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駆け出せ、小洒落た眼鏡!

 私はあれから、むっちゃん先生に毎日指導を受けた。何故か途中から藤堂と穂積も加わり………この三人の中で女子力が最底辺だという事実に打ちのめされ、陽菜ちんと蓮ちゃんにフォローされて持ち直した。


 今日は、過酷なむっちゃんブートキャンプを耐えきった私がついに鈴木(ラスボス)に挑む日である。それにしても、法外な鈴木からの報酬がかなり減ってしまった。世のオシャレ女子はどのようにして資金を捻出しているのだろうか。まさか……パパから?いや、余計なことを考えず、鈴木という名のリア充に挑まねばならない。


「ねーねー、カノジョ!カワイイねー」


 あのイケメンに地味眼鏡が挑むには、化粧と衣装必須!これまでの私は装備不足で敗退していたが、今日の私はそこそこお洒落な眼鏡であるはず!互角とまではいかなくても、デートと思われるに違いない。


「ねー、カノジョってばー」

「申し訳ありませんが、美術品も宗教も間に合ってます」


 しかし、いきなり装いを変更して不審に思われないだろうか。その辺、何も言い訳を考えていなかった。よく考えておかないと。


「いやいや、勧誘とかじゃねーから!キミ、カワイイからお茶に誘いたかったんだって!」






 な ん で す と !?






「マジで!?チャラいとは思ってたけど、お兄さん私をナンパしてたの!?」


「そーそー。俺とお茶……」

「マジすか!ヒャッフー!!地味眼鏡人生初ナンパ、キタタタタタタタタタタ!!」

「あの…」

「お兄さん、ありがとう!ありがとうございます!!頑張ってお洒落したかいがありました!!」


 見知らぬナンパお兄さんの手を取り、ブンブンする。前世も含め、人生初ナンパフゥー!!やればできる子な私、フゥー!!


「ミチルちゃん?」


 一瞬寒気がしたが、呼ばれたので振り返り………絶望した。


「ミチルちゃん!?」


 地面に手をつき!orzのポーズである。有頂天から一気に絶望した。地味眼鏡がお洒落をしても、せいぜい小洒落た眼鏡にしかなれない。眼鏡は眼鏡。眼鏡から抜け出せないのである。


 颯爽と現れた鈴木は、地味系イケメンからガチイケメンにクラスチェンジしていた。そもそも鈴木はイケメンであった。お洒落なイケメンに、勝ち目などない。ただ、これだけは言わねばなるまい。




「尊み秀吉…………」




 お洒落をした推し、尊い。今日は一部髪を上げたレア鈴木なんですね!いつにも増してイケメンですね!!


「だから秀吉って誰!?なんで拝まれてるの!?」


「鈴木いいいいいい!!イケメン過ぎるんじゃああああ!!ありがたいですごちそうさまです尊み秀吉なんじゃあああああ!!完敗だぜ、鈴木いいいいいい!!」


「え!?気に入ったの!?気に入らないの!??俺は何に勝ったの!??」


「詳しく話すと三日三晩かけても足りないかな。とりあえず、写メ撮らせてください。バックアップ用、鑑賞用、布教用に最低三枚ずつオナシャス!!」


 そうだ!我ながら名案だ!鈴木の素敵さを記録せねばなるまい!!


「ええ??」








「いいよ、最高!!目線こっちね!次はそこのベンチに座ってみようか!!」

「ミチルちゃん」

「次は別のポーズいってみようか!その不満げな顔もカワウィーねー!!」

「ミチ」

「今度はここに立ってみて!いいねぇ、その拗ねた感じ、最高!!」

「………」

「次は……鈴木??」


 鈴木の様子がおかしい。なんだか悲しげだ。


「俺、ミチルちゃんに可愛いって言われたくない!カッコいいって言われたかった!着替えてくる!!」

「鈴木、ちょっと待ったああああ!!」


「………なに」


 拗ねつつも待ってくれる鈴木、カワユス……ではなく。きちんと伝えねばなるまい。


「鈴木はカッコいいです」


「……本当に?」


「カッコいいがデフォルトです」


「本当の本当に??」


 先ほどと違い、声に喜びが滲み出ている。私が言うのも何だが、チョロいな鈴木!!


「本当だよ」


 カッコよくて可愛いのだよ。普段は地味系イケメンだが、今日はお洒落なイケメンだ。モデルさんみたいに綺麗でカッコいい。私は鈴木の良さについて語った。鈴木の見た目はもちろん、中身も素晴らしいのだ。


「ミチルちゃん、ストップ!!」


「え?」


何故鈴木は真っ赤になって地面に転がっているんだい?せっかくのお洋服が汚れちゃうじゃないか。


「恥ずかしい!延々と俺のいいとことか癖を語らないで!予想外によく観察されてて恥ずかしい!!」


「……まださわりなんだけど」


「まだあるの!?いや、まださわりだったの!?」


「…………あの〜」


 背後から声をかけられた。警察だった。


「君達、元気なのはいいんだけど、ちょおおおっとうるさすぎかな」


「「すいませんでした!!」」


 鈴木がすかさず私を抱き上げて逃亡した。せっかくのセットが崩れてしまった鈴木を見て、ちょっとぐらいお洒落をしたって鈴木は鈴木だし私は私だと思った。


「ふふふ」


「どうしたの?ミチルちゃん」


「そういえば、鈴木ってば今日はずっとミチルちゃんって言ってるよ」

「あ」


「そう呼ばれるの、好きだからいいけどね」


「!!??」


何故か鈴木がフリーズした。変なことは言ってないと思うんだけど……なんで?


「ミチルちゃん、いつも可愛いけど……今日はもっと可愛いよ」


「鈴木いいいいいいい!!」


 どストレートな褒め言葉に悶えつつ、お洒落してきてよかったと内心ガッツポーズをキメた私がいた。お洒落してきてよかった!そのひと言が欲しかった!!


 ママン、ミチルは小洒落た眼鏡にクラスチェンジする予定です。いつか小洒落た私を見てほしいと思います。

どうでもいいですが、ナンパなお兄さんはミチルが鈴木を拝みだした辺りでコイツやべぇと逃げました。実際ヤバいのはミチルをナンパしていたと知った鈴木ですが、結果としてグッジョブです。生き延びることができました。

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― 新着の感想 ―
[一言] チャラいナンパ男は割りと生存本能が高かった…ということか…やるな!ナンパ野郎!( ・`д・´) 鈴木もミチルちゃんもかわうぃぃねぃ!おばちゃん2人の甘酸っぱい様を見てるだけで胸が焼ける。げ…
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