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推しメンに出会いました

 私は北條ミチル。勉強が苦手などこにでもいる高校1年生だ。いつも通り登校し、普段通り退屈な連絡事項を聞いてから授業を受けるはずだった。


「転校生を紹介する」


 担任のイケメン教師が、おとなしく穏やかそうな少年を連れてきた。




「鈴木ぃぃぃぃぃ!?」





 私は、その一言だけを叫ぶと気絶した。



 私こと北條ミチルは、とある乙女ゲームのサポートキャラである。眼鏡におさげの地味キャラで、ヒロインに好感度を教えてあげるのだ。

 運営に魔が差したとしか思えないとある乙女ゲーム…その名も『ときめき☆貴方の裏の顔』

 このゲームはキャラのギャップ萌え…をどこかで間違えたとしか言いようがないギャップを見せてくれた。


 例を出そう。

穂積(ほずみ)晃太(こうた)の場合】

表はホスト系フェロモンイケメン

➡家ではオカン

 これは、まだいい。


八木(やぎ)(むつみ)の場合】

不良(ヤンキー)系ワイルドイケメン

➡家ではオネエで可愛いものフェチ

 これも、まだいい。


京極(きょうごく)史朗(しろう)

穏やかな物腰の教師

➡病んでれ

 これはあかん!先生!拉致監禁はだんめぇぇぇ!!


兼田(かねだ)祐太郎(ゆうたろう)

某テニスなプリンス様のATB様的な超金持ち

➡一気に超貧乏人

 いや、このシナリオはマジでビビった。こいつの魅力は金だけだなと思っていたら、その金を失ってガチで食べ物にすら困っていた。思わずゲーム内で本気で同情して弁当を恵んでしまったよ……いや、金しか魅力がない男の末路がどうなるか、マジでドキドキしたよ!ギャップではなく違う意味でドキドキさせられた。いや、面白かったけどときめかなかったよ。


「アホ()~」


「…お前は何回兼田だと言えば覚えるんだ」


「ちゃんと不正とかないか気をつけるんだよ」


「……………ああ」


 私は高校入学時にゲームの記憶…というか、前世かな?の記憶を取り戻した。残念ながら、この世界の文明水準は前世と変わらないから知識チートはない。かわりに文化的な生活をおくれているので満足している。

 ただ、先生には極力関わらないようにしている。うっかり気に入られて拉致監禁されたくないからだ。


 逆にアホ部にはしつこく部下の不正とかに気をつけろと言った。結果、アホ部は無事没落を回避したっぽい。良かったねぇ。


「……ほれ」


「ぬああああ!?これはデパ地下限定高級菓子!神様仏様兼田様!!ありがとうございます!!」


「!?ちゃんと覚えてんじゃねーか!!」


 覚えてるよ。アホ部はアダ名なのだよ。多分回避のお礼なんだろうね。たまーに高級なお菓子を恵んでくれるんだよ。そして間違いなくおいしいんだよ。


 そして、私のこのゲームにおける推しメン様こと、鈴木。


鈴木(すずき)真生(まお)

 穏やかで平凡で優しくドジな癒し系キャラ。


 しかし、その裏の顔は……………



 私にゲーム中『鈴木ぃぃぃぃぃ!?』と絶叫させるほどであった。 某森でゆったりスローライフゲームでリセットを繰り返した結果ストレスで入院歴もあるもぐら様に『そんなにリセットしたいなら俺が消してやる!』と言われて画面がブラックアウトした時より叫んだ。

 後にも先にも、私がゲーム中にあんなに叫んだのは、あのゲームの鈴木に関わった時だけだ。あんなに萌えないギャップもそうそうない。鈴木は是非、鈴木のままでいてほしい。裏の顔なんてノーサンキューである。






「…あれ?」


 白い天井が見えた。ここは、保健室?走馬灯が見えてた??


「…大丈夫?」


 隣を見たら、無害そうで優しげな鈴木(オシメン)が居た。


「鈴木ぃぃぃぃぃ!?」


 驚愕して叫ぶ私に、戸惑いながらも鈴木は冷静だった。


「…あの、どこかで会ったかな?」


「会ってません。はじめまして」


 私は鈴木に頭を下げた。一方的に知ってるだけで、初対面なのだよ。来るかも…とは思っていたけど、心の準備が万全じゃなかったのだよ。


「「………………………」」


 鈴木にしてみたら、あれだけ名前を叫んでおいて初対面ですと言われるとは思っていなかったのだろう。固まってしまった。


「えっと………じ、じゃあ、なんで名前、知ってたの?」


「職員室で通りすがりに聞いた。たまたま知り合いに似てた。実は君のストーカー…どれにする?」


「まさかの三択!?ええっと…職員室?」


 なかなかノリがよいではないか、鈴木よ。流石は我が推しメンである。


「正解!これからよろしくね、鈴木君」


 私はこの時、まあ鈴木に関わらなければいいかと軽く考えていた。





 鈴木と教室に戻ったら、担任のイケメン教師からひとこと。


「あ、北條。お前鈴木と知り合いみたいだから、席隣な。それから、放課後に案内してやれ」


「鈴木ぃぃぃぃぃ!!」


「あの、ごめんね?」


 しかし、よく考えたら悪いのは鈴木ではない。担任のイケメン(病んでれ予備軍)である。しかも、鈴木の表面は私のどストライクなのである。


「いや、鈴木君が悪い訳じゃないから…」


 こうして、私と鈴木の学生生活は始まったのであ~る。

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