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推しメンとの朝は刺激的でした

 私の朝はそれなりに忙しい。晴れた日は洗濯機をまわしてから朝食と弁当を作り、身支度を整え、洗濯物を干してから家をでなくてはならない。今日は鈴木が待っているはずだから、30分も早く出た。

 浮かれすぎる表情をひきしめるには30分は必須と判断したからだ。


「あ、ミチルちゃん。おはよう」


 しかし、既に鈴木は来ていた。スマホを見るが、やはり約束の30分前である。


「…鈴木、早くね?」


「ミチルちゃんも早いね。その…と、友だちと待ち合わせなんて初めてだから早く来すぎちゃった」


「……………」


 ナニコレ。可愛い。

 照れながら話す鈴木、可愛い。そして、ミチルちゃん呼びが胸キュン。笑顔を保っていますが、内心は地面に転がり悶えております。内心は鈴木ぃぃぃ!鈴木ぃぃぃ!!と叫びまくっております。


「ミチルちゃ……だから、なんで拝むの!?」


「尊み秀吉……」


「そして秀吉って誰!??」


 鈴木が叫ぶと、腹が鳴った。慌てて腹をおさえる鈴木だが、めっちゃ鳴っている。


「「……………………」」


 何となくお互い黙ったが、まだ腹が鳴っている。鈴木が真っ赤になってて可愛い。


「鈴木、朝ごはんは?」


「……朝早かったから…食べてません」


「よし、来い」


 幸いまだ時間があるし、簡単なものなら出せる。鈴木の手を掴んで我が家に連れ込むと、座布団に座らせた。

 チンするご飯で塩にぎりを作成。たまご焼き、冷蔵庫に入れていた豚汁と弁当のおかずの残り(夕飯にする予定だった)を温めなおして出した。

 今日のおかずはピーマンのベーコン巻きと煮カボチャ、シュウマイなのでボリュームは問題ないだろう。


「おいしい…」


 チラッと時計を確認する。鈴木がゆっくり食べても間に合うだろう。


「お粗末様です」


「いや、ごめん!朝ごはんまでご馳走になって…」


「いや、気にすんな。私が勝手にやっただけだから。大したことないご飯でも、美味しいって食べてくれるのは…嬉しいもんだね」


 鈴木に気をつかったわけではなく、これは本心だ。こういうの、いいな。

 ママンは滅多に日本に帰らないし、帰ってきても誘拐対策とかで高級ホテルとかに泊まる。だから誰かに手料理を食べさせる機会があまりない。美味しいものが食べたくて工夫してるから、下手ではないと思う。

 穂積やむっちゃんともおかず交換するけど、評価がけっこう辛口だしなぁ。そういや親友は鈴木みたいに美味しいって食べてくれる。ただ、こんな風に自分のテリトリーである自宅に招いてごちそうするのは初めてだ。


「ごちそうさまでした」


 鈴木は綺麗に完食した。食器は帰宅後にまとめて洗うからと言ったら、流しに片付けてくれた。


「じゃあ、行こうか」


 昨日と同じく鈴木の自転車の荷台に座ろうとして、そこにクッションがくくりつけてあるのに気がついた。


「……これ…」


「あの、ぶ……家の人が、お尻が痛くなるからこの方がいいって……」


 なるほど。確かに荷台に座るとお尻が痛いのでありがたい。


「家の人にお礼を言っておいてね」


「うん」


 そして、私はちょっとした出来心で鈴木の背中にひっついた。あったかいし、いい匂いがするから心地いい。鈴木は一瞬ビクッとしたが何も言わず、そのまま自転車は学校に到着した。

 そう、私は完全に失念していたのである。


 鈴木はゲームの攻略対象なだけあって、綺麗な顔をしている。さらに転入生だから目立つ。

 そんな目立つやつが自転車二人乗りで来たら、超目立つ。しかも、荷台にいた女子は背中にひっついていた。すると、どうなるか。







「ミチル、鈴木君と付き合ってるってマジ!?」


「ちゃうわ」


 むっちゃん、超楽しそうですね。違いますから。


「北條…お前、須藤と婚約してるだと!?何故俺に言わん!」


「鈴木だし、してないし!」


 アホ部よ、お前本当に人の名前を覚えられないんだね。今どき婚約って…アホ部の家はともかく、庶民はしないからね!?


 鈴木はションボリしていた。すまん、鈴木!こんな地味眼鏡と噂になるなんて嫌だよね!いや、それともアホ部のせい?


「と・に・か・く!私と鈴木はただの友だち!鈴木がかわいそうでしょ!こんな可愛げの欠片もない地味眼鏡と付き合ってるなんて噂されたら!鈴木との噂が消えるまで、私は鈴木からはなれる!」


「え……」


 私は必死である。鈴木の名誉は私が守る!いや、鈴木の名誉に傷をつけたのも私だが…責任はとりますぞ!


「鈴木に迷惑だから、違うって噂流して!むっちゃん顔広いし得意でしょ!」


「その…ミチルちゃん」


 鈴木が私の袖をクイクイと引いた。なにそれ、可愛い。


「俺…ミチルちゃんと噂になるのは嫌じゃない。ミチルちゃんがはなれる方が…いやだよ……」


「……………」


 鼻血を出さなかった私を、誰かほめてくれ。危なかった。

 ナニコレ、可愛い。涙目でなんて殺し文句を!テイクアウトしてもいいですか!?写真撮りたいぃぃ!!


「…情報は正確にってことで『まだ』付き合ってないって噂を流してあげるわ」


 むっちゃん、めっちゃ悪い笑顔をくれました。おいぃぃぃ!!


「むっちゃぁぁん!?」


「ありがとう、八木君」


「鈴木ぃぃぃぃ!??」


 鈴木よ!おかしいだろう!鈴木はこんな地味眼鏡とお付き合い手前なんだと噂を流されてもいいの!?


「どういたしまして~。ミチル、うっさいわよ。でもうちのミチルを見初めるとは、いい趣味だわ、鈴木君。応援しちゃうわよ」


 むっちゃん、地味に私の扱いが雑。しかも、いつからむっちゃんは私のオカンになったのか。私はオネエから産まれた覚えはない。


「え…あ、ありがとう…八木君」


「鈴木ぃぃぃぃ!?」


 そこ、頬を染めるとこじゃないよ!え!?どゆこと!??否定しろよ、鈴木ぃぃぃ!!


「あらやだ。せっかくだから睦かむっちゃんでいいわよ。そうね、せっかくだから鈴木君も………真生だから…魔お「「絶対ダメ!!」」


 私と鈴木が同時にむっちゃんを遮った。鈴木が何故か青褪めた表情で私を見ている。


「まだ言ってないのに~」


「マオマオとか、マオたんとか、もっと可愛いアダ名があるでしょ!!それは可愛くないからダメ!!」


「それもそうね、じゃあマオマオにするわ。ミチルもどうせだから名前呼びにしたら?」


 むっちゃんはあっさりと鈴木をマオマオと呼ぶことにしたようだ。名前呼びね…鈴木は私を『ミチルちゃん』と呼ぶから……


「………真生君?」


「…………は、はい………」



 なんだこれ!なんだこれなんだこれなんだこれ!!



「「…………………」」



 すげぇ恥ずかしい!お互いなんか恥ずかしくて黙ってしまったじゃないか!無理!名前呼び、絶対無理!!


「いやん、もう初々しいったら!」


「須藤、貴様には負けんぞ!!」


 むっちゃんとアホ部がなんか言ってたけど頭に微塵も入らない。


「す、鈴木ぃぃぃぃ!!!」


「ミチルちゃぁぁん!?」







 とりあえず、私は鈴木の名を叫んで逃げた。戦略的撤退と言う奴だ。鈴木は恋愛対象としてではなく私を友人として特別に見ているだけで……


 まずい。友人でも普通に嬉しいわ。関わるつもりはなかったが、ここまでガッツリ関わってしまったのだ。今さらだろう。


 いや、むしろ私が鈴木を変えてしまえばよいのではないだろうか。そう、鈴木が今のままでいられるようにすればいいのだ。


 そうと決まれば、対策を考えなくては!!鈴木をあんな…デーモンな閣下みたくしないんだから!!


 私は屋上で鈴木の閣下化阻止を誓った。そして、一時間目に遅刻して担任のイケメン(病んでれ予備軍)に叱られたのであった。

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