出た杭は、打たれまくりました。連打です。
また列に視線を戻す。昨日私がビームを放ちまくったかいがあり、皆大人しく並んでいる。とってもスムーズだ。それでもイラついてキレる馬鹿がいたが、すかさず桔梗の猫パンチにやられ、陽菜ちんにしばかれ、また最初から並ばされていた。素晴らしい連携である。それがいい感じの見せしめになり、皆緊張した様子で並んでいる。
「なんつーか、鈴木が過保護なのかと思ったが…これだけ血の気が多い奴等がいたら護衛はマジで必須だな。北條、お前あんま無理すんなよ?一応女なんだから」
「善処しまぁす」
穂積の心配はありがたいが、鈴木を魔王にしないという崇高な目的があるので多少の無茶は仕方ない。にっこり笑って誤魔化しちゃうぞ。
「………どうしてこう、俺の周囲の女は好戦的なんだ」
残念なことに穂積は誤魔化されてくれなかった。勘のいい奴め。
「ミチルちゃーん」
鈴木が手を振っている。とりあえず、軽く手を振った。チーティスさんもいるね。めっちゃ両手を振っている。あ、鈴木にしばかれた。
魔王様も!?とざわめく周囲と、真っ青な穂積。心配する厨房の皆。
「晃太、どうした?」
「……魔王?」
「「あ」」
私達の反応に、穂積は私達が知っていたと理解した。
「北條、説明しろ!陽菜!お前も知ってやがったな!?」
「とりあえず、手を動かそうか。今はバイト中ですから」
キレた穂積を宥める。真面目な穂積はバイト中という呪文に、しぶしぶまたつみれ汁をよそう。穂積は食いぶちを稼ぐためにとてもよく働きます。
「はい、鈴木」
「ありがとう」
鈴木のだけトレイが違うことに気がついたチーティスさん。
「なんで真生様のはトレイの色が違うんです?」
「鈴木のは私だけで作ったやつだから」
「ズルい!それズルいですぅぅ!」
「チーティスさん、穂積のは私が作るよりうまいですよ。保証します」
「わーい!」
あっさりと機嫌をなおしてご飯を受けとるチーティスさん。尻尾もゆらゆらご機嫌です。他の四天王も来たけど普通にご飯を受け取っていきました。なんか、秘書眼鏡が悔しそうにうまいって言ってた。いいじゃん、美味しいんだったら。チーティスさんみたいに素直に楽しめばいいのに。
食堂ラッシュも終わり、ぼちぼち片付けようかとなったときに下っ端らしき兵士さんから声をかけられた。
「あ、あの……」
「なんでしょうか?」
「きょ、今日はじゃんけん、しないんですか?」
「………………………どうします?」
上司であるピガーさんに確認した。ピガーさん…鍋を抱えている。食べたかったのね。
「……………許可する」
しょんぼりしつつ、ピガーさんが決断した。本当は独り占めしたかったんですね。今日もじゃんけん大会が開催され、チーティスさんが肉じゃがの余りをゲットしたのだった。ピガーさんには今度差し入れしよう。そうしよう。
そして私は、物陰から穂積を見つめるストーカー人魚を発見した。
「桔梗」
「にゃはははははははは!」
「いやあああああ!猫おおお!?逃げて!今日はいなかったから安心してたのに!逃げて、逃げてえええ!!」
私の意図を悟り、追う桔梗、逃げ惑う金魚鉢の人魚。そして必死でカートを押すゴブリン。ドリフトをキメても水をこぼさないのがスゴいね。
「お前…酷すぎないか!?」
善良な穂積からのツッコミがきた。
「あの人魚はストーカー予備軍です。またご家族に心配と迷惑「北條様ありがとうございます。私が間違っておりました。本当にありがとうございます。無礼をお許しください」
穂積がガチで土下座した。ドン引きしている私に、陽菜ちんが真顔で耳打ちしてきた。
「…以前、強烈なストーカーがいたんだ」
納得した。私が追い払った奴以外にもいたらしい。穂積はストーカー気質の女子に好かれやすいのだろうか。
とりあえず、人魚に穂積ラブ<<越えられない壁<<猫怖いとインプットされるか、穂積の周辺に必ず桔梗ありと認識するまでやるしかない!!
「眼鏡の娘、貴様グッピーに恨みでもあるのか?」
「正直恨みはないけど、友人の婚約者に手を出そうとしているから全力で妨害している」
「な、なるほど。あれは言っても聞かないから、貴様のやり方は効果的だ。まあ…うまい食事のためだ。何かあれば協力は惜しまん」
「秘書眼鏡…」
「待てい」
意外といいやつだったんだね、秘書眼鏡。眼鏡に腹黒はいても悪い奴は…いるな。眼鏡関係ない。
「何か?」
「私は秘書眼鏡ではない!オウルドだ」
「知ってます」
だから?と首をかしげる。それは知ってる。前に名前を呼んだじゃないか。
「ならば何故、私を秘書眼鏡と呼ぶ!私は秘書眼鏡ではない!」
あ、やべ。うっかり口から出ていたか。
「申し訳ありません。秘書っぽい眼鏡様でした」
「ぐっ」
「ぶふっ」
「ぐふっ」
「ぶはっ」
「ぐひゅっ」
ちなみに鈴木→穂積→陽菜ちん→チーティスさん→力の四天王エレファスです。皆さん小刻みに震えておる。
「なんでそうなった!?」
「いや、眼鏡の娘と言われたからには眼鏡で返すべきかと」
「微妙な律儀さを発揮するな!眼鏡呼ばわりの方が失礼だ」
下らないとこにこだわるなぁ、秘書眼鏡。ちなみに、なんとなく言っただけで私的に悪意はない。それにしてもいじりやすい男だなぁ。
「じゃあ、秘書っぽい眼鏡様も謝罪してください。眼鏡呼ばわりは失礼なんでしょう?」
「ぐっ!?」
「ガハハハハ!オウルドの負けだなぁ!こいつを言い負かすたぁ、大した嬢ちゃんだ!」
エレファスに頭をぐしゃぐしゃされる。悪気はないみたいだけど、力加減が間違ってる!地味に痛い!
「エレファス、死ぬか?」
鈴木が魔王っぽい!笑顔なのに魔王オーラが噴き出しておるってか、羽!羽が黒く!??
「す、鈴木!悪気はないみたいだから、怒らないで!それより、明日のリクエストは決まった?」
「え?ま、まだ」
「そっかそっか。リクエストはいつでも受付中だよ~」
つい、穂積んちのちみっ子にするようによしよししてしまった。耳……いかん!触ってはいかん!破廉恥ミチルと呼ばれてしまう!うわぁ、髪サラッサラ…羨ましいなぁ………ん?髪も白ってか…………?
「す、鈴木いいいいいいいいいいいい!??」
脱色していらっしゃるうううう!??
えっ!?ナニコレナニコレどないなってはるの!?鈴木は大丈夫なの!??
「鈴木!?」
「え?なに?ミチルちゃんは何に驚いてるの??」
自分の毛色が見えてない鈴木が私のテンパり様に首をかしげている。
「真生様」
秘書眼鏡が鏡を持ってきた。
「わお」
鈴木のリアクションは薄かった。でも、可愛くて…ちょっと、かなり…だいぶ萌えました。流石は鈴木。我が推しです。




