ある意味キャピキャピしている男子達
結局睦は天堂先輩の妹(名前は忘れた)によって回復し、戻ってきた。いつの間にかスゲー仲良くなっている。睦のコミュ力はカンストしているので珍しいことではないが、やたらかまっているので気になった。ついに睦に好きな女子ができたのかもしれない。
「さて、装備は整ったわ!次は女性としてのふるまい!いくら美しく装っていても、がに股だったり口調やしぐさが粗野だったら興ざめよ!百年の恋も一瞬でさめちゃうわ!」
「は~い☆」
「へ~い」
「晃太!いえ、今からあんたはコウちゃんよ!そんなやる気ない返事じゃ、男だって即バレしちゃうわ!相手に屈辱を与えるために惚れてもらわなきゃいけないんでしょ」
「………わかりました」
そうだ。あのクソヤローに一泡吹かせてやらなきゃ。そう考えたら俄然やる気が出た。出たの、だが…………
「座る時は足を揃える!」
「「はい!」」
「がに股禁止!!」
「「はい!」」
「姿勢保持!美しく歩く!!」
「「はい!!」」
なかなかに難しい。意識したことは無かったが、無意識に男らしいしぐさをしてしまうらしく、連日睦のハリセンにしばかれた。鞭じゃなかっただけよかったと思いたい。
上手くいかない俺とは逆に、藤堂は簡単にマスターしていった。さらに、普段もオネエキャラにクラスチェンジしやがった。やめろ、キャラがややこしくなるだろうが。しかもただでさえ差がついているのに、日常でも研鑽されたらさらに追いつけなくなるっつーの!俺も必死で練習し、研鑽を重ねた。
結果、特訓は日常にも支障をきたした。
「晃太……最近しぐさが女子っぽい気がする」
「穂積……たまにオネエ言葉になってるけど、大丈夫?」
完璧を目指すあまり、日常でも女らしい動きや言動が出てしまった。死にたい。いや、自然に出るぐらいじゃないと使えないとはわかっているんだ。北條から進捗報告も受けているから、俺の………わ、私、の出番は近い。出番までには完璧に仕上げなければならない。
ちなみに、女子からヤリ(トライアングル音)と距離を取られていた藤堂はオネエキャラになったことで人気を回復させたようだ。転んでもただで起きない男だ。オネエだと女子の警戒が薄くなるらしい。こいつ、女で失敗したのにまだやる気か?
たまたま下級生の教室を通りすぎたら、コスメの話題で女子と盛り上がる藤堂がいた。
「アタシがメイクしてあげるよ~」
楽しそうに女子へメイクを施す藤堂。あいつ、ガチで楽しんでやがるな。ちょっと羨ましいが、ああなりたくはない。あいつ、さりげなくセクハラしている。ストーカーあたりをぶつけてやろうかな。北條に相談しよう。
そう思いながら、教室に戻った。放課後の教室で、陽菜がウトウトしている。皆帰ったらしく、陽菜しか残っていなかった。
「陽菜」
「………なんだ?」
寝ぼけながらも返事をする陽菜。陽菜の席の向い側へ座り、クッキーを差し出した。
「褒美だ。食え」
陽菜は連日冒険者ギルドに出向いて討伐報酬を使い冒険者を雇いまくっている。時間がないので人海戦術という北條の指示だ。
俺の強みは料理だろう。今まで見た目はさほど意識していなかったが、睦に渡された雑誌を見て可愛らしいラッピングやアイシングクッキーも勉強した。陽菜に渡したのは、新作のアイシングクッキー。陽菜が好きなペカチュウというネズミモンスターをディフォルメしたキャラだ。
「た、食べるのがもったいない……とりあえず写メっていいか!?」
すごく嬉しそうだな。こいつ、本当にリアクションが素直で喜ばせがいがあるよな。
「好きにしろ」
写真を撮ったらクッキーを食べる陽菜。こいつがうまそうに食べるのを見るのが好きだ。
「…………なあ、陽菜」
「ん~?」
クッキーに夢中で俺を見ていない。今なら、素直に言えるだろうか。二人きりになれるチャンスは意外に少ない。家には弟妹がいるからな。
「……卒業したら、結婚しようか」
陽菜が硬直して……クッキーにむせながら超頷いている。首が取れないか不安なぐらいにブンブン縦に振っている。
「ほら、茶。なら、これやるよ」
水筒を渡し、陽菜の指に指輪をはめる。陽菜の左手に輝く婚約指輪。給料の魔石を使い、北條に紹介された店で作った特注品だ。まさか蜂蜜プリンが対価になるとは思わなかったが、守護の魔法が付与されている。シンプルな指輪は、陽菜によく似合った。
「ふああああああああああ………」
たぶん、喜んでいる。指輪を眺める陽菜は嬉しそうだ。
「その……俺、今回の件が終わって卒業したら、鈴木んちで就職する。母さんも鈴木んちで働くから、そしたら暮らしも楽になる。弟妹の学費もなんとかなりそうなんだ。正直あんま贅沢はできないけど、結婚式できるぐらい金貯める。い、一生うまいメシ作ってやるから嫁に来い!」
「晃太ああああああ!!行く!行く行く!結婚するぅぅ!!」
勢いよく机を飛び越えて抱きつく陽菜。色気もクソもねぇな。とりあえず陽菜を受け止める。柔らかいし、いい匂いがした。
「晃太、好き!好き好き!大好き!!」
「んん…………俺も………す、すき………」
「晃太がデレた!好きすぎる!!」
俺的に羞恥心とか色々ゴリゴリ削られたが、陽菜が喜んだからいいことにした。陽菜とのラブラブ学生ライフのためにも、さっさとケリをつけなきゃな!!
こうして俺は陽菜のおかげでメンタルを回復し、どうにか睦に合格点を貰ったのだが……真の試練はこれからだった。




