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幸せからまた不幸へ

穂積視点になります

 桔梗が慌てて飛び出したのをチビ達が追いかけようとした。しつこくし過ぎたのかと泣く弟妹を宥めるのは大変だった。母が帰宅したので弟妹を任せて桔梗を探すと、猫が増えていた。

 何故か北條もいたが、北條にいたってはパジャマ姿だったためとりあえずうちに入れた。


「桔梗ちゃん、おかえり!!」


「ミチルちゃんだぁぁ!!」


「にゃんこさん、お名前は!?」


 しかし、失敗した。弟妹が大興奮している。話をするどころではない。


「あー、わりぃな。うるさくて」


 隣にいた猫獣人に話しかけると、首を横に振った。


「いやいや、子供は元気にゃのが一番ですにゃ。我が家にゃど……正直もっと酷いですにゃ…躾がいいのにゃ……誰もヒゲを引っこ抜こうとしないにゃあ……」


「それは叱るべきだな」


 猫のヒゲを引っこ抜こうとするなんて、酷すぎるだろう。


「ほらほら、寝る時間よ」


 母に追いたてられ、弟妹は隣の部屋に行った。


「アチシも一緒にねんねですにゃ」

『わぁぁい!!』


 大人気な桔梗の隣で誰が寝るかともめたが、全員と寝ますにゃと言ってから静かになった。北條がそっと隣室で写メ撮ってきた。でかい猫になった桔梗の腹枕で寝こける弟妹は天使だった。


「それ待ち受けにするからくれ」


「仕方ないなぁ、唐揚げね」


「よしきた!」


 うちの弟妹の写メは唐揚げと交換された。


 ようやく北條と本題に入った。北條は桔梗だけでなくいつのまにか配下にしていたこの猫獣人達にも警護をさせていたらしい。桔梗とのリンクが遮断されたため、慌てて桔梗の気配が途切れた場所に転移。様子見していた猫獣人達は敵が北條(ボス)に気をとられたため桔梗を救出したらしい。とりあえず、俺は一番気になっていた部分を確認した。


「で、何故お前の眼鏡はなんで鬼風なんだよ」


「勝負眼鏡です!鬼眼鏡は攻撃力・ビームの威力大幅アップ効果があるのだ!!」


「勝負眼鏡………」


 知らなかった。俺の友人は眼鏡で攻撃力が変動するらしい。心底どうでもいい。


「まあ桔梗のおかげで大丈夫そうだけど、念のため今夜はお泊まりしてもらうから」


「おう。本当に悪いな」


「いいってことよ」


 そして、友人は帰宅した。


「にゃにかありましたら、お申し付けくださいにゃ」

「ミルク分は働きますにゃ」


「いや、帰っていいぞ?」


 そう言ったのだが、結局仕事熱心な猫達は不寝番をしてくれたようだ。お礼のシャケ握りを握っていたら、事件は起きた。


「金返さんかい!!」

「このドロボーが!!」

「はよ出てこんと奥歯ガタガタ「歯がいらにゃいのにゃ?子供が怖がってるにゃ……アチシに引っ掻かれたい馬鹿はどこのどいつにゃああああ!!」


「ヒッ!?魔族!?」


 確か桔梗は魔族ではなく妖精族だったはずだ。どうでもいいか。本人も否定してないし。


「我ら、誇り高き(マオ)族の戦士にゃり!!我らが主君の友人宅に無体を働くなど、許さにゃいのにゃ!!」


「魔族が来るなんて聞いてねえ!逃げるぞ!!」


 逃げた男達は皆ヤのつく自由業の格好をしていた。明らかに堅気じゃない。


「晃太…ごめんなさい……」


 ポストに入れられた書類を見て、母が泣いた。父が死んでも泣かなかったのに。見せてもらったのは借金の書類。知り合いに土下座して頼み込まれ保証人になった。しかし、こんな多額ではなく十万ちょいだったため最悪肩代わりするつもりだったそうだ。


 その額、一億。


 もはやマトモに働いて支払える額じゃない。学校を辞めて鈴木の所で働かせてもらうか?


「穂積様、ミチル様と鈴木様が来ますにゃ」


「………そうか」


 頭を下げて頼まなきゃ。仕方ない。学校、陽菜と卒業したかったけど、無理だな。陽菜にも謝らなきゃなんねぇな。


「晃太!何があった!?」


「お前、飛び降りるなってか…着替えてこい」


 今起きたのだろう。寝癖がついた頭とパジャマ姿で二階から飛び降りてくる陽菜。駄目だ。いつもみたいに怒る気力もないや。


「晃太…」


「穂積!」

「晃太君、大丈夫!?」


 真生と北條も来た。あ、やべ。キツい。泣くとかマジでダッセェわ。


「借金……よし。俺がとりあえず払うよ」


「…………………は?」


「私もコツコツ貯めた貯金があるぞ!そのぐらいなら払える!!」


「……………マジ??」


「いやいや、そもそも穂積ママって借金こさえるなんてヘマするの?書類見せていただけます?」


 北條の眼鏡がキラリと光った気がした。


「……これ、偽造文書だね。この土地が欲しいヤのつく自由業さんがママさんの同僚を脅してやらせたみたい」


「………そう、なのね」


 項垂れる母。そんな顔すんなよ。ちゃんとチビ達は学校行けるように、俺も働いて頑張るからさ。運が悪かった。仕方ないよ。


「はい。というわけで、魔王予定の鈴木君」


「うん」


「ここが権力の使いどころだよね?」


「そうだね」

「私も協力するぞ!」


「待て!お前らナニしでかす気だ!?」


 北條は堂々と断言した。


「全てを見抜くサポート眼鏡に魔王予定と勇者が味方なのです!このメンツに出来ないことなどありません!大船に乗ったつもりでいなさい!!」


 北條があまりにも自信満々で、不覚にもカッコいいと思ったが……気のせいに違いない!!

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