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ミチルと人魚とにゃわゆいにゃんこ

 穂積の活躍により、翌日分の仕込みまで終了した。時間が余ったからデザートも作った。今日のデザートはクリーム白玉。それでも時間が余って暇な私は可愛い犬妖精君達にブラッシングをしている。ブラシは例のお店から蜂蜜プリンと引き換えにもらってきた。桔梗には桔梗用がある。わりと縄張り意識があるから犬妖精君と同じものは嫌がると店主さんから教わったので桔梗用は家に置いている。


「モフモフ~、フカフカ!」


 魔法のブラシは使えば使うほど毛がサラツヤになる。私によってサラツヤになった犬妖精君は、もはや別犬となっている。


「ふわあ…幸せだわん…」


 うっとりする犬妖精君達。行列ができるミチルとなっている。穂積もブラッシングに参加。穂積は犬が好きだが、家計的な問題から飼えないしね。陽菜ちんは……。


「貴様、晃太には近寄らせないからな!」


「はぁ!?王子様は私のものよ!」


 スペアの金魚鉢があったらしい人魚と口喧嘩をしている。人魚も陸では不利と判断しているのか陽菜ちんには敵わないと思ったのかは不明だが、魔法攻撃はせず口だけなので陽菜ちんも攻撃していない。

 しかし、陽菜ちんは口論が苦手なのに言い負かせられないなんて…人魚は頭があまりよくないようだ。人魚を眺めつつ穂積ルートをもう一度思い出してみる。


 穂積ルートは、穂積の裏…オカンという本性を見てから始まると言っても過言ではない。華やかなホストの裏は、家族を支えようとするオカン少年だ。ヒロインはそんな穂積を支えようとする。そこに立ちはだかるのがストーカー。バッドエンドではどっちも刺されて死ぬらしい。私はバッドエンドは見ない派なので詳細は不明。攻略やファンサイトでかなり凄惨だったらしく騒がれていた。もはやホラーではないかと思うほどに怖かったので想像できなくもない。


 やっぱりどう考えても穂積のストーカーはこいつだ。まだ初期段階だから害はないが、早めに対策をしておくべきだろう。それから、他の四天王も学校に来ていた気がする。教師や生徒として。製作側の手抜きかと思ったが……何か裏設定があったのか。またはバッドエンドで伏線回収があったのかもしれない。


「きん……人魚のグッピー」


「あんた、今金魚って言いかけなかった?」


 勘のいいやつだ。嫌なら金魚鉢持ってくんなよ。人魚か金魚かややこしいんだよ。


「金魚鉢って言うか迷っただけ。ちょっと聞いていい?」


「金魚鉢って何よ!?ま、まあいいわ」


 そこをつっこむのは薮蛇と思ったのか、言ってみろと促してきた。


四天王(あんたたち)の仕事って…」


「なっ!??」


 チーティスさんといい、こいつら本当に腹芸ができないな。やっぱり、そういうことか。今は多分…安定してるから学校に居ないんだろうなぁ。陽菜ちんは首をかしげているが、空気を読んで私に疑問を確認しない。

 つまり、こいつらが学校に来るようになったら要注意ってことだね。


「……あの方には」

「言わないし、あんたらが必要なくなるようにしたいのよね。私はあんたらの邪魔にはならないと思うよ。まあ、場合によっては敵対する可能性もあるけど」


 彼らと敵対するのは、本当に最悪な事態になった時なんだろうな。その時、私はどうするんだろう……いや、そんな事態にはならないし、させない!


「あんた……何者なのよ」


 グッピーが警戒しているらしい。今さらじゃね?


「え?ただのサポート眼鏡ですよ。眼鏡でも可。種族は人間」


「真面目に聞いてるのよ!」


「真面目に答えたんですが」


「真面目に答えてソレなわけ!?」


「はい」


 グッピーが金魚鉢でぐったりした。聞かれても困るのだよ。答えられない事もあるしな。私はこいつを信用してないから、答える義理もないし。


「…まあ、いいわ」


 全然いいわと思ってないな。チーティスさんはともかく、穂積の件を抜きにしてもこいつは信用してない。相手もそう思っているだろう。


「そうですか。出ていけ」


 欲しい情報は得た。邪魔だから追い出そう。金魚鉢ってかさばるんだよね。そろそろディナータイムだから、食堂内にいられると邪魔なんだよ。


「は?」


「控えめに申し上げましても、邪魔です。出ていってください」


 私の殺気を感じたゴブリンは、素晴らしい運転技術で逃げ出した。あれだけ激しくUターンしたにもかかわらず、水をこぼさずに逃げるとは、見事だな。


「…………悪は去った」


「流石はミチルだな!」


 いや、陽菜ちんが本気をだしてたら、楽勝だったと思うがねぇ。


「ご主人様ぁ、桔梗が帰還しましたのにゃ!」


 苦笑したら、桔梗が戻ってきました。一応チェックするが外傷はなし。今日もフワモフな桔梗だね。


「にゃふっ?ご主人様、どうしたにゃ??」


「ケガはないみたいだね。お疲れ様、桔梗。お仕事大変だった?おやつを食べて休憩しなさい」


 いそいそと甘さ控えめ桔梗(にゃんこ)用クッキーとぬるいミルクを出す。


「い、いにゃ…アチシはまだまだ働けますにゃ!元気だしケガもしてにゃいですにゃ!」


「桔梗用の甘さ控えめだよ!食べてほしいな」


「うにゃ…い、いただきますにゃ…」


 桔梗が私の笑顔に敗北した。しかし、クッキーが好みだったらしく大切そうにかじっている。


「おいしいにゃ……幸せの味にゃあ……」


 一仕事終えた桔梗にまた仕事を頼むのに罪悪感があるが、このミッションの適任者は桔梗だけだ。


「桔梗、お願いがあるんだけど…」


「にゃんでもしますにゃ!桔梗はご主人様のためにゃら、がんばりますにゃ!」


「うちの桔梗がいい子過ぎる!健気でモフにゃわゆい!!」


 ナデナデされてアワアワする桔梗はジャスティス!うちの桔梗たんが世界一であることを実感しつつ、ミッションについて説明した。


「お任せくださいにゃ!桔梗は立派にご主人様から任されたお仕事を完遂しますにゃ!!」


 うちの桔梗は本当に健気でモフにゃわゆいので、全力で愛でて愛でて愛でまくった。うちのにゃんこは世界一ぃぃ!!

 それを陽菜ちんがどっちも可愛いなと微笑ましげに見つめ、穂積が飼い主バカと呆れ、犬妖精君達が羨望の眼差しを送っていたことに私は気づかなかった。後でピガーさんが教えてくれました。

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