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鈴木とランチとアルバイト

 今日もいつものメンバーでランチ…ではなく、蓮ちゃんとにゃんこ執事のエクスさんがいます。イクシスさんは他の女子と仲良くなったらしい。

 エクスさんはすっかり瀬羽巣さんと意気投合。私たちがいつもの裏庭に来たら、二人でまったりお茶をしてました。

 瀬羽巣さんがセッティングしてくれたテーブルについてそれぞれお弁当を取り出す。お弁当をつつきながら穂積に話しかけた。


「穂積、バイトなんだけどさぁ」


「おー」


「鈴木んちで調理のバイト予定って言ったじゃん?」


「んー。さっきも気になったが、鈴木ってそんなにいいとこのおぼっちゃんなのか?兼田ぐらいか??」


 穂積が鈴木を見た。鈴木は弁当箱を見つめていたが、首をふる。


「いや、たまたま魔力が高かっただけ。両親は魔族の中では普通かな。そんなに身分は高くないし、ど…金持ちでもない。本家はそれなりだけど、俺の実家は分家だったし」


 どってナニを言いかけたんだろうか。すげぇ気になるんですが。後で聞いてみよう。


「へー、魔族にも色々あんだな」


 穂積はそれ以上聞こうとはせずに話題を変えた。穂積は意外に気遣いができる。鈴木があまり聞いてほしくなさそうだからもあるのだろう。


「で、給料はいくらになるわけ?」


「昨日の私の給料です」


 昨日のまま放置していたお袋さんをそっと開いた。穂積が中をのぞき、鈴木を見て中をのぞき、鈴木を見た。


「高すぎねぇか?」


「こっちじゃ魔獣との遭遇なんか日常茶飯事だからねぇ。そのくらいの魔石は拾わないやつもいるぐらいだし、物々交換でも嫌がられるんだよ。下手したら拒否される。価値はそれなりだけど、使い勝手が悪いんだ」


「………なるほど」


 穂積は納得して鈴木んちこと魔王城でバイトすることになった。放課後が楽しみだ。きっとビビるに違いない。


 鈴木は弁当箱を眺めていたが、ついに弁当箱をあけた。そこには、綺麗な魚(生)が入っていた。鈴木はそっと閉めて呟いた。


「生臭いと思ったら……」


 鈴木が涙目だ。確かに、生魚の踊り食いは辛かろう。いや、無理だな。サイズ的に。しらすみたいな小魚ならまだしも、どでかいお魚さんだ。弁当箱は大きなものも入る仕様になっているが、生ってか生きててピチピチしている。活きがよすぎるわ!!せめてシメとけや!!


「あれは、伝説の腹は黒いが身は赤マグロ!う、羨ましい!!」


 鈴木は羨ましがるエクスさんに、そっと弁当箱を手渡した。鈴木が可哀想すぎる。一応スキャンしてみた。


【魔王の腹は黒いが身は紅玉マグロ】

【マグロの中で最高級な魚。煮てよし、焼いてよし、刺身もイケる。オススメはやはり刺身。大トロはとろけるうまさ。ただし丸かじりはおすすめしない。四天王、魔術のグッピーが捕ってきた。ちなみにグッピーは丸かじりを好む】


 あの人魚…人魚なのに熱帯魚(グッピー)…昨日スキャンしてたけど、四天王ってとこに注目しちゃったから名前には気がつかなかったわ。しかも、これを丸かじりとか、ワイルドを通り過ぎてるな。人魚は肉食なんだろうか。


「い、いいんですかにゃ!??」


 このままではエクスさんに鈴木のお昼が食われてしまう。私が調理しようかと声をかけようとしたが、先に穂積が鈴木に話しかけた。


「今日は俺が調理してやるよ。んで、料理を気に入ったら改めて雇ってくれ。俺、魚さばけるから北條より適任だろ。瀬羽巣さん」


「ぜひ私にもお刺身を……」


 瀬羽巣さん、お刺身が好きらしい。


「俺はかまわないよ。さすがに量が多いし、みんなで食べようよ」


 鈴木の優しさにより、私たちも食べられることになった。やったぜ、高級魚!!






 そして、穂積はお刺身、マグロステーキ、から揚げを作ってくれた。


「おいしいわ…」

「う、うまい…」

「幸せ…」

「はぐはぐはぐ!」

「エクス!美味ですがそのようにがっつくなんてお行儀が悪いですわ!」


「流石は晃太だな!今日もうまい!」


「素材がいいからだろ。いいからさっさと食え」


 今日は蓮ちゃんが煙を風魔法で散らしてくれたので先生が乱入しなかった。そのため、皆でマグロを堪能し、おかずを鈴木に分けてあげた。


「エクス!?はらわたを貪るなんてお行儀が悪すぎましてよ!?エクス!?エクスぅぅぅ!??」


 あまりの美味しさに、エクスさんの野生が目覚めたのか、マグロの内臓を持ってエクスさんが逃亡した。通報されなきゃいいけど。慌てて追いかける蓮ちゃん。私も…と思ったが、小文吾がなんとかしますと行ってくれた。

 小文吾はエクスさんを人目のつかない所に連れていき、お腹一杯食べて満足した所で連れ帰ってくれた。スプラッタな見た目は陽菜ちんが綺麗にしてくれて、蓮ちゃんが感謝していたよ。



 皆お腹一杯になったとこで、穂積が鈴木に話しかけた。


「で?どうよ、鈴木。改善希望がありゃ、受け付けるぜ」


「いや、問題ない。晃太君の料理の腕は素晴らしいね。是非雇わせてほしい。それから、俺のことも鈴木じゃなくていいよ」


「ん?おお。じゃ、真生な」


「うん。これからよろしく、晃太君」


 穂積が羨ましい。貴様、なにさらっと鈴木を真生!呼びすて!親密アピールか、穂積!!


「み、ミチルちゃんも名前でいいよ」


 鈴木がチラッチラッと私の様子を伺っている。可愛いな。そして、穂積がニヤニヤしている。貴様、ブッ飛ばすぞ?誰のおかげでいいバイトが舞い込んできたと思っとるんじゃ、ゴルァ!


「ま、ままままま………」


 たった二文字。されど二文字。特別な二文字。


「ま………鈴木は鈴木だから鈴木なんじゃああああああああ!!鈴木ぃぃぃぃぃぃ!!!」


 駄目だ!なんか恥ずかしくて言えない!!私は全力で逃亡した。


「み、ミチルちゃああああああん!?」


「甘いな、鈴木。俺ですら苗字呼びなんだ。名前呼びはまだ先だ!」


 アホ部が意味不明な事を言っていたが、私はまったく聞こえていなかった。

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