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ふぁんもん  作者: 馬場翁
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くまー

 ぼちぼち南の平原にも人が現れだした。

 始まりの街の周辺の難易度は、スライムが出現する西の平原が最も易しく、次いでゴブリンが出現する東の平原となり、動物シリーズが出現する南の平原とエレメントシリーズが出現する北の平原は同じくらいとなっている。

 全体的に動きが早く、物理攻撃が手痛い南の平原。

 敵の種類によってさまざまな属性で攻撃してくる北の平原。

 敵の傾向が異なるため、どちらがやりやすいかは手持ちのモンスターによって分かれる。

 チョコのシルクのように、南の平原では無敵でも、北の平原では瞬殺されてしまうような極端な場合もある。

 それはさすがにかなり特殊な例なものの、ほとんどのプレイヤーは自分の手持ちモンスターと、あとは欲しい素材との相談になる。


 ファンモンにおいて素材は主に3種類。

 一つは納品物。

 ギルドの依頼で一定個数その素材を納品すると依頼達成となる、間接的な換金アイテムである。

 もう一つはモンスターカード。

 使い道の多いプレイヤーが最も求めているものだ。

 そして、最後の一つが合成素材。

 特定の素材と素材を街にあるお店に持っていくと、その素材を使ったアイテムを作ってくれる。

 できるものはその素材によって様々。

 武器や防具だったり、ポーションなどの消耗品だったり。

 中にはそういった合成でしか手に入らないアイテムもある、というかそういったアイテムのほうが多いため、プレイヤーは必要な素材を集めに奔走している。


 南の平原で倒せる動物シリーズは、ドロップ品で毛皮などを落とす。

 毛皮は防具に加工することができるため、それを求めてやってくるプレイヤーは多い。

 また、ウルフは爪と牙を低確率でドロップする。

 これはそのまま装備品として牙や爪をもつ動物系のモンスターに装備させることができる。

 動物系のモンスターは人型のモンスターよりも装備できる装備品の制限が多く、ウルフの爪と牙はそういったモンスターを手持ちにしているプレイヤーにとって喉から手が出るほど欲しい逸品。

 ちなみに、牙や爪は装備させても元のモンスターの見た目に変化はない。

 牙や爪による攻撃にプラスの補正だけが乗るようになる。

 歯が二重になったり、爪の上に爪を乗っけたりするようなことはない。


 それら素材を求めてやってきたプレイヤー。

 しかし、南の平原は難易度が高い。

 ゴブリンに安定して勝てるようになったからと言って油断していると、あっさりと死に戻りすることになる。

 そのため、プレイヤーはすぐ避難できるよう、比較的街に近いところで狩りをしている。

 ほとんどのプレイヤーは序盤の金欠でポーションを使うのもためらうような状況。

 モンスターが傷ついたら無理せずいったん街に避難して回復を図り、回復したらまた平原に乗り込む。

 それを繰り返しているのだ。

 そういったプレイヤーがちらほらいるため、南の平原の街に近いところは微妙に混み始めていた。

 そして、狩りをする人が多いということは、その近辺からモンスターが減っていくということでもある。


 チョコはモンスターが減ってきてしまったために、追いやられるように平原の奥にと進んでいた。

 南の平原で無敵を誇るシルクに安全マージンなどというものはない。

 敵の攻撃が一切効かないのであれば、回復の必要もないし、万が一に備えて街の近くで狩りをする必要もないのだ。

 西の平原に現れた猪のようなイレギュラーがいなければ、どこででも、いつまでも、狩り続けることができる。

 効率としては最高と言ってもいい。


 そうして狩りを続けていると、平原の終点にまで来てしまった。

 来てしまった!

 平原が途切れたその先は森になっている。

 そして、チョコは深く考えずにその森に足を踏み入れた。

 足を踏み入れてしまった!


「ほへ?」


 その瞬間、強制的にフィールドを移動させられる。

 ワープさせられたのは直径50メートルほどのフィールド。

 そしてその中央にたたずむクマ。

 くまー。


「ゴアアアアア!」


 フィールドボス。

 そのフィールドから次のフィールドに向かうために、避けては通れない存在。

 フィールドボスを倒さないと次のフィールドには行けない。

 フィールドボスを倒したことがない場合、次のフィールドに足を踏み入れた瞬間フィールドボスとの強制戦闘が始まる。

 チョコはそんなこと知らず、ボス戦に突入してしまったのだ。

 クマが咆哮を上げた後、四足で駆けてくる。


「よくわかんないけど! シルク! お願い!」


 チョコの指示に従い、シルクがクマに向かってふよーっと飛んでいく。

 そんなシルクにクマの張り手が襲い掛かる!

 が、もちろんそれはすり抜けてシルクには効かない。

 並のモンスターだったら一発で大ダメージ、防御の低いモンスターだったら最悪一発でお陀仏という強烈な攻撃だったのだが、物理攻撃が一切効かないシルクには関係のない話。

 だが、相手もフィールドボス。

 張り手一発ではおさまらず、逆の手でもう一度張り手!

 それすらもすり抜けるが、クマの攻撃の手は緩まずデンプシーロール!

 まっくのうち! まっくのうち!

 普通のモンスターだったらこの時点でボッコボコにされて終了だ。

 しかし、シルクには効かない。

 効かぬ! 効かぬのだ!


 そして、シルク必殺の≪憑りつき≫からの≪ドレインタッチ≫が決まる!

 クマは引っ付いてきたシルクを手で払いのけようとするが、それすらもすり抜けてしまい、効果がない。


「ゴアアアア!」


 業を煮やしたように咆哮を上げるクマ。

 実はこの咆哮、れっきとしたスキル攻撃。

 《咆哮》は《吠える》の上位スキル。

 《吠える》は相手を威嚇し、低確率で恐怖や混乱といった状態異常を与えるスキル。

 そして、その上位スキルである《咆哮》は恐怖と混乱の発生率が高くなり、さらに大音声によって相手の動きを止める爆音の状態異常を発生させる。

 さらに爆音の追加効果として、耳鳴りの状態異常も誘発する。

 耳鳴りの状態異常になると、モンスターの耳が聞こえにくくなる。

 そのため、マスターの指示が聞こえなかったり、相手モンスターの出す物音に反応できなくなったりするのだ。

 特に耳のいいモンスターだとその悪影響が強い、地味に厄介な状態異常だった。


 しかし、これまたシルクには効果がない。

 シルクには《霊体特性》のスキルに内包されている《肉体系状態異常無効》の効果がある。

 つまり、状態異常のほとんどが通用しない。

 もうなんというか、クマがかわいそうになるくらい相性が詰んでいた。


「シルクー! がんばれー!」


 チョコの声援が響く中、クマはそれでも最後まで諦めずにもがいていた。

 が、無情にもそのHPが尽きる。


「やったー! シルクすごい!」


 喜ぶチョコ。

 どこか誇らしげなシルク。

 経験値とドロップ品を得て、元のフィールドにワープして戻ってくる。

 が、そこでチョコの視界に妙なものが浮かんだ。


『ここまでプレイしていただきありがとうございます。β版ではここまでとなります。この先のフィールドの解禁は本サービス開始までお待ちください』


 β版では始まりの街周辺、すなわち東西南北の平原までがプレイできる。

 その先は本サービス開始までお預けということだった。

 チョコが試しに目の前の森に入ろうとしても、見えない壁に阻まれてそれはできなかった。

 が、それはそれとして浮かぶメッセージ。


『ベアーに挑みますか?』


 どうやらフィールドボスには何度でも挑めるようだった。

 それを見たチョコが、にやりと黒い笑みを浮かべる。

 クマの受難の日々が始まった。

ベアー

☆2のモンスターで、南の平原のフィールドボス。《吠える》の上位スキルである《咆哮》を持つ。STRが高いパワータイプ。動きも素早く《咆哮》で相手の動きを止めて連続攻撃を仕掛けてくる。その極悪コンボをくらうと☆1モンスターでは死に戻り一直線もありうる。ボスの名に恥じない強さ、だったはずなんだけどなー。ちなみにレベル5になるとストンプを覚えることができる。が、出現するボスはレベル1固定。

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