067.はがねの錬金術師(?)伝説…その28
有言不実行3歳児ランスロット…………
横道にそれさせる神様のジェットストリームアタックが炸裂した。
「ゆ、許す」
かみまみた。
『てへぺろ』と言って、自分の失敗を誤魔化すような雰囲気ではありません。
相手は、ローリーペッタン王国の近衛騎士団のトップである団長なのです。
元いた世界だと、テロリスト民族のアルカニダが適法だと言っている三店方式の換金でも賭博であるから違法だと言ってきちんと捕まえるどんな組織との癒着も許さない極々普通の法の番人の警察組織のトップの人と同等の人ですよ。
小市民なので、そんな偉いさんに対して、『おばあちゃんが言っていた…』の人のような巫山戯たような態度は取れませんよ。
「は、ありがたき幸せに存じます。では、今のプリタニアン伯爵のふぃぎゅあですか? あれは、あの1体だけなのですか?」
予想もつかないセリフに思いっ切り不意を突かれた。
なぜ、いきなり、フィギュアの話を?
「えっと、完成品は、あれひとつですけど?」
ウソを吐く意味がないので、偉い人の前でドキドキしながら正直に答える。
「…………ひとつだけですか…………」
なにコレ?
団長は、地面に埋まりそうなくらい、落ち込んでいる。
重いです。
重いです。
空気が重いです。
定番だけどいつも味が変わるベンタブラック以上に真っ黒で原型が分からずこの世のモノとは思えない臭いがする元お母さまの料理が並んで食事の準備が出来ていてもダレも『いただきます』を言わずに黙っているときの有栖乃家の食卓のような空気です。
そのせいで、団長の感情に対し共感する感情の同一性を感じてしまった。
「えっと、だから、その、実物があるのは、あれだけですけど、作ればいくらでも出来ますよ」
慌てて、余計な情報まで漏らすってことありますよね?
えっ?
無いですか?
「いくらでもですか?」
まるで、盆と正月が一緒に来たような笑顔になりました。
思わず右手が勝手に魔道具創造魔法を発動して怪しい仮面を作りそうになった。
静まれボクの右腕。
「はい」
こんな笑顔を見せられて、『ノー』と言えますか?
ボクも笑顔で答えちゃったよ。
「本当にいくらでもですか?」
うわぁぁぁぁ、さらに、いい笑顔になった。
「はい、作るのに多少手間がかかりますけど、出来ますよ」
息を吐くようには無理ですが、ポーカーフェイスを崩さずに、さらっとウソを吐く。
少しのウソくらいはいいでしょう?
作るのはいいんです。
問題は流通量です。
たくさん出回り過ぎると、単価が落ちるし、経済がいびつになると思うんです。
売る人と買う人、中間の人がいなくなっていってしまうんです。
そして、売る人はボクだけ、中間を入れたとしても、マッコォイさんとトルネドさん。
ほんの一部の人間しか、お金が回らなくなるんです。
ですから、作る量だけは間違えてはいけないんです。
「某に作ってもらうことは出来ますか?」
やっぱり、その質問になりますよね?
「さすがにタダって訳にはいきませんが…………でも、これ、お父さまのフィギュアですよ?」
男が男のフィギュアを買うなんて……………………よく考えれば無くは無いですね。
「はい、ブリタニアン卿は、男にも女にも人気があります。そして、このプリタニアン伯爵のふぃぎゅあには、今までなかったプリタニアン伯爵の魅力がいっぱい詰まっているんです。ブリタニアン卿のファンのひとりとして、某は、グッズとして手に入れたいんです。この行動は間違っていないと思いますが?」
自分は曲がったことや悪いことなんてしてないですよって自信を持って言っている。
さすがは、そういう組織、ローリーペッタン王国の近衛騎士団のトップである団長さまです。
そして、少し視線を移動させると、こっそりとぷるぷると首を振って、バッテンのジェスチャーをしているお父さま。
売るなってことですか?
まぁ、無理に売ることはありませんし、かぐや姫のように無理難題を吹っ掛けておきましょう。
「フィギュアの代金は金貨1万枚、そして、条件として、領都の警備でもやってもらいましょうか?」
この条件なら、いくらなんでも、断るでしょう。
某等身大フィギュアが198万円なのに、こんな魔法で簡単に作ったフィギュアが金貨一万枚、約1億円です。
原価0円が約1億円なんです。
ぼったくりもいいとこです。
法外な値段の壺、多宝塔、印鑑、数珠、表札、水晶が可愛く見えます。
それに、エリート中のエリート、近衛騎士団の団長を辞めて、領都といっても、ど田舎の警備です。
警視総監に仕事を辞めて、日雇いの警備のアルバイトをやれって言ってるようなモノです。
さぁ、断るが良い。
えっ?
それは、フラグだって?
ま、まさかぁ(震え声)。
次話、てきとー次回予告
人生、それは迷路
血迷った事をしたり、自分を見失ってしまったり
傍から見ると馬鹿みたい
何とか抜け出したいものです
次回、日常系のお話はやりたい放題の合間に『迷路 (フールズラビリンス)』




