一部キャピキャピしている男子達
藤堂と俺は、奴と少しずつ距離をつめていった。最初はかなり警戒されていたが、今では経理の腕を買われて裏帳簿も俺が管理している。部屋に監視カメラがあるので写したりはできないが、ありかさえわかれば後で盗むなりできるだろう。隠し金庫の位置も把握した。
藤堂に至っては、奴に高級バッグやらを買わせている。自分のスキルと睦の薬のコンボで、かなり散財させているようだ。ちなみに高級バッグは質入れして小遣いにしたそうだ。逆に持っていたくないと言われ、納得した。あんなんが何十万とか何百万とか、恐ろしい。
俺も今まで個人にフェロモンを使ったことがなかったので知らなかったが、このスキルはレベルが上がれば範囲や対象が固定できるらしい。今まで悩んでたのが馬鹿みたいだ。
「そろそろですかね」
「だな」
北條から、計画は最終段階に入ったと報告が来ている。上司としては悪くなかったが、奴は俺の家族に手を出そうとした。絶対に許さない。魔導列車に揺られながら、改めて決意した
ふと、藤堂が最寄り駅で降りなかったのに気がついた。
「お前、たまには自分ちに帰れよ」
「いいじゃないですか!どーせ母は男とヤってるか居ないんです……あったかいコンビニご飯はもう飽きたんですよぅ!可愛くてあったかいセンパイの兄弟と寝ると、よく眠れるんです!」
藤堂が居ついてしまったのは誤算だったが、まぁいいか。
「ちゃんと手伝いしろ。それから居つくんなら、ちゃんと食費入れろよ」
「はーい!」
藤堂は素直に買い物や食器洗い、雑用までこなした。こいつも変わったよな。ニコニコしながら働く藤堂に、弟妹もなついているから気にしないことにした。
「あ、センパイ。ボクが居ますから、姫宮センパイんちでゆっくりしててもいいですよ。ちゃんと寝かしつけます」
こいつ、マジでいい奴になったよな!遠慮なく陽菜を補給しに行った。
さて、ようやく本日作戦決行となった。俺達の役目は、あらかじめすぐに警察が突入できるように鍵を開けておくこと。突入の経路はすでに北條と相談済み。トイレを装い、藤堂と二人で解錠しておいた。
「………下が騒がしいな」
どうやら、警察が来たようだ。出ていけ、と怒声が聞こえる。
「私、確認してきます」
手伝った方が早いだろう。静かに立ち上がった。
「危険と判断したらすぐ戻れ」
「はい」
手引きしたのは俺だから、それはないわ。笑顔で男に頷いた。
階下では男達が争っていた。冒険者と警察を入れまいと、男の手下が人海戦術で阻んでいる。これは予想外だったな。来たのが俺で、正解だ。スキルを解放する。
「ああん……」
「こんなの初めて……」
「めろめろ~」
俺のフェロモンはメロン△ンナちゃんのメロメ□パンチ的な効果だったんだな。初めて知ったわ。
効果を絞ったから、フェロモンにかかってない人達がドン引きしている。
「抑えておきます。長くは保ちません。どうか、お早く」
「ああ!行くぞ!」
さて、これでいい。ついでに睦の薬で眠らせて捕縛しておいた。
「手伝いますよ~」
藤堂も手伝ってくれたので、早めに男の元へ戻れた。男の部屋に戻ると、丁度男が逮捕されるところだった。
なんか、嘘だとか喚いているから言ってやった。
「嘘じゃない。現実だよ。狙った相手が…というか、間が悪かったな。同情はしない。ざまあみろ」
北條と勇者と魔王を敵にまわした時点て詰んでたんだよ。あの最強メンバーに勝てるはずがないわ。
俺は胸に入っていたパットとカツラを男に投げつけてやった。ようやっと言ってやれるわ。レッツネタバレ!!
「そうそう、名前を教えてなかったな。俺は穂積晃太。母が世話になったな」
男は顎が外れそうなぐらい大口を開けていた。その顔が見たかった!!
「はい、これ返す。悪いけど、僕は女性にしか興味ないからぁ」
藤堂もパットを投げつけた。もう一つは……大粒のダイヤがついた指輪。どう見ても婚約指輪だった。
スゲーな、藤堂!そこまでやってたのか!!男は顔面蒼白で泣きそうになっている。警察もビックリしてた。
「逮捕協力、感謝する!」
先に復活した警察さん。俺らが協力関係だって気がついたみたいだ。めっちゃ睨んでる。
「やあ、首尾はどうかな?」
ここで魔王が現れた。
「貴様、どういうつもりだ!?貴様が手を組もうと言ってきたのだぞ!?」
男は鈴木に怒鳴りつけた。鈴木は呆れた表情だ。
「そもそもさあ、晃太君ちにちょっかいかけてきたのは君だよ?生半可に手を出したら、また返り咲いて仕返ししようとするかもしれないじゃないか。だから、完膚なきまでに叩き潰してやろうってミチルちゃんが計画したんだよ。いやあ、流石はミチルちゃんだよね!こんなに上手く行くなんてね!ちゃあんと根回ししたから、お金を積んでも出てこれないよ。牢屋暮らし、頑張ってね」
鈴木、お前本当に北條が好きなのな。今回の借りもあるから、上手くいくよう応援するからな。
「お前の、せいでえええええ!!」
男は隠し持っていたナイフで鈴木に襲いかかる……と見せかけ俺を刺そうとしてきた。
「は~い、そこまで!眼鏡☆シールド!!」
「ぐふっ!?」
場違いなほど朗らかな声と共に、男が結界に弾かれ、挟まれた。すでに俺の眼前には陽菜がいる。俺もそれなりに戦えるんだけど、心配してくれたんだな。
「ミチルちゃん!」
鈴木、超嬉しそうだな。
「ジーク眼鏡!」
「ジーク眼鏡!」
「ジーク眼鏡!」
そして、女王様みたいな北條は、魔王と魔族達にかしずかれていた。もう、北條が魔王やればいいんじゃね?今回、北條は有能さを発揮しまくり、ファンまでできたらしい。
陽菜とイチャイチャしながら北條を眺めるのだった。
追伸・事情聴取が大変だった。




