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花嫁探し以前の問題

 鈴木と賭けをした日から、魔王城で部屋を借りて鈴木のお嫁さん探しを始めたのだが………。


「うーん………どれもしっくりこない……」


 そもそも陽菜ちんレベルの逸材がその辺にゴロゴロしているはずもなく、なかなかいい人材を見つけられずにいた。


「ミチル」


「ピギャッ!?」


「ふふふ、可愛い」


 そして、ただでさえうまくいってないのに鈴木が毎日毎日邪魔しに来る。


「あばばばばばばばばは」


 鈴木よ!ただでさえ鈴木は好みにどストライクなイケメンなのだ!だからハグはあかん!イケメンは匂いまでイケメン…ではなく!


「か、賭けにまだ負けてない!だからお触り禁止!!」


「嫌ではないんだね?そして、ミチルが賭けに負けたら………好きなだけ触っていいんだね?」


「はい?」


 いや、そういう意味ではな………鈴木がまるで獲物を見定めたような瞳で見ていたので、完全に思考が停止した。

 恐怖よりも何よりも、私を射抜くような瞳が、綺麗だと思った。圧倒的優位な位置にある、肉食獣。


「ミチルが賭けに負ける日が………楽しみだね?」


 舌なめずりをする鈴木は………エロい。

 セクシー鈴木。

 フェロモンむんむん鈴木。

 ワイセツ物鈴木。


 頬には触れられただけで、背筋に電流が走った。


「す、鈴木いいい!邪魔しにくんなあああああ!!」


 メガトン☆メガネで鈴木を押し出し、扉に封印をかけた。最近鈴木のスキンシップと色気がすさまじい。

 なんという鈴木(語彙力が死滅)

 ジーク鈴木(語彙力が以下略)

 ビバ鈴木(語彙が以下略)


 とはいえ、鈴木に私みたいな地味眼鏡では釣り合わないのだ。なんとか花嫁候補を選出した。






「私、ミチル様と上手くやれると思います!」

「私でしたらぁ、二番手でも大丈夫ですぅ」

「仮面夫婦でいいです」


「ちょっと待った」


 候補の三人は首をかしげた。いやいや、君たち発言がおかしいからね!?


「何故私とうまくやる必要が?」


「正妃であるミチル様とうまくやるのは当然ですわ」

「鈴木いいいいいいいい!?」


 いや、鈴木のせいではないかもしんないけど、まさかそんな目で………あれか!あの婚約発表のせいかあああああ!!


「違うんです、私は偽の婚約者なんです!」


 花嫁候補の女子達に、状況を説明した。


「………真生様が嫌でしたら、我が領地にいらっしゃいますか?ミチル様でしたら歓迎しますわ」


「そうですわねぇ、ウチでもいいですよぉ」


「……いらっしゃるなら、歓迎します」


 なんで逃亡先に立候補しようとするんだ。迷惑をかけるわけにはいかないし、そもそも鈴木が嫌いなわけではない。その辺りも恥ずかしいが説明した。


「はぁん、素敵!真生様が好き………だけど私じゃ釣り合わないの………揺れる乙女心………」


「真生様も望みながらぁ、力ずくではなく………あえて待っているのですねぇ」


「…………じれったい」


 最後の女子はもう少しオブラートにくるんでから発言していただきたい。


「ミチル様が真生様に釣り合わないなんて、ありえませんわ。あの氷みたいに冷たい真生様をあんなに笑顔にしているのですから」


「その話、詳しく」


 以前の鈴木は無表情で絶対零度の魔王と呼ばれていたそうな。


「どんなに強いご令嬢も一撃」


 それ、どんなシチュエーション?


「どんなに美しい令嬢よりも美しく、女装でプライドをベッキバキにへし折り」


 それ、どんなシチュエーション?写真は………あるんだ。うわ……………。え、くれる?家宝にします。


「淫魔の誘惑にも耐えきる精神力!!」


 それ、どんなシチュエーション……………すげえモヤモヤする。


「「「だから、絶対零度の魔王と呼ばれていたのです」」」


「でも、その真生様が」

「ミチル様の前だとぉ」

「笑っています」


 彼女たちは、だから花嫁は私でなくては、と語る。でも嫌なら助ける。魔族の束縛は凄まじいので、そこは魔族の常識なんだそうだ。


「そもそも、私達はここに来る前に真生様からしつこく……ねちっこく……ウザいぐらいに言われておりますもの。勝負になりませんわよ」


「え?何を??」


「ミチル様はぁ、運命の半身だからぁ」

「傷一つでもつけたら、後悔させる」

「死んだ方がましな目にあわせるともおっしゃっていましたわ。さらに、私達が側妃になったとしても放置するそうです」


「鈴木いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」


 選定以前の問題じゃああああああ!!鈴木の的確な妨害工作に、本日最大の鈴木が出たのであった。


 ま、負けないんだからああああ!!

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