表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/75

情報量が多すぎて処理できません

 皆さん食後はきちんとお皿を返しに来ました。感心、感心。鈴木がめっちゃ睨みをきかせてるからもあるだろうな。どうでもいい話だが、人魚は廊下で食べていたらしい。あの金魚鉢、食堂に入らないから。なので特例として人魚は並ばなくていいことにした。邪魔だし。


「皆さん、ちゃんとお皿を片づけてるわん…」

「奇跡だわん…」

「いや、姐さんがすごいんだわん」


 キラキラした眼差しを向けてくる犬妖精君達。


「真生様、お嬢をスカウトしてくだすって、ありがとうございやした!!今後もお嬢がこの厨房で働いてくださるように努力し努力しやす!!」


 鈴木に頭を下げるピガーさん。しかし、鈴木は戸惑った様子だった。


「あの………どちらさま??この厨房にハイオークコックなんていたっけ??」


 悲しむかと思いきや、ピガーさんは嬉しそうに笑った。


「お嬢のはんばぁぐで進化したんでさぁ。真生様も進化してるじゃないですか」


「…………………は?」


 無言で自分の羽根と耳と尻尾を確認し、涙目で私を見る鈴木。進化したくなかったとか?首をかしげる私に、恐る恐る近寄る鈴木。


「あの、ミチルちゃん」


「うん」


「気持ち悪くない?」


「何が?」


「耳とか、尻尾とか、羽根とか……」


「綺麗だよね」


 白く淡く輝く毛皮と羽毛は美しい。触っていいなら触りたいが、汚しそうな気もするから触れない。綺麗だな、とお世辞抜きで思う。


「本当?」


「うん」


「人間って、こういう魔族の特徴を嫌うんじゃないの?」


「私個人の意見としては、むしろ好ましいかなぁ。犬猫が好きな人は忌避感もあまりないんじゃない?あれだよ。普通は嫌がる不細工を好む人や太った人が好みって人もいるし。うまい例えがなくて悪いけど。あ、巨乳好きか貧乳好きかとか…」


 鈴木は瞳を輝かせて私の手をとった。ひざまづいて、まるで王子様がお姫様にするみたいに手の甲にキスされた。


「!??」


「じゃあ、俺はミチルちゃんの恋愛対象になれる?ミチルちゃんは俺を嫌いにならない?」


 好みのど真ん中をストライクですよ!大好きじゃあああああ!!


「いや、まあ、うん。す、鈴木の耳とかで嫌いになったりしない」

「何をしてますの、この泥棒猫!!」

「姫様!!」

「ご主人様!!」


「うぇ、うぇい??」


 一瞬の間に悪役令嬢っぽい美少女が私に襲いかかり、小文吾に攻撃を防がれ、桔梗の猫パンチで吹き飛んだ。私は慌てるばかりである。皆が速すぎてついていけない。


「くっ……やりますわね!しかし、わたくしは負けなくてよ!!」


 あれ、この美少女見覚えが……と思ったら、聞き覚えのあるBGMと見覚えがある背中。その背中はとても逞しく、どこかの彫像かってぐらいに美しい。背も高く、顔も整っており、美しいと言えるほどだ。ただし、女子の制服を着て、ラジカセ魔具を背負っているから台無しだ。相変わらず服がピチピチである。


「ははははははははははは!!」


 そう、我が校きっての問題児である天堂乱が、天井をぶちやぶって登場したのである!!急展開過ぎてついていけないよ!


「お、お兄様!?」


 おにさま?おにいさま…………お兄様!?うええええ!?天堂先輩、妹いたの!?なのになんで女装……あ、妹さんがお母さんに似てないからか。美人だが、天堂先輩とはタイプが違う。なんというか、妹さんの方が悪役顔なんだよね。


「妹よ!いきなり我が後輩に襲いかかるとは感心しないな!」


「は?この貧乏丸出しの地味が染み込んだ娘が、お兄様のご学友!??」


「天井突き破ってくんなっつってるだろうが!!こんの馬鹿乱が!!お前は何回同じことを俺に言わせれば気が済むんだ?お前の頭は飾りか?いっそ頭に物理的に刻み込んでやろうか?お前もミチルちゃんが貧乏丸出しの地味が染み込んだ娘だぁ?よく見ろ!ミチルちゃんは可愛いだろうが!お前みたいな見た目だけの残念な生き物とは違うんだよ!!可愛くて柔らかくて、いい匂いがするんだよ!性格も優しくていい子なんだよ!!俺に殺されたくなかったら、ミチルちゃんに誠心誠意謝罪しろや!このカスが!!」


 す、鈴木ご乱心!天堂先輩には痛烈なボディーブロー。悪役顔なお嬢さんには踵落としをきめてしまった。なんか鈴木の耳や羽根が黒く染まりだしちゃったよ!?気配もよくない感じ!しかも鈴木からボディに痛烈な一撃をくらった天堂先輩は、うずくまっていて多分聞いていない。悪役顔なお嬢さんも、気絶してて聞いてない。


「す、鈴木ぃぃぃぃ!私は気にしてないから大丈夫だよ!よ、よしよーし。鈴木、落ち着けー。ビークール、ビークール」


 あ、耳モッフモフ。こ、これは…!絹糸みたいにサラサラ!超触り心地いい!なでなで~。はわわわ、これは癖になる!ずっと触っていたいかも!


「………………………」


 幸いにも鈴木のお怒りは鎮まったらしい。


「はっはっは。流石は真生。いいパンチだったぞ!ん?真生に北條君。こんな所で不純異性交遊はいかんぞ」


「はい?」


 ふじゅんいせいこーゆー?なんとなく胸元に視線を落とすと、ささやかな我が乳の谷間に鈴木がいた。鈴木は真っ赤になってされるがままだ。耳や頭を撫でまわしやすいようにしていたら、鈴木を抱きしめていたらしい。


「俺、ミチルちゃんになら「鈴木いいいいいいいい!??いやいや!自分大事に!その、あの、ごめんなさい!鈴木いいいいいいいい!!」


 そして、私は逃亡した。天堂先輩がなんで魔王城にとか、悪役顔なお嬢さんが誰なのかとか、全部どうでもよかった。


 ママン!ミチルは破廉恥な娘になってしまいました!鈴木も一言言ってくれよもおお!鈴木いいいいいいいい!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ