052.はがねの錬金術師(?)伝説…その13
まさか終わらないとは………
アイテム収納から、ぽんぽんぽんっとテーブルの上に200本のワインを取り出した。
「さすがは、アロンダイト閣下。こんなにたくさんモノが入るとは、すばらしいアイテム収納の魔道具をお持ちだ」
アロンダイト閣下ってダレだよって………………………ボクですね。
それより、アイテム収納についてはあまり突っ込まれたくないので、愛想笑いをしておく。
「へっへっへっ。ありがとうございます。じゃあ、この中から味見用のを何本か開けますね」
そう言って、ワインに手を出そうとすると………。
「待て、待て、待て。売って小遣いにするためのワインだろ? みな、味見用のも自分で買うよな?」
ああ、また、ひいおじいさまの質問形式の命令が下った。
「「「「「「よろこんで」」」」」」
貴族やお城勤めも大変だよなぁ。
「金庫番、俺のひ孫に代わって、売り買いの管理をしてやれ。代金はまとめて立て替えて俺のひ孫に渡してやれ。もちろん、回収も忘れるなよ。まぁ、微々たるもんだと思うがな。がはははは」
お城勤めのエリートをまるで使用人のように………って、全員そうだよな。
なにせ、現国王さまの命令だ。
どんなにイヤなことでもノーとは言いにくい。
ぞくり………
一瞬、背筋に冷たいものが走った。
「その役、わしが代わろう。そんな、『なんで俺たちが?』って顔をしているヤツらには、金勘定を任せられん」
金庫番を助けるようにマッコォイさんが口を挟んだ。
違う。
本気だ。
本気の商売人モードだ。
さっきの冷たい感触は、マッコォイさんが心のスイッチを切り替えたのを感じ取ったのだろう。
他に気付いたのは………同じ商売人のトルネドさんだ。
ヤられたって表情をしている。
ピピンさんは、まだまだだなぁ。
「ワインの代金を、死の商人マッコォイが取立てに来ると………。ウィットに富んだジョークで、それも面白いな。分かった。マッコォイ、頼んだぞ」
と、考えているうちに、決まっちゃったようだ。
「はっ、必ず。取り立てて、坊ちゃん閣下のお小遣いのお役に立ちましょう」
坊ちゃん閣下ってなんだよ。
「うむ」
「国王さま、利子は1日1割でよいですか? 坊ちゃん閣下へのは利子の9割、わしはその1割を今回の手数料として働きましょう」
夕方にカラスがカァと鳴けば利子が付くと言われている『カラス金』じゃないですか!!
まぁ、短期貸付なら、仕方が無いのかな?
「ああ、そうだな。さすがに死の商人マッコォイをタダ働きさせるには忍びない。そんなはした金で悪いが………みなのもの、利子は1日10割でよいか? どうせ、払わぬ利子だ。9割を俺のひ孫アロンダイト大公に、残りの1割を死の商人マッコォイにしても問題ないよな? どうせ、払い忘れても翌日払えば、死の商人マッコォイの取立ての体験がワイン代で出来るだけだ。まさか、ワイン代を払えぬものなどおらぬよな?」
マッコォイさんの殊勝な表情だけで、『カラス金』がさらに10倍。
「「「「「「はい、もちろんです」」」」」」
そこまで、貴族は金が余ってるのか!!
お父さま、頑張ってくださいよ。
「と言うことだ、それで許可しよう」
ひいおじいさまの機嫌は最高潮っぽい。
「はっ、ありがたき幸せ」
マッコォイの口元がほんの少し上がった。
計算通りって感じだ。
まぁ、何にせよ、ボクは最大200本だけど、奇跡のワインの代金が入ればホクホクだ。
ロリっ娘、ペタン娘、妹っ娘、売ってるのかなぁ?
次回、阿鼻叫喚




