推しメン様の食事事情と恋バナです
学校でのお楽しみ…それはランチタイム!というわけで、昨日と同じメンツでランチになったのだけど………。
『……………………』
「え?な、何??」
皆気になる鈴木の弁当。昨日のボーリング玉風おにぎりがあるので、なんとなく鈴木の弁当に皆注目していた。
今日の鈴木の弁当の中身は、血が滴る生肉だった。ワイルドだぜぇ!
「…あいつ、頑張ったんだな」
誰が!?何を!?遠い目をした鈴木にツッコミたいのにツッコめないよ!情報が足りなすぎるわ!すかさず鑑定する私。
【魔王の生肉】
【魔王の肉というわけではなく、魔王が所持している生肉。四天王の一人、早さのチーティスが狩った高級松阪ミノタウロスの肉。部位は至高と言われているシャトーブリアン。ただし、生肉は固くてお世辞でも美味しいとは言えない。焼くことで至高の焼き肉となる。ミディアムレアがオススメ。
「…鈴木」
「……うん」
「…この肉、焼かないと美味しくないらしいよ」
「……知ってる」
「…お家の人は、何故焼かなかったの?生肉…腐ったりしても困るんじゃあ…」
「…多分、黒焦げになって炭化させるよりは生肉の方がいいと思ったんじゃないかな…。この弁当箱は特注品だから、入れとけば腐らないし…」
「そうなんだ…」
すごいな、鈴木の弁当箱。いや、うん。鈴木が可哀想だ。
「鈴木…これやるわ」
ハンバーグを差し出す穂積。可哀想なものを見る目だった。いや、高級肉なんだよ?でもまあ…生肉はなぁ…。
「私もおにぎりをやろう」
「鈴木、好きなのを取れ」
「マオマオ、ポテサラあげるわ」
穂積に続き、皆がお弁当を鈴木に分けてあげていた。鈴木が涙目だよ…!いい話だね!
「瀬羽巣さん!」
「はっ!」
「七輪と焼肉のたれを!」
「はっ!」
「鈴木、その肉、焼こう!!」
「ミチルちゃん…本当にありがとうございます!」
鈴木に拝まれた。生肉貪る鈴木は見たくないから、気にしないでくれたまえ。
松阪ミノタウロスだっけ?の焼き肉は皆で食べたが、激ウマだった。ミノタウロスって人間っぽいフォルムだった気がするが、気にしない。
お味は高級な牛肉でしたよ。
「うめえええ!!」
ヤギみたいになる穂積。確かにこの肉激ウマ。
「うまい……」
肉を噛みしめる陽菜ちん。私も味わって食べてます。
「はああ…肉汁が幸せ」
うっとりしているむっちゃん。私も幸せだよ。いつまでも口に入れときたいよね。
「なんと…この蕩けるような舌触り…噛みしめるほどに溢れる旨味…松本牛(こっちの高級ブランド牛)よりも美味だ……」
どこの美食コメンテーターだよと言いたくなるが、多分アホ部なりに喜んでいるんだろう。
瀬羽巣さんは黙々と食べている。美味しいんですね。
鈴木の肉はたくさんあったので、皆で食べても余裕があった。だから、残りは焼いてお家の人へのお土産になりました。
「せっかくだから恋バナしましょうよ!」
むっちゃんの手作りクッキーをかじりながらまったりしていたら、むっちゃんがいきなり恋バナを要求してきた。逆らえばお菓子がいただけないので私と陽菜ちんは頷いた。
「恋バナねえ…」
穂積はどーでもよさそうだ。
「ズバリ、ミチルの好みのタイプは?」
「…好み?」
急に言われてもなぁ。困惑する私。むっちゃんはニコニコしている。
「あ、どんな外見が好み?」
「鈴木みたいな黒髪で、ロン毛は却下かなぁ。鈴木みたいな派手すぎない美形が好み。鈴木みたいに細身で触ると筋肉がついてる体型が好み」
「なるほど~。じゃあ、性格は?」
「鈴木みたいに控えめで穏やかなタイプがいい」
むっちゃんはうんうん頷いた。なんかニヤニヤされてないか?
「マオマオはどんなタイプが好みなの?」
「…考えたことがないけど…こう、グイグイ来る派手な女性はちょっと……ミチルちゃんみたいに清楚で可愛い子がいいなぁ」
「もう付きあっちまえよ、お前ら」
穂積がウンザリした様子で呟いた。異議あり!めっちゃ異議がある!!
「穂積いいいいいいいい!!こんの、馬鹿者!鈴木に失礼だろうが!こんな整った顔立ちの綺麗で可愛いゲームのメイン攻略対象な鈴木と、平々凡々代表のゲームにおいて攻略対象から見向きもされない地味眼鏡が付き合えるわけがないだろうが!顔面からして格差があるわ!鈴木へ謝罪を要求する!訴えて勝つぞ!!」
「…………鈴木、お前も大変だな……」
「………………うん。先は長そうだ………」
「鈴木、お前には負けないからな!!」
穂積と鈴木が、なんだかわかりあっていた。だからアホ部は何故鈴木に張り合うのだろうか。
陽菜ちんとむっちゃん、瀬羽巣さんはマナーモードに設定されたらしく、めっちゃプルプルしていた。
「ちなみに陽菜の好みのタイプは?」
「うん?うまいご飯を毎日作ってくれて、掃除洗濯家事全般が得意な男性だな」
「………つまり晃太ね?」
むっちゃんも家事全般はできるが、晃太は抜きん出て能力が高い。洗濯物干したりとか、早いし手際もいい。
「そうだな!」
「嬉しくねぇわ!」
穂積が反論した。陽菜ちんに好かれているのに、贅沢なやつである。
「晃太、5歳の時に約束したじゃないか。私の嫁になるって。私が稼いで晃太に楽させてやるって言ったろ?」
「あの当時はそれが普通なんだと思ってたんだよ!俺が稼ぐから、嫁は家庭的な娘がいいんだよ!」
「晃太……」
悲しげな陽菜ちん。穂積にビームをおみまいしてやろうと思ったが、むっちゃんが首を振った。
「無論、晃太にだけ家事を押し付けたりしないぞ!料理は苦手だが、それ以外は協力を惜しまない!」
陽菜ちんはめげなかった。流石はヒロインである。
「お前は本当に、人の話をちゃんと聞けよ!!」
「聞いているぞ!晃太の好みのタイプになれるよう、修行する!というわけで、ご指導ご鞭撻をお願いいたします」
陽菜ちんが頭を下げた。穂積がナニかに耐えている。
「な、だ、あああああもおおおお!!」
穂積が逃亡した。陽菜ちんは首をかしげている。
「素直じゃないわよねぇ」
「確かに」
穂積が陽菜ちんをどう思っているかは、弁当をみれば一目瞭然だ。
陽菜ちんの分だけ綺麗に可愛く盛り付けられ、必ず1品陽菜ちんの好物が入っているのだ。ただ、距離が近すぎて女性らしくなった陽菜ちんにどう対処していいかわからないらしい。
お前こそ付きあっちまえよと言ってやりたい。言えば良かった。
「…穂積はどうしたんだ?」
アホ部はこれほどまでにわかりやすい穂積の恋心がかわからない。鈍いにもほどがある。
「ぼっちゃまはお子ちゃまでございますゆえ、人の心の機微が解りませぬからなぁ……」
「瀬羽巣!お前絶対俺を馬鹿にしているだろう!」
「いいえ、お子ちゃまだなぁと見下しているだけでございます」
「瀬羽巣うううう!!」
「はっはっは」
瀬羽巣さんはアホ部をからかっている時が一番生き生きしているなぁ。
「晃太君…君も大変なんだね…」
鈴木は何やら穂積に感じるところがあったらしく、なんか涙ぐんでいた。