魔王になっちゃう?
秘書眼鏡ことオウルド視点になります。
残念ながら手がかりは消えてしまったが、真生様はご機嫌だった。ここ数年で見たこともないほどにご機嫌だった。
「ふふふ、ふふふふふ」
よほど嬉しかったのだろう。私が機転を利かせて、先日のパーティーに参加しているお二人の写真を撮らせていたのだ。あれは我ながらいい仕事をした。ミチル様を言いくるめてドレスを着せ、他の魔族に『北條ミチルは真生様の半身候補である』と知らしめたのだ。魔族が人前で親密にしている相手は、半身以外ありえない。上位魔族の殆どにアピールする事ができた。お見合いの釣書激減がその効果を如実に教えてくれている。
さらにその時隠し撮りした写真達をミニアルバムにして真生様にお渡ししたのだが、真生様はそれを眺めてずっと笑っている。私から見ても、とても似合いの二人だ。二人ならば、人と魔族の新たなかけ橋となり、我らをいい方向に導いてくださるのではないかと期待してしまう。
真生様の強さは、我らの中でも異物と言っていいほどに抜きん出ていた。誰もが畏怖する存在だった。そんな真生様はミチル様に夢中になった。さして強そうなわけでもなく、地味な小娘。第一印象はそんなものだったが、真生様が見初めた娘が平凡なはずもなかったのだ。
四天王を瞬時に無力化する強さ。先を見通すかのような慧眼。まるで賢者のような知識。そして何より、力無き者達への優しさと的確な采配だ。
力無き者達は無価値。その魔族の常識をひっくり返してしまったのだ。体が小さな種族は器用で、作り出すことに長けていた。さらには農耕という新たな部門の開拓、貨幣の導入……我が国は急激な発展を遂げている。
無価値だったはずの者達を中心に、国までもが動き出しているのだ。彼女は合理的に我々を動かし、その優しさで魅了する。ミチル様のためならば、力無き者達は喜んでその命までも差し出すだろう。
魔族史上最強の真生様と、魔族史上最高の指導者であるミチル様。この二人に導かれ、国はさらなる進化を遂げるだろう。
「真生様、ミチル様が嫁がれる日が楽しみでございますね」
「うん!ふふ、ミチルちゃん……ミチルにはどんな花嫁衣装が似合うかな?ああ、でもミチルと相談しなきゃね。連絡の方はどうなっている?」
「すでに、ミチル様の母君へ連絡しております。また、関係各所にもミチル様について通達しておりますよ」
真生様はミチル様に会ってから、見違えるほど魔力が穏やかになった。まるで、運命の半身を見つけたかのようだ。
いや、本当に運命の半身なのでは!?
運命の半身とは、魔族の夢物語………と思われているが、実は違う。運命の半身は、出会えば必ずわかる存在であり、会えば手に入れずにはいられない。魔族には必ず一人、世界のどこかにその魂を分けた存在がいるのだ。
とはいえ、出会えるのはほんの一握りの魔族だけ。魔族の憧れであり、夢。それが運命の半身だ。
半身契約自体が、運命の半身を真似たモノ。擬似的な半身だ。半身を焦がれるあまりに哀れな魔族が作り出した呪いなのだ。
「真生様」
「ん?何かな?」
「ミチル様に初めて会ったとき、何かを感じませんでしたか?」
真生様は少しだけ考えてから返答した。
「……………最初は、面白い子だなって思った。何かって、何?」
何と言われても、私にも運命の半身が居ないのでどういった感覚なのかはわからない。
「その、不思議と目がはなせない………とか、他と違うような感覚はありませんでしたか?」
「………色が、見える」
「は?」
「彼女に出会ってから、灰色だった世界に、色がついたような感覚があった。彼女が、無くしかけていた俺を引っ張り出してくれた………気がする。これで満足か?」
「はい!ミチル様は真生様の運命の半身かもしれませんな!」
「……………え」
真生様は真っ赤になってしまわれた。とても珍しい。
「運命の半身……魂を分けた唯一の存在………そう、かもしれない。あは、あははははははは!そうか!だからか!!」
真生様は納得したようだ。そうと決まれば、一刻も早く結婚式の準備をしなくては!
「真生様!このオウルド、どこまでもついていきますぞ!」
「はは、まあよろしくね」
はりきって結婚式場や予算、プラン、オプション等、全力で調べまくるのであった。いつか平和になったら、ウェディングプランナーなる者になってもよいかもしれませんね。
しかし、ミチル様も無謀な賭けをしたものだ。負けるに決まって……………ハッ!まさか、これは恋愛における高等テクニックなのでは!?
※違います
真生様を愛しているが、素直になれない。賭けに負けたから仕方なく結婚してあげるわという………伝説のつんでれ!??
※違います。ミチルはデレデレです
とにかく、私はお二人の幸せな結婚のために奔走するのであった。
鈴木はすでに勝った気で囲いこむ気マンマンです。ミチル、危うしwww