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穂積の真価なのです

 鈴木の案内で無事食堂に到着した。特に変なのも出てこず、ホッとしていたら犬妖精君達が寄ってきた。


「姐さん!皆、姐さんが来たわん!」

「姐さん!?」

「姐さんだわん!」

「こんにちわん!」

「今日も可愛いですわん!」

「お待ちしてましたわん!」


 ふわもこな犬妖精君達が尻尾をフリフリ駆け寄ってきた。か、可愛い!


「こら、お前ら。お嬢が困るだろうが。お嬢、今日もよろしく頼みます」


 ピガーさんも出てきてくれた。鈴木がピガーさんに二人を紹介する。


「今朝話した人間達だ。俺の友人だから、粗相がないようにな」


「かしこまりやした!あれ?一人多くないですかい??」


「ああ、彼女はミチルちゃんの護衛だ」


 皆が遠い目になった。昨日あれだけ暴れたから、護衛なんかいらなくね?と思われているっぽい。


「ええと…私は真正面からが苦手なんです。見た目からわかる通りひ弱だし、奇襲を受けたら対処できるか怪しいんです。彼女の腕は確かですよ。私もできれば調理に集中したいですし」


「なるほどわん」

「納得したわん」

「ま、お嬢がいいなら俺はかまわん」


 私のやや雑なフォローに納得していただけたらしい。皆頷いていた。


「じゃあ、俺は仕事があるから。ミチルちゃんの夕飯、楽しみにしてるね」


 鈴木は笑顔で去っていった。





 さて、今夜のメニューは何にしようかな?


「ピガーさん、余ってる食材とかありますか?」


「……芋が人気ねぇな」


 芋を使った料理か。余った芋はじゃが芋だった。たくさんあるなぁ。何を作ろうか。


「穂積、肉じゃが食べたい」


「肉じゃがな。よし、作るか。陽菜、芋剥け。北條は玉ねぎで……」

「お手伝いしますわん!」

「何を剥き剥きしますわん?」


「んじゃ、人参頼むわ。面取りできるか?」


「めんどり……こけこっこわん?」


 鶏の鳴き真似をした犬妖精君をナデナデしつつ穂積が苦笑した。


「いやいや、こうやって角を取るんだ。一手間で旨くなるんだよ」


「うわあ、上手わん!」

「わかりましたわん!」

「お仕事、頑張りますわん」


 尻尾をフリフリしつつお仕事を始める犬妖精君達可愛い。ピガーさんも私と玉ねぎを切っている。穂積はお肉に下味を軽くつけ、魚をさばき始めた。フードプロセッサでミンチにして、つみれ汁を作るらしい。


「あとはお浸しと…浅漬けでも作るか」


 穂積はテキパキとご飯を作ってしまった。浅漬けに関しては魔法で水分を抜けるから簡単に作れる。


「んん…美味しい!」

「お野菜おいしいですわん!」

「塩と野菜だけでこのうまさ…流石はお嬢が認めた男だな!」


「いや、塩じゃなく塩昆布な?魔法なしでも作れるから、教えてやるよ」


「ああ、悪いな!」


 すっかりピガーさんとも仲良くなった穂積。案外順応力があるらしい。ぎゃくに陽菜ちんは犬妖精君達から格下の烙印をおされてしまったらしく、扱いが雑になっている。

 それにしても穂積の浅漬けは絶品だ。そういや、鈴木の分は私が作ってって言ってたなぁ。鈴木の分だけ私が作ってみた。


「なにしてんだ?」


「あ、その…鈴木のは私が作ってって言われてて……」


「ああ、なるほどな」


 穂積は特にそこをつっこまなかった。呆れた様子ではあったが、下手につつくとからかわれそうなので黙っておいた。


「…………なんで四角くなるわん?」

「でもまずくない……不思議だわん」


 陽菜ちんが練習で肉じゃがを作ったようだが、不自然すぎる物体が出来上がっていた。肉じゃがは黒い立方体となっている。ものすごく不思議だ。


「陽菜、なんでお前が作るとサイコロもどきになるんだろうな」


「うう……」


 原因究明をすべく、眼鏡☆スキャンしてみた。


【肉じゃが的なナニか】

【姫宮陽菜が醤油の入れすぎで失敗したが調理スキルが高いため、スキルにより調整された結果。成功した肉じゃがの味と栄養素が含まれている。保存食としても使える】


「……………………」


 ナニコレ。調理スキルにより失敗した料理が無理矢理調整された結果?じゃあ失敗しなければこの立方体にならないと??


「陽菜ちん、ゆで卵作って」


「ああ」


 問題なし。ゆで卵の殻をむき、横半分にカット。陽菜ちんに刻んだキュウリとマヨネーズを渡す。


「黄身とあえて、綺麗に混ざったら白身に盛って」


「ああ」


 タマゴサラダが完成した。ひとつ味見…うん、おいしい。穂積が呆然としている。何故に。


「陽菜…お前、立方体以外も作れたんだな」


 今まで立方体しか作れなかったらしい。陽菜ちんたら、どんだけ失敗しまくっていたのだろうか。陽菜ちん本人と穂積にスキャン結果を説明した。


「な、なるほど」


 思い当たるふしがあるらしい。陽菜ちんは基本簡単な作業しかやっていなかったが、全智全能のおかげで調理スキルのみガンガン上がっていたようだ。成功すれば普通の料理になると聞いて、陽菜ちんはやる気になった。


「晃太、これからは余計なことを一切せず、レシピ通りに作るからな。ちゃんと作れるようになったら食べてくれ」


「はいはい。つか、俺がちゃんと教えてやるよ。要は今まで目をはなした隙に余計なもんぶっこんだりしてたって事だろ?一人でお前に火を使わせて火事になったらシャレにならねぇし、お前んちに調味料なんぞ揃ってねぇだろ」


「うむ!では教えてくれ!」


「りょーかい」


 陽菜ちんの頭をナデナデする穂積の瞳は優しい。陽菜ちんもニコニコしていて可愛い。


「……お嬢、あいつらデキてんのか?」


 ピガーさんが聞いてきたのではっきりと明確に説明してあげた。


「幼い頃に結婚の約束をしたものの、幼馴染からなかなか抜け出せない友達以上恋人未満な感じですかね。陽菜ちんはわかりやすく告白してますが、穂積が素直になれなくて恋人になれな「ナニ話してやがんだ、ゴルァ!!」


 ちょっと考えてから発言した。


「穂積がヘタレだって話してた」


「まあ、男には色々あるんだよ、お嬢」


 よくわからないが、穂積はいつの間にかピガーさんと私より仲良くなっていたことが判明した。ちなみに会話の詳細を聞いた穂積は……。


「的確な説明すんじゃねぇよ!鬼畜眼鏡ぇぇ!!」


 私を罵って逃げた。穂積はからかいがいのある男である。

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