642.ゆる~い小学校生活…その112
もうそろそろ落ちそう
「まぁ、あれだ、とりあえずこれを見てくれ」
マッコォイさんが、応接テーブルの上に一枚の紙を置いた。
置かれた紙は偽装防止のために四隅にすかしの飾りがついており、さらにエンボッサーで付けたようなブリタニアン家の紋章がエンボス加工されてようですね。
もしもです。
もしもですね。
もしも、この紙が正規ルートの紙でなく、偽者であった場合、マッコォイさんは物理的にこの世界からいなくなってしまいます。
実際、この国に限らず、この世界では貴族の紋章の不正使用に対しては、厳しいですからね。
つまり、この紙は本物であり、当然、記載してある内容も本物って事ですよ。
「これは?」
紙に記載してある内容を確認する前に、思わず聞き返してしまった。
失敗です。
この紙の入手経路なんて簡単に想像がつくし、聞くまでもなかったことでしたからね。
「これは納品物を吹きたたら製鉄工場の検品責任者に【鑑定】用の魔道具で調べてもらった鑑定書だ」
そう、内容はともかく、紙についてはボクは知っています。
この世界で、こんな偽装防止処理をした紙なんて、ボクが作った魔導具でしか作れないんですよ。
とりあえず、鑑定書を手にして、記載してある内容を確認しますね。
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【劣化鉄鉱石:品質E】
鉄成分が非常に少なく、また不明な成分が多く含まれている。
魔道具を使用してこの劣化鉄鉱石から鉄成分を抽出しようとすると
魔道具が壊れる可能性がある。
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ちゃんと鑑定できているようです。
鑑定結果は残念ですけどね。
くも子の手を借りれば、他の金属に手を出しても、良いんですが、とりあえず、鉄です。
他の金属は需要が少なく、需要が多い鉄はいくらあっても困らないので、持ち込まれたモノは全て買取しているんですよ。
その代わり、検品はしっかりしています。
取引価格を確定させるためにね。
元いた世界でも、色々と手を尽くして、炭素量が同じになるようにした砂鉄から作った鉄とと鉄鉱石から作った鉄は同じ品質になります。
この世界だと、手を尽くさなくても、魔法があるので砂鉄からでも鉄鉱石からでも、作った鉄の品質は同じになるんですが、ブリタニアン領内で採れる砂鉄の価値を上げるために、砂鉄と鉄鉱石で出来上がる鉄の品質が変わるように調整してあります。
さらに、鉄鉱石の場合は、品質に比例させて、出来上がる鉄の品質を変えているんですよ。
なので、取引価格も品質…………実際は鉄の含有量に比例しています。
そう言えば………………砂鉄でも鉄鉱石でも、製鉄の邪魔になる取引価格に含まれていない不純物は、製鉄する前に魔導具を使って分離させ、ボクの地下秘密基地内に転送して集めていましたね。
けふん、けふん…………ちなみに鑑定に使用しているのは、ボクが作った吹きたたら製鉄工場の検品責任者向けに特化したメガネ型の魔導具で、AR…………拡張現実を使って鉄鉱石の品質が色で分かるようにしてあるので、検品作業と品質毎の仕分け作業がし易くなっているヤツです。
もちろん、今回のように鑑定書を作成することも可能ですよ。
魔導具…………何でもありですね。
あ、いや、そうでもないです。
やはり道具なんですよ。
できることは決まっているんです。
だから、マッコォイさんにとっては残念な鑑定結果でも、ボクにとっては良い結果かも知れないんですよ。
「今、鑑定して貰った鉄鉱石って持っていますか?」
この世界の【鑑定】魔法の結果は個人個人で違いますからね。
ヘスティアの【鉱石鑑定】魔法みたいに魔法名から鉱石に特化したしたのもあるんですよ。
と言うことで、やっぱり、実物の確認が必要なんです。
「ああ、持っている。これが受け取り拒否された鉄鉱石で、こっちがサンプル採掘時に採れた鉄鉱石と鑑定書だ」
後出しされた鑑定書…………ここで出したってことは見てくれってことですよね?
受け取り拒否された鉄鉱石を鑑定したいのですが、後にしておきましょう。
ボクが鑑定書に手を伸ばそうとすると、マッコォイさんが語り出した。
あんな爆発が起きるなんて、絶対にやばいって
だけど、みんなが待ってるから
劣化鉄鉱石の正体とは?
そして作られる新たな魔導具
次回、魔法小学生ラジカルらんすろっと、第643話『新しい魔導具なの!?』
ラジカルマジカル、負けないように!




