606.ゆる~い小学校生活…その76
元いた世界では、極希に本家が運営している道場で指導員として働いたことがある。
そして技の指導をするときに、往々にして人の身体を触ることは多々ありました。
つまり…………この程度のことは当たり前のことです。
特に身構えることなんてありません。
「ここをこうして………………」
や、や、や、や、や、や、や、やりにくいです。
新しい冒険者カードの画面をグィネヴィア嬢の斜め後ろから無理な姿勢で覗き込みながら左手でグィネヴィア嬢の左手の指を動かすなんて難易度高過ぎです。
指を動かすのはまだいんですよ。
動かした指で、新しい冒険者カードを操作するのが大変なんです。
この世界でも、技の指導をするときに腕や脚など大きい部位の動きを直したりするのは余裕だったので、指を動かす程度のことは楽勝だと思ったんだけど想定外ですよ。
相手の指の関節を曲がらない方向に曲げるのは得意なんですけどね。
って、話が逸れました。
こんな状況になっているのは、新しい冒険者カードの操作には、固定するための右手との連動が必須になるんですよ。
でもですね。
その新しい冒険者カードを固定する方の右手がグィネヴィア嬢任せになっているのが余計に難易度をアップさせているんです。
と言うことで、思ったより手間取っています。
「ランスロットくん、ズルいのですよ」
「…………ししょー…………ズルい………………」
「じぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」
「ランスロットさま………………いいなぁ…………」
なぜか視線が痛いです。
と言うか、何がズルいのでしょうか?
意味不明です。
今やっていることは、普段の訓練と同じようなことなのに理不尽です。
そもそもダレですか?。
本人が触っていないと、操作できないと言うセキュリティを実装した人は?
って、ボクですね。
でも、実際、不正利用できないようにするためには仕方が無かったんですよ。
考えた末のこの仕様です。
この仕様にしなければ、くも子任せのマンツーマンのセキュリティを実装するしか道がなかったので仕方がありません。
で、問題を解決するだけでなら、オーナーズデスクのオペレーターのくも子に頼めば良いのですが…………今さらなんだかなぁって気がするので、アプローチを変えます。
「ちょっとごめんね」
手持ち無沙汰だった右手を背中からグィネヴィア嬢の右手に重ねた。
新しい冒険者カードの固定をグィネヴィア嬢に任せているのが主原因なので、それを解決するためです。
この体勢でなら楽勝です。
「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
って、またもや想定外です。
グィネヴィア嬢が奇声を上げて身体を強張らせたので、思った通りにグィネヴィア嬢の指を動かすことが出来なかった。
「ごめん、もうちょっと力を入れるね」
この世界に来てから地力が上がっているので、微妙な力加減は難しくなっているので、結構神経を使います。
大パワー抑制ギプスみたいなデバフ系の魔法を作って常に弱体化したほうがいいのかも知れません。
「////////」
グィネヴィア嬢が、力を抜いてくれれば直ぐに終わるのですが、グィネヴィア嬢も力を入れてしまいました。
もしかして、ボクが力を入れるって言ったから身構えたのでしょうか?
訓練の時も『ちょっと本気出すね』とかよく言いますからね。
「あーーーーーーーーーーーーーーーっ」
「…………むっ………………」
「んーーーーーーーーーーーーーーー」
「…………………………ランスロットさま」
腹ペコ姉妹たちから、不機嫌そうな声が上がった。
いつもは腹ペコ姉妹たちの武術の師匠らしくスマートに色々とこなしていたボクですが、今回はちょっと手間取ったので、腹ペコ姉妹たちの。評価が下がったのかもしれないですね。
とりあえず、ユノ先生が指示通りの画面が表示されました。
ただですね。
でも、これで終了ではありません。
「え~~っと、みんなはちゃんと操作できたのかな?」
腹ペコ姉妹たちがユノ先生の指示通りにちゃんと出来ていることなんて知っています。
ついさっき、みんなはさっさと目的の画面に出来たことを自慢してましたからね。
でも、こう聞いた方が正解だと思ったんですよ。
「そう、難しいのです。ユノ先生の説明の仕方が悪いのですよ」
「…………ししょー…………助けて………………」
「簡単そうに思ったけど違ったようだ。主君…………教えて貰えないか?」
「ランスロットさま、シィルもお願いします」
仕方が無いです。
さっきまでは、腹ペコ姉妹たちの視線の方が気になっていましたが、今はクラスメートたちの視線が痛いです。
残りの腹ペコ姉妹のメンバーもグィネヴィア嬢と同じように操作してあげました。
「みんな、学生食堂のエントランスに入るわよ。で、足元を気をつけながら冒険者カードの表示を見ていてね」
ボクたちもユノ先生の合図で動きだした。
と言うか、手を添えて指を動かさなくても、一番慣れている【念動力】魔法を使えば良かったですね。
あぁ、どうもまたお会いしましたね~
え?お前は誰だ?
やだな~、僕ですよ
ほら、学生食堂のエントランスの近くで待たされていたクラスメートですよ
まぁ、本編で一言も喋ってないから、わからないのも無理ありませんけどね~
それにしも僕ってどうして待たされていたんでしょうね?
記憶が飛んでたって事は、やっぱり○○○なことだったと思うな
僕、そんな大物じゃないんだけど、クラスメートの人はちゃんと記憶があるのかな~?
次回、『獲得』
お楽しみに




