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友人が魔王っぽい件について

今回も穂積視点になります。

 北條の提案で、俺たちは学校に行くことになった。小学校と違って高校は出席日数が足りないと留年する。家の金が足りないときに休んでバイトしていたツケがここに。

 母と弟妹は休ませて鈴木の家というか、魔王城に居させてもらうことになった。とても安心ではあるが、俺の常識が崩壊しそうだ。桔梗が知らないところに行くのは不安だろうからとついてくれることになった。シャケにぎりの余りをあげたら、めっちゃ喜んで食べてた。今度ぶり大根を作ったら北條にも分けるかな。





 学校に到着すると、友人の持病が発症してしまった。わりといつもの事といえばいつもの事だ。


「ふふふ…ふはははは!愚民どもめ!泣いて許しを乞うがいいわ!!」


 なんだかいつも通りアホな北條を見ていたら、朝の事が夢なんじゃないかって気分になってきた。


「北條の方が魔王っぽい件について」

「それだ」


 どれだよ。陽菜の適当な相槌に呆れる。つーか、魔王候補の鈴木より魔王っぽいってどうなんだ。


「ミチルちゃん、カッコいい……」


 鈴木は北條にウットリしていた。鈴木的にはあれがカッコいいのか?つまり魔王が魔王っぽいのって、カッコいいと思ってやっている?魔王って、永遠の中二病なんだろうか。魔王の持病について考えていたら、北條が担任のイケメンにしばかれた。


「北條、机に乗るな!バカタレが」


 実は机に乗って騒いでいた北條。完全に自業自得だ。睦は担任が来たのを教えようとしていたが間に合わなかったらしい。


「暴力教師、最低!PTAに訴えて勝つぞ!」


「お前、自分が明らかに悪いだろ!机に乗るな!」


「叩く必要はないじゃん!虐待だ!」


「いやいや、待て待て待て」


 どうでもいいやり取りだが、もう見られないかもしれないと思うと大事な気がしてくる。いや、気のせいだ。明らかに北條が悪いだろ。


「アタシ、動画撮りました。先生、どうします?」


 いや、どうしますも何も、ないわ。担任の教師人生が終了しかねないからやめてやれ。担任はすでに涙目だぞ


「睦、それぐらいにしとけ。先生、なんとかしときますから、さっさとホームルーム始めてください」


「あ、ああ……」





 そして、昼休み。空き教室で魔王っぽい友人は配下から報告を受けていた。鈴木、陽菜、俺がいる。睦は家庭科部メンバーに天堂先輩の妹を加えて昼食を取るらしい。あいつ、女子に混ざると違和感無さすぎてたまに見失うんだよな。兼田はかなり渋った。あいつ、ダチが俺ら以外にいないからな。瀬羽巣さんに連行されてた。許せ、兼田。


「ふむ、ご苦労様。これ、ご褒美ね」


「にゃ!これは高級猫缶……ニャンプチ!?こ、こんにゃイイモノを頂いてよろしいのですにゃ!??」


「仲間達と、たんとお食べ」


「あ、ありがたき幸せ!」


 あの猫缶はどこから出したのだろうか。謎だ。


 後で聞いたが、桔梗は猫妖精だから人間と同じメシでいいが猫獣人は味覚が猫に近いので薄味を好むそうだ。さらに、猫缶は獣人に通貨で買うという概念がないので入手困難なのだそうだ。

 とりあえず、次からシャケにぎりではなく猫缶の方をストックしておこう。


「穂積、いくつかプランがあるけど、どれにする?一番、鈴木と陽菜ちんによる力押し制圧」


「おい」

「任せろ」

「塵ひとつ残さないよ」


「いや、鈴木。それはダメ。証拠と犯人は残そうね」


 まさかの完全脳筋プランだった。しかも、北條が注意する部分がおかしい。塵は残せ。いや、違う。そこはどうでもいい。

 俺が驚いて固まっていると、北條が話を続けた。


「もちろん私がしっかりサポート!本拠地に乗り込み、犯罪の証拠をバッチリおさえて通報します」


「…………」


「問題は、処理を司法に委ねる事になっちゃうからお金をしこたま使ってもみ消したり、穂積んちに逆恨みする危険がある。犯罪の取りこぼしもあるかもしれない。敵はかなーり手広くやってるからね。なので、解決は一番早いけどオススメしない」


「…家族に何かあったら困る。それは無しだ」


 提案しただけで、北條も実行にうつすつもりはなかったのだろう。頷いた。


「了解。二番、冒険者ギルドに依頼する。猫族の調査結果付きだから、さほど時間をかけずに確実な逮捕が見込める。冒険者ギルドを絡めれば、不正の確率はグッと減る」


「ネックは費用、か」


「そうだね。鈴木や陽菜ちんが肩代わりしてくれるだろうけど…。それに、ツテが今使えないんだよね。そっち方面で信用できて腕がいい冒険者さんには別の依頼を出しちゃってるからさ」


「そうだな。やっぱ、費用を肩代わりしてもらうわけにはいかない」


「了解。どうせなら、私達の手で犯人を地獄に突き落としてあげたいよね。穂積んちのプリキュン天使を怯えさせた罪は重いのだよ!」


 お前がうちの弟妹を可愛がってるのは知ってるが、人んちの弟妹にへんな呼称をつけるんじゃない。


「ふはははははは!愚かな虫けらどもめ!私達に敵うはずがなかろう!我らの力を見せつけてくれるわ!!」


「流石は我が姫。この小文吾、全力で姫の力になりましょう!」

「ミチルちゃん、カッコいい……」

「ミチル様、我々もお手伝いしますにゃ!」

「ミチル様、我々も頑張りますにゃ!」


 


「鈴木より北條が魔王っぽい件について」

「それだ!」


 どれだよ。いや、マジで猫獣人からキラキラした瞳で見られてる北條は、こう………かしずかれてるって感じだ。女王様っぽい。鈴木もこう……侍ってる感が……落ち着け、俺の脳。


「鈴木、力を貸してくれるよね?」


「もちろんだよ!俺、ミチルちゃんが望むなら世界を滅ぼしてもいいよ!」


『いや、滅ぼすなよ』


 鈴木以外の全員が一斉につっこんだのだった。鈴木という最強の友人がいる北條は、いつでも魔王になれるんじゃないかと思った瞬間だった。

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