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ついに、来てしまいました

 ハンバーグを食べ終わったピガーさんと犬妖精君達にデザートのプリンを出したら超喜ばれた。そして、食べ終わってお茶まで飲んでからようやく種族進化に気がついた。遅すぎる。


「なんか服がキツいな。いや、この魔力は……」


 そっと鏡をお渡しした。すっかりムキムキナイスバディになってしまったピガーさん。オークだってわかんなくてごめんなさい。


「進化!?進化したのか!?マジか!!うおおおお!!」


 ピガーさんが吠えた。種族進化はそうそう起きるものではなく、下手すれば一生進化できないままな魔族や妖精族もいるんだそうだ。言いたくないのでハンバーグ効果によるものですよ~とは言わなかったけど、原因がそれしか考えられないから即バレた。


「ありがとうございます、お嬢!!このご恩はけっして忘れません!!あっしは一生種族進化できねぇままだと思っていたのに、まさか二段階も進化できるなんて…!!」


「即忘れてください。やろうと思ってやった訳じゃないですから」


「ありがとうございますわん!」

「このご恩は忘れませんわん!」

「一生ついていきますわん!!」


「いや、気にしなくていいから」


 どうしようかと思案していたら、鐘が鳴った。いつの間にか着替えたピガーさんが腕まくりして叫ぶ。


「野郎共、今日も戦争の時間が来たぜ!!気合いは充分かあ!?」


『わん!』


「全力を絞り出せ!行くぜぇぇ!!」


『アオーン!!』


 そこからは、本気で戦場だった。もはや乱戦だった。お腹を空かせた魔族達は、怖かった。こっちが喰われるのではないかと錯覚するぐらいの気迫だった。食堂はカウンタータイプなので、できた食事を持っていってもらうのだが、バーゲンセール状態になっている。


「はいよぉ!いっちょあがりぃ!!」

「運ぶわん!うわぁぁ!奪わないでくださいわん!」

「こっちもできたわん!!」

「厨房には入ったらダメですわん!」

「ちょ!やめてくださいわん!ちゃんと並んでくださいわん!」


 最初こそびっくりして戸惑っていたが、私の同僚をいじめるやつは許さん!!私はすぐ行動した。





「メガ☆ビーム!範囲広め!!」






 広範囲の眼鏡☆ビームにより、直撃した運の悪い直毛サラサラ毛の狼獣人さんが、クルンクルンの毛になって気絶した。他にも数人が古きよき芸人さん的なアフロヘアーコゲコゲになっている。

 いきなり攻撃されて、魔族達が固まったのでここぞとばかりに叫んでやった。


「ちゃんと、並べ!並ばないやつは私のビームで焼いて夕飯のオマケにしてやる!!文句のあるやつはかかってこいやあああああ!!」


「ご主人様のゆーこと聞かない馬鹿はアチシにひっかかれるのにゃー!!」

「姫様の邪魔をする馬鹿はつついてくれようぞ!!」


 皆さん、素直に並んでくれました。うんうん、やればできるじゃないか。さっきシメた兵士達から謝罪された。まあ、うん。彼らは下っ端なので説明したが誰も聞いていなかったらしい。仕方ない。


「姐さん、最高だわん…」

「姐さん、素敵だわん…」

「流石は俺らのお嬢だな…」


 なんか聞こえた気がするけど、聞こえナーイ。気にしたら負けなのだよ。私が介入をためらった結果、犬妖精君達が大ケガした方が後悔するだろうし。

 その後、中間管理職や上位職もシメた。食堂の平和は私が守る!!桔梗と小文吾が倒してくれました。うちの子達、超強い。



 ついに鈴木が来た。うわあ、王子様みたいなカッコしてるよ!マントカッコいいよ!めっちゃ写メしたい!!


「ミチルちゃん、食べに来たよ!」

「…鈴木、並んで」


 他の魔族達がどよめいた。しかし、こーゆーのは上がしっかりしないとダメなのである。


「鈴木でも特別扱いしません。ちゃんと並んでください」


 鈴木はニコニコしながら頷いた。魔族達が驚愕している。そして、チーティスさんも来た。


「ミチル様ああ!めっっちゃお腹減らしてきました!ご飯くださ……痛いぃ!!」


 なんとタイミングが悪いチーティスさんなのだろうか。並んでいる魔族達を抜かしたため、鈴木から鉄拳制裁をくらってしまった。流れるように叱られている。さっき自分も同じことしようとしたくせに~、と思ったが黙っておいた。彼女はレオタードに毛皮のマント、ゴツゴツした鎧とナックルを装備していた。ゲームと同じである。


「はい、お待たせ~」


「うわあ…」

「…………(ヨダレだらだら)」


 ハンバーグを幸せそうに見つめる二人。よかったね。


「チーティスさんがリクエストしたからお肉ですよ。食べ終わったらデザートもあるから食べに来てね」


「チーティス…」


 鈴木がめっっちゃチーティスさんを睨んでいる。お耳がへにょっとして可哀想だ。明らかに余計な発言だった。


「メニューが思いつかなかったから、助かっちゃった。鈴木も気に入ったやつがあったら言ってね」


「うん!」


 よしよし、鈴木の機嫌がなおった。チーティスさんが何かパクパク……『助かりました。ありがとうございます』ってとこかな?チーティスさんに笑って手を振ったら、また鈴木が睨んでいた。鈴木にも手を振ったら機嫌がなおった。よ、よかった……。


 それより問題はここからだ。ハンバーグで何も起きないよう、2メガに祈りを捧げる。2メガとは、眼鏡の女神の略称である。容量ちっさ!といじると拗ねて使い物にならなくなるので、いじるの禁止なのである。


「………おぉいしぃいいいいいい!!」

「うんまあああああああああい!!」


「す、鈴木いいいいいいい!?マジか!!うおおおお!!やっぱりかあああああああ!!」


、そんな気はしていたよ。でも、皆ハンバーグごときで進化すんなよもおおおお!!

 食堂はまばゆい光に包まれた。鈴木、鈴木が……白くなったああああああ!!正確には鈴木の羽が白というか白金(プラチナ)色になった。フカフカなお耳も白金に輝いている。ちょっとでいいからモフりたい。ダメかなあ。

 チーティスさんは顔が豹になって、多分一回りでかくなっていた。後でモフモフさせてくれないだろうか。チーティスさんは快く応じてくれそうな気がする。

 そんな二人はハンバーグに夢中で、光も進化もどうでもいいらしかった。というか、気がついてない。ハンバーグ、恐ろしい!


「し、幸せ…」

「ミチル様天才…肉汁じゅわぁ…このびよ~んもうまぁぁ……」


 周囲がそんなにうまいのか?と興味津々だ。しかし、残念ながらもうない。あ、ポテサラならちょっとあるか。


「味見します?」


 ボウルに残ったやつを指すと、皆が群がった。


「き、希望者多数のため、じゃんけん大会にします!!」


 さっきの二の舞いになるとこだった。さて、皆がじゃんけんしている間に簡単に作れてお腹一杯になるもの…と考える。皮を剥いたが余ったじゃが芋をもらい、薄切りにして水にさらし、クッキングペーパーで拭いたら、揚げて塩をふる。お手軽・おいしい!ポテトチップスの出来上がり!


「勝ったぁぁ!!」


 お、じゃんけん大会も勝者が決定したらしい。


「優勝者は誰ですか?」


「ミチルちゃん、勝ったよ!!」


「鈴木いいいいいいい!??」


 いや、鈴木はポテサラ食べたじゃん!他の人に譲ろうよ!というわけで、鈴木は揚げたてポテトチップスで買収した。鈴木にはデザートも残っていたのでプリンも渡す。チーティスさんの分も渡したら鈴木が食べちゃったらしく、チーティスさんが泣きながら訴えたので食べきれなくて持ち帰る予定だった私の分をあげた。鈴木に謝罪されたが、まずチーティスさんに謝ろうよ。

 そんなこともあったが、話を戻そう。


「二位の人は誰ですか?」


「私です」


 まさかの秘書眼鏡だった。

 お前も参加したのかよ!とつっこまなかった私を、誰か誉めてくれ。流石に秘書眼鏡がボウルから直接貪り食う姿は見たくないのでスプーンで集めて皿に盛ってあげた。


「く……凄まじく美味だと!?」


 別に美味しいならいいじゃんか。負けてションボリしている人達にポテトチップスをふるまった。皆さん、とてもいい笑顔でした。

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