなんでも多すぎ………まぁ、いいか。転移魔法で自宅に置く。二つだけ持って戻った。
「はい、鈴木」
「………………え?」
「お揃い」
一つを鈴木に渡し、もう一つは自分のスマホ(的な魔法道具)につけた。
「あ、ありがとう!」
「いや、買ってもらったのは私だから。ありがとう、鈴木」
そしてジュースとポップコーンを買い求め、ド派手なカップルシートも暗くなって気にならなくなったのだが……。
今現在、穂積を呪っております。予想外すぎた。爽やかな恋愛ものかと思いきや、病みありグロありエロありだった。病みとグロはともかく、エロはいたたまれない!とりあえず鈴木にしがみついて見ないように………って、しがみついてた!グロにビビったからだ。
「ミチルちゃん、その……微妙なシーンが終わったら教えるよ」
「ありがとうございます。穂積ぶっ殺す」
「あはは………俺は役得だけどね」
鈴木の笑顔が素敵過ぎて、その後映画を観たはずなのだが、内容が一欠片も入ってこなかった。気がついたら映画は終わっていた。
「ミチルちゃん、行こう」
さっきよりも自然に手を繋ぐ。とりあえず、これだけは言いたい。
「尊み秀吉……」
「だから秀吉って誰なの!?」
鈴木が尊いから仕方がないんだよ。
いつか話すこともあるのだろうか。かつて、日本で過ごした前世の事や、ゲームの事も。今すぐ話す気にはなれないから、またしても雑に誤魔化すのだった。なんで言いたくないかって?私が言われたら痛い奴だと思うからだよ。でも、いつかは……ね。
現在のデートの感想
ミチル→穂積ぶっ殺す
鈴木→だから秀吉って何者!?
睦→晃太有罪
穂積→いや、口コミがよかったから…
※興味がないものは星評価だけ見て失敗するタイプ