619.ゆる~い小学校生活…その89
『湖の乙女』キャンプ場の湖面が臨める中央広場に集合しました。
キャンプファイヤーが出来るようにしてある中央広場は砂利を敷き詰めてあります。
砂利だと水はけが良いし、汚れにくて、燃えにくいのでベストチョイスですね。
また、中央広場の周囲には、ピザ窯とBBQコンロがそれぞれ24台設置されているので、大人数でも対応できるんですよ。
水場と調理場とトイレもあり、東西南北それぞれ1ヶ所で計4ヶ所あります。
領軍の訓練でも使用するところなので、それなりに快適に過ごせるようにはなっているんですよ。
アメとムチです。
競わせて、勝てば快適に過ごせると分かっていれば頑張れるんです。
ムチだけで頑張れる人は特殊な人だけですよ。
「一応、ピザがの材料は沢山持って来ているから、好きなだけ使っても大丈夫。食材が残っている限り食べ放題よ。だから、みんな美味しいピザを沢山作ろうね」
ユノ先生が先生らしく、説明をしてくれています。
クラス毎に水場が違うので、それぞれの水場に別れての説明です。
『美味しいピザを沢山作ろう』と言う話ですが、ピザだと食材を載せて焼くだけなので、失敗が少ないです。
今回、ピザ生地は完成されたモノが準備されており、カットすべき食材はすでにカットしてありますし、ピザソースも味付けが済んでいるモノが準備されています。
比較的簡単だと言われているカレーを作るよりさらに失敗する確率が低いんですよ。
さて、こんな状況で、どうやって失敗するんでしょうか?
正直、炭化させるのと、特殊な組み合わせによる化学反応くらいしか思いつきません。
と言うか、そんな失敗をする確率なんて、ほぼゼロだと思いたいです。
しかし、この広い世の中、パッケージに作り方が書いてある市販のカレールウを使っても、カレーを不味く作る人もいるんですから、油断は禁物ですね。
「BBQコンロもあるから、学校が準備した食材を使っても良いし、現地調達出来る子は、現地調達して食べてもいいわよ。ちなみに、この辺りには、野兎や猪がいるみたいよ。冒険者カードを身に付けていれば危険はないはずだし、一応、冒険者さんたちが周辺を警備してくれているって話だから、大丈夫だとは思うけど、安全には気をつけてね。あ、そうそう、湖から現地調達は危険だから絶対にダメだよ」
BBQも良いですね。
串に刺して焼くだけです。
必要があるかどうかを聞かれると困りますが、現地調達した食材での料理は、浪漫に溢れています。
一通り、先生たちの説明が終わると、腹ペコ姉妹たちが声を掛けてきた。
「ランスロットくん、現地調達楽しそうなのですよ」
「…………ししょー…………狩りしたい………………」
「日々の訓練の成果を試すには、良い機会だな」
「シィルも現地調達やってみたいです。ランスロットさま、ダメですか?」
「狩った得物を、ダァに調理して貰うのはありじゃな」
みんな乗り気です。
ボクも個人的にはBBQはありなので、肯定的な返事をしておきます。
「えっと…………狩るのは、食べれる分だけにしておこうね」
腹ペコ姉妹たちに本気で狩りをさせると、生態系に影響が出そうです。
競い合わずに、必要数だけの狩りにして欲しいですね。。
「どっちが美味しい料理が出来るか勝負よ」
近寄って来ていたことは分かっていたけど、反応せずにいたらこんなことを言い出しましたよ。
「ねーちゃん…………いえ、姉のエネヴァウク・ベドリバントがすいません。なんか、たまに衝動的に行動しちゃうので…………」
円卓の騎士団、副団長、ベドリバント・ベディヴィア卿の2人の子供であるエネヴァウク・ベドリバンとアムレン・ベドリバント姉弟。
入学式以来、絡まれることはなかったのですが、遠出したことで何かスイッチが入ったのでしょうか?
「普通に考えれば、料理でランスロットくんに勝てないと思うのですよ」
「…………ししょー…………勝つ………………」
「相手の得意な分野で勝負することは賞賛出来るが、勝負にならないのではないか?」
「えっと、良い勝負になると嬉しいですね」
「いくらなんでも、ダァに料理勝負なんて、さすがに無謀だと思うぞ」
ボクの代わりに腹ペコ姉妹たちが率直な攻撃力の高すぎる返事をしてくれました。
と言うか、口を挟む余裕がないです。
「う゛っ、だったら、獲ってきた食材を使って、どっちが美味しい料理が出来るか勝負よ」
えっと、なんとコメントしたら良いのでしょうか?
アムレンも大きなため息を吐いてます。
「結局、料理勝負だと、ランスロットくんがその辺りの雑草を使ったとしても、勝負は見えているのですよ」
「…………ししょー…………勝つ………………」
「あ、うん、挑戦することを勝負とは言わないぞ」
「良い勝負になるように、頑張ってくださいね」
「勝ち負けが分かっている勝負をすることも、結果的には無駄ではないと思うぞ」
エネヴァウク嬢と腹ペコ姉妹たちのセリフ…………どちらもコメントしにくいです。
元いた世界でもサバイバルは得意でしたし、この世界では魔法があります。
正直、得物を狩ることなんて、ハンディキャップにはなり得ません。
「じゃあ、どっちが大きい得物を獲ってくるかで勝負よ」
窮鼠猫をかむって感じですか?
調べてはいませんが、ユノ先生の話だと湖は狩りの対象外になるので、獲物となるのは野兎や猪になるはずです。
つまり、エネヴァウク嬢が口にしたルールだと、大きい個体に当たると言う時の運が勝敗を分ける感じになります。
勝ち負けが分からなくなるので、勝負としては面白いと思いますが、問題があるとしたら、このルールだとどちらが強いかを決めるための勝負のはずなのに、運で勝負が決まるので、勝負する意味が無くなるくらいですか?
あ!
ど、どうしたのさ○○○?
夢かぁ…。あ~
そんなに怖い夢見たの?
うん。せま~い、くら~い獣道で、うようよぶよぶよとした化け物が…
何!?まずい、それ正夢かもよ、ほら
え?
次回は、『何よこれ!たまにお肌がドロンドロン』
あ~あ、またまた悪い予感…




