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猫妖精と犬妖精

 まだ時間があるので桔梗に猫獣人達がどうなったのかを報告してもらうことにした。


「鬼人だけじゃなく、鬼神族もいましたにゃ。でも、今のアチシとラン様の敵じゃにゃかったのですにゃ。ミチル様のおかげでラン様もアチシの話を聞いてくれたので、村の被害は軽微でしたにゃ。念のためにラン様がしばらく村で寝泊まりして、様子を見ることにしましたにゃ。何かあったらミチル様のケータイにお電話するそうにゃ」


 天堂先輩と桔梗の相性は悪くなかったらしく、上手くやったようだ。さらに桔梗が無駄に被害を拡大させないよう敵を誘導したらしい。うちの桔梗はできるにゃんこでした。


「なるほど。ありがとう、桔梗」


 桔梗をよしよしモフモフむぎゅむぎゅする。幸せすぎる。素敵なモフ心地を存分に頬ずりする。


「にゃふっ、くすぐったいのにゃん!まあ、子分の面倒を見るのはボスの責任で義務なのにゃ。だから当然にゃ」


 うちのにゃんこは男前だにゃん。


「桔梗の負担になってない?」


「問題にゃいですにゃ。アチシも村のチビの事が気ににゃっていましたのにゃ。そもそもミチル様のためにゃら、負担ににゃるはずがにゃいのにゃ!アチシはもっとミチル様のお役に立ちたいのですにゃ!」


「ありがとう、桔梗」


 なんと健気なにゃんこなのだ。私が幸せにするからね!甘やかして可愛がりまくるからね!!


 桔梗にじゃれていたら、下っ端らしき兵士達が来た。どう見ても友好的ではない感じ。


「くっせぇなぁ。なんでこんなとこににんげふぁ!??」


 言っている途中で桔梗の強烈な猫パンチが炸裂した。桔梗さん、なんか怒ってませんか?


「ご主人様はいい匂いなのにゃ!ニンゲンだけど、強くて優しくて温かいのにゃ!ご主人様をニンゲンだからってバカにする愚か者は、アチシにこっぴどく引っ掻かれるのにゃあああああ!!」


 桔梗は馬鹿に襲いかかった。


「……………愛されてんな」

「仲良しだな」


「あ、あはは……」


 桔梗はなんでそんなに私を慕うのか……不思議すぎる。桔梗は絡もうとした兵士をボコボコにして追い出した。




 さて、今日もやってまいりました。


「覚悟はいいですか?今から、食堂(ここ)は戦場になります」


「そんな、大袈裟な…」


「わかった!気を引き締めよう!」


 穂積は最初こそ呆れていたが、食事を求める腹ペコ兵士の大群を見てドン引きしていた。昨日の躾がよかったからか、厨房内まで入ろうとするバカはいない。陽菜ちん、桔梗、小文吾の働き(というか、無言の威圧)により皆列をつくってスムーズに並んでいる。兵士達はかなり怯えているが、昨日の惨状を知っているのでやりすぎとは思わない。


「今だかつて、こんなにも平和な夕食があっただろうか」

『ありませんでしたわん』


 ピガーさんと犬妖精君達は遠い目をしつつも手を動かす。流れるように夕飯がカウンターに置かれ、流れるように兵士達が運んでいく。


「なんか、今日はスムーズだな」


 並んでいた兵士さんが首をかしげている。あ、並んだ人から横取りしようとした馬鹿が陽菜ちんに成敗された。


「乱入されると仕事が途切れますからね。こちらとしましても、邪魔が入らないとスムーズでありがたいです」


「なるほど」


 彼らは素直なのか頷いて去っていった。少し階級が高いのか、どことなく上品な感じだった。


「…そんなに今までって酷かったのか?」


 つみれ汁をよそいながら、穂積が聞いてきた。背後でうめぇぇぇという叫びが聞こえる。肉じゃがは大好評だったらしい。穂積の肉じゃがは美味しいもんなぁ。


「とりあえず、昨日はバーゲンのおばちゃん並みだった。ここまで入ってくる馬鹿もいた」


「マジか」


「他に、興奮しすぎてカウンターを破壊したわん」

「興奮しすぎてお漏らしされたわん…」

「あれは酷かったわん…」

「ばっちいの、片付けたわん…」


 嗅覚が鋭い彼らには拷問に等しかったらしい。かわいそうに…。よしよししたら浮上したのか、犬妖精君達は尻尾をパタパタさせていた。可愛い。


「昨日は姐さんのおかげで奇跡が起きたわん!」

「そうですわん!」

「なんと、皆下膳したわん!」


 今までは食い散らかしたまま放置されていたらしい。しかし、私や四天王(金魚は不可能なので除く)がそれぞれ下膳したのを見て、皆やらなきゃシメられると思ったらしい。いいことだ。ちゃんとテーブルも綺麗に拭いたらしい。いいことだ。


「それにしても、キキョウ様が羨ましいわん」

「姐さんみたいなご主人様…憧れわん」

「ボクは兄さんみたいなご主人様がいいわん」


 犬妖精君達は尻尾をパタパタしながら楽しげに話しながら仕事している。


「…自由に生きたいとは思わねぇのか?」


「ボクらはご主人様にお仕えすることに喜びを感じますわん」

「それに、弱いからすぐ死ぬか奴隷にされてしまいますわん」

「従属は生きる術なのですわん。忠誠と奉仕の対価に保護してもらうのですわん」


 彼らのような戦う術を持たない種族は搾取されるしかない。ならば、強い者に庇護してもらう対価に、従属をというわけか。なかなか世知辛い。


「ボクらは、兄さん達が見たら不自由かもしれませんが…かなりいい待遇を受けているんですわん」

「魔王様は優しいのですわん」


 城の犬妖精君達は例外で、従属していないが城で働く代わりに鈴木から庇護されているらしい。そして、いつか素敵なご主人様を見つけて引き取られるのが夢なんだそうだ。


「なるほどな」


 価値観の相違ってやつだね。犬妖精だけでなく、弱い種は庇護されているらしい。なんとなく鈴木らしいなって思った。

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