043.はがねの錬金術師(?)伝説…その4
まだまだ、目の調子が悪い
『3歳児だけで行列にきちんと並んだりはしない。そして、普通の3歳児に通門料を持たせる親はいない。それに、村や街から安全にここまで来れる3歳児はいないし、そもそも、国王でも着ることの無いスパイダーシルク以上の素材で庶民の服を作るヤツが他にダレがいる。他にも色々あるが、わしに言わせれば、こんなに目立って気付かれないと思う方がちゃんちゃら可笑しいわ』
いやあ、ごもっともです。
列の後ろのじっくりと観察してたし、ボクの情報を持っていたんですから、そりゃあ気付きますよね。
いや、それでも気付くマッコォイさん、マジすげーよ。
そして、1時間ほどでボクをお城の謁見の間にいさせるんだぜ。
マッコォイさん、マジヤバくねぇ?
「出来れば会いたくは無かったな。死の商人マッコォイよ」
ボクは跪いて下を向いて2人のやり取りを聞いている。
そんな中、マッコォイさんの聞いてはいけない二つ名を聞いちゃったようだ。
ひいおじいさまの声がマジでイヤそうな声に聞こえるんだが………………。
と言うか、ひいおじいさまとマッコォイさんは面識があるみたいだ。
「ハハハハ、その肩書きはすでに息子に渡してありますよ。今は生ける伝説の横で、その英雄譚にどれだけ多く名を残せるかと画策しておる次第ですよ」
国王さまを前に、そんなイヤミなセリフを笑い飛ばす。
ボクなら魔法でこの場を吹っ飛ばすくらいしかできません。
「で、そのマッコォイが世間話のためだけに、ここに来るわけがないよな? 単刀直入に聞く、何しに来た?」
何もかも切り裂きそうな鋭い視線。
マジ怖い。
マッコォイさんは、その場でくるりと回ってその視線を避けた。
「依頼だ。わしは依頼を受けて、この場を作ったんだ。そして、この場を作ることで、わしも英雄譚の1ページに加わることが出来たんだ」
回りながら、マッコォイさんは、まるでオペラの一場面のように芝居がかった感じで、大袈裟にセリフをそう言いました。
国王さまの前でやりたい放題だ。
「英雄譚? また訳の分からぬことを……単刀直入に聞いているんだ。分かりやすく言え」
ピリピリする国王さま。
「まだ分からんのか? わしは、わしの依頼者のこちらの男の子を会わせたかったんだよ」
「依頼者? お主のひ孫か? その者、顔を上げい」
言われるがままに、顔を上げて、ひいおじいさまの方を見る。
「いいや、わしの孫ではないぞ。わしの孫に出来るのならいくら金を積んでも惜しくはないわ。それくらい、わしの孫であったらなとは思うが……。よく見てみろ」
ひいおじいさま、視線が……視線がチクチクと刺さって痛い気がします。
「エルフ……いや、ハイエルフ!! ハイエルフ…ハイエルフ…ああ、バンの子、ランスロットか! と言うことは、俺のひ孫か! ランスロット、こちらに来て、顔をよく見せておくれ………………ああ、確かに、バンやエルフティアの姫君の面影がある生き写しだな。でも、どうして、マッコォイが連れてきたんだ? バンや姫君は? それに、お披露目にはまだ2年あるはずだが……」
5歳までに病気などで亡くなることや、貴族意識を自覚的に持ち始めた5歳過ぎてからお披露目をするらしい。
ひいおじいさまに近付くと、顔をじっくり見られて、抱き付かれた。
しばらくは、興奮したひいおじいさまに、なすがままにされた。
そして………。
「(ひいおじいさま、ちょっと失礼します)」
そう、ひいおじいさまに耳打ちして、最初の目的を果たす。
【付与魔法:真実の目:ひいおじいさま】
ひいおじいさまに付与魔法を3つかけるのが一つの目的だ。
「(今、ひいおじいさまに、変装した魔族が分かるようにしました)」
「(そんな事が……)」
「(シーターさまの加護のおかげです)」
「(……そうだったな)」
「(ひいおじいさま。魔族がこの城郭内に……あそこにいる近衛兵のように、すでにお城にまで入り込んでいます)」
「(なに? 近衛兵がか?)」
「(正体がバレにくい独り者を狙って入れ替わっているようです)」
「(こ、姑息なヤツらめ)」
「(王都に入り込んだ魔族をやっつけるだけなら、ひいおじいさまから一声貰えれば、すぐ出来ます。でも、ついでに他の部分も解決しませんか?)」
こうして、ひいおじいさまと秘密のお話をすることになりました。
どんな話かって?
もちろん、秘密ですよ。
決まっているじゃないですか。
次回………………も、ストックなし………。
しばらく出てこなかった人のお話の予定




