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ハンバーグ事件発生です

 あまりにも失礼なことを言ってきた四天王のうち三人をこらしめました。そうしたら、厨房スタッフの皆から尊敬の眼差しで見られています。あのね?相手が油断しきっていたからだからね?私、そんなに強くはないからね??まともにやると強くないのはわかっているから、知恵でカバーしてるだけだからね??


 邪魔が入ったけど、今日は初回なので鈴木とチーティスさん、厨房スタッフの分しか作らないからどうにかなるだろう。ブイヨンを入れたコンソメ野菜スープに、ニンジンのグラッセ、ポテトサラダ、ほうれん草ソテーを仕上げていく。


「いい匂いだわん…」

「うまそうだわん…」


「………………」


「あっ!食べてるわん!」

「つまみ食いはダメだわん!」

「ボクも食べたいわん!ずるいわん!!」


「味見だ、味見!!」


 どうやらピガーさんがつまみ食いしたらしい。少しぐらいはいいけど、皆がつまみ食いしたらなくなる。


「つまみ食いしたら、メインのお肉が減ります」


 ボソッと呟いたんだけど、厨房スタッフは耳がいいらしく全員が固まっていた。ちょっと食べちゃったらしい。悲しげに耳と尻尾がしんなりした犬妖精君達を見て、修正した。


「今回は見逃すけど、次やったら減らすからね。あと、ポテトサラダ食べ過ぎだから。作り直して」


「はいですわん!」

「わかりましたわん!」

「かしこまりましたわん!」


「あー、お嬢」


 ピガーさんが申し訳なさそうにこちらへ来た。


「面目ない。本来なら俺が犬妖精(コボルト)達のつまみ食いを注意する立場なんだが、お嬢のメシがいい匂いすぎて、つい……。しかし、人間のメシってうめぇんだな!あのぽて?すっっげえうまかった!真生様に感謝しねぇとな!こんないい人材をスカウトしてくれたんだから!」


 多分謝りに来たんだろうけど、ピガーさんは嬉しそうに話してくれた。


「お腹空いてたんですか?先に食べちゃいます?」


「そうだな!今日は先に食べちまおう!」


 犬妖精君達が喜びの声をあげた。厨房スタッフは早い時間に食べるか遅い時間に食べるかで、その日の作業状況によってピガーさんが決定しているんだって。皆人間のご飯に興味津々で食べたくてしかたないんだろうな。


 超☆眼鏡の特製ハンバーグステーキ…それは高級肉と同じ比率で赤身と脂身を混ぜ、超☆眼鏡による完璧な焼き加減で作られる、チーズ入りハンバーグである。肉汁じゅわー、チーズがトロトローな幸せハンバーグなのである。


「お嬢はたくさん食べるんだなぁ」


「たくさん食べると強くなるわん?」

「おいしそうだわん」

「ふああ……(くんくんくん)」

「(くんくんくんくんくんくん)」


 犬妖精君達がめっちゃ匂いを嗅いでいる。いや、この量を一人でとか、無理でしょ。こんなに食べられるわけがない。


「これは、桔梗の分」


「にゃ!?アチシの分もあるんですかにゃ!?」


 桔梗の分を差し出す。桔梗よ、ヨダレは拭こうね?とても嬉しそうにしている。


「あるのにゃー。小文吾は私のをわけるからね」


「いつもありがとうございます」


 小文吾も桔梗も食べても食べなくてもいいんだけど、せっかくなら一緒に食べたい。小文吾は少ししか食べないけど、付き合ってくれる。


「で、こっちがピガーさんの分」


「…………は?」


「こっちが犬妖精君達の分」


「わん?」

「くうん?」

「(くんくんくんくんくんくん)」

「(くんくんくんくんくんくんくんくんくん)」


 皆してヨダレを垂らして眺めている。何故だ。食べたそうなのに誰も食べない。何故泣きながらハンバーグを眺めているんだろうか。


「あの…温かいうちがおいしいですよ?熱いのが苦手でした?」


 何故そんな、キラキラした瞳でこちらを見るの?何か変なことを言っただろうか。桔梗は猫舌ではないらしく、ハンバーグに夢中だ。


「……お嬢」


 はっ!まさか、ピガーさんに合挽き肉は共食い??つ、作り直し??ピガーさんは真剣な様子だ。お、怒った??


「マジで、マジで食っていいんですかい?マジでいいんですかい?マジのマジのマジでいいんですかい?あっし、食いますよ?めっちゃ食っちまいすよ??」


「もちろんです。どうぞ、めしあがれ」


 大丈夫なのかな?嫌がっている感じはない。聞くのも失礼だから、聞けない。ピガーさんが食べ始めた。


「うまあああああああああああい!!」


「ピガーさん!??」


 ピガーさんは黄金色に輝いて、巨大化した。私より低かった身長が、見上げるほどになった。


「うまあああああああああああい!!」


「ピガーさん!??」


「うまあああああああああああい!!」


 うああああ、大丈夫なの!?これ、大丈夫なの!??ピガーさん本人はハンバーグに夢中で気がついてないし!マイペースにハンバーグを食べていた桔梗が、あれは種族進化なるものだと教えてくれた。私のハンバーグがピガーさんを進化させたらしい。桔梗いわく、リトルオークコックからハイオークコックへと二段階進化したらしい。ハンバーグで!??何故に!??


「あの、姐さん…もしかして、ボクらも食べていいわん?本当の本当に食べていいわん?」


「もちろんだよ」


 あのピガーさんの変身を見てもドン引きせずハンバーグが食べたいだなんて…犬妖精君達は謎だ。


「おぉいしいいいいいいいわん!!」

「うますぎるわん!!」

「しあわせだわん…!!」


 泣きながら食べる犬妖精君達も黄金色に輝いている。彼らはピガーさんと違い、一回り大きくなったぐらいだ。毛艶もよくなり、服がきつそうな程度の変化。しかし、ハンバーグに夢中で誰も気がつかない。ハンバーグ、恐るべし!!


 気になったので、ハンバーグをスキャンしてみた。


【ミチルのハンバーグ】

【北條ミチルにより奇跡の配合率で作成され、奇跡の焼き加減の至高ともいえるハンバーグ。妖精族・魔族は北條ミチルの思いやりと魔力により食べると進化することがある。特に調理系職に効果あり。ただし、北條ミチルが特定の誰かのために作り一個分すべて食べた場合にその効果を発揮する】


 私のハンバーグが大変なことに!えええええ…鈴木とチーティスさんは大丈夫なんだろうか………。ハンバーグを捨てるべきか迷ったが、心を込めて作ったスペシャルハンバーグを捨てることはできなかった。

 鈴木は魔族ハーフらしいし、私の手料理を今までも食べていてなんともなかったから大丈夫だと思うことにした。きっと、多分、恐らく大丈夫…な、はず!私はそう自分に言い聞かせた。

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