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またしても遭遇しました。

 鈴木を叫びながら走り回ることしばし。力尽きて寝転がる。体力がないから仕方ない。芝生のフカフカが心地よい。裏庭から中庭に来てしまったようだ。ここも校舎から死角になるんで絶好のサボりスポットなんだよね。日差しもいい感じに木漏れ日で…やばい。昼寝したくなりそう。


「あれ?先輩…今日は一人なんですね」


 見た目は無邪気に笑っているが、瞳の奥は冷たい。獲物をどうしてやろうかという感じだな。名前は忘れたが、唯一後輩の極力関わりたくない攻略対象だ。何故寄ってきた。私はお前に用などない。


「キモいから気安く触んないでくれる?」


 頬に触れた手をはたく。鈴木ならともかく、こいつみたいな女の敵に触られたくない。馬鹿女から変に恨みを買うのもヤダし、遊んでやる義理なぞ微塵もない。できる限り関わりたくない。


「…冷たいなぁ。ね、ボク今遊びたい気分なんですよぉ…ねぇ?あそぼぉ」


 瞳が妖しく輝いた。何やらスキルを使ったようだが、眼鏡により異常無効な私には効果がない。


「絶対ノー!!」


 なので、断固拒否した。ついでにこっそりスキャンしてみる。


【藤堂玲音・レオン=トード】

種族:人間・魔族(淫魔)のハーフ

職業:男子高生 レベル8

  :放蕩息子 レベル36

称号:女を弄びし者

  :女嫌い

  :愛を知らぬ者

スキル:調香(フレグランス)

   :魅了(チャーム)

   :催淫


 やべぇ。こいつ予想以上に最低だった。しかし、女を弄びし者なのに女嫌い?矛盾しているようなそうでもないような??催淫って…どこのエロゲーだよ!??こいつ、やべぇ!!


「ねぇ、先輩ぃ?」


 甘えた声が気持ち悪い。その瞳に情熱はない。戯れたいだけ。暇潰しだ。そんな馬鹿野郎に付き合ってやる義理などない。起き上がってにらみつけた。


「私にはあんたのスキルは効かない。無効化するスキルがあるからね」


「スキル?」


 首をかしげた藤堂。ようやくこいつのルートを思い出した。こいつは自分のスキルを調香しか知らないのだ。後天的にこいつの淫魔スキルは発現したらしく、ヒロインルートで彼に群がる女性たちは魅了されただけであるとわかる。真実の愛を知った藤堂がギリギリでコントロールできるようになり、ハッピーエンドだったはず。


「あ~、あんたってさ、無意識に魅了のスキルを使ってるのよ。論より証拠!『眼鏡☆封印(シール)!!』」


 説明しよう!眼鏡☆封印(シール)とは、眼鏡型のシールをステータス画面にペタッと貼りつけることでスキルを封印しちゃう能動発動(アクティブ)スキルなのだ!!効果は長くて一ヶ月。短くて一日。私の意思で中途解除可能だ。

 私は奴の魅了と催淫にペタッとしちゃいました。


「な、何をした!?」


「そのうちわかるよ。せいぜい刺されないようね」


「は!?」


「あんたは今まで魅了のスキルを使ってたの。今のを見る限り、完全に無意識じゃなく少し自覚があったんじゃない?あんたが『この女を落としたい』と思って見つめると女があんたを好きになる。違う?」


「…………そうだ」


 そんな会話をしていたら、女子Aがあらわれた。女子B、女子Cもあらわれた。


「玲音!あんたいったい何股してるのよ!?」


 女子Aは、おたけびをあげた。


「なんか急に頭がすっきりしたわ!一発殴らせろ!」


 女子Bは、いきりたった。


「あ、皆!こっちこっち~」


 女子Cは、仲間を呼んだ!


 いやいや、冷静に観察してる場合じゃないわ。これ、早く立ち去らないとヤバいやつや。


「ど、どういうこと!?」


 最低のヤリ(トライアングル音)男が慌てた様子で聞いてきた。私はテヘペロしながらも教えてやることにした。


「ん?スキル封印したことで魅了が解けた結果、女子がぶちキレた」


「おま!なんてことしてくれやがるんだよ!!」


「いやあ、それほどでもぉ」


「誉めてないわあああああ!!」


 お前は自業自得だろうが。私は余裕っぽく見えるだろうけど、実際はそうでもない。これのとばっちりにあったらシャレにならない。黙ってやられてあげるつもりはないが、罪もない女子を倒すわけにもいかない。

 ワタシテキジャナイヨ。アナタタチノミリョウ、トイテアゲタヨ~と言いたいが、通じない可能性が高い。皆魅了で抑えられていた不満が大爆発している。ちゅど~んという感じである。すべてはヤリ(トライアングル音)男が悪いのである。


 私は涙目で、うっかり呼んでしまった。小文吾とか桔梗とか、色々選択肢があったはずなのに。


「……すずき、たすけて」


 囁くようなその声に、耳元から楽しげな声が聞こえた。


「…呼んだ?」






「みぎゃああああああああああああああああああ鈴木ぃぃぃぃぃぃ!??」








 鈴木は何故か私の影から出てきた。え!?なんで!?どうして!??


「悪いね、ミチルちゃんは君達と関係ないから、連れていくよ」


 颯爽と現れた王子様ならぬ俺様何様鈴木真生様は、私に乙女の夢であるお姫様抱っこをして跳躍した。


「待ちなさいよ!新しい浮気相手でしょ!?この泥棒猫!!」


 女子Aが叫んだ。


「誤解がないように言っときますが、私はそこのヤリ(トライアングル音)男なんか大嫌いです!!私に好かれたければ、死んで鈴木に生まれ変わってこいやああああ!!やっぱ鈴木への冒涜だから、生まれ変わっても無理!生理的に受け付けない!!」

「というわけだから」


 鈴木は綺麗な羽根を広げて飛んだ。空飛ぶ鈴木に抱えられながら、もみくちゃにされるヤリ(トライアングル音)男を見た。さすがに死んだらシャレにならないから、奴が生命の危機を感じたら封印が解けるようにしてあげた。

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