004.ドラゴンとの契約
「ドラゴンたちは岩塩のある場所を寝床にするから、岩塩はドラゴンの協力がないと採掘できないんだ。まぁ、協力といっても、襲わないようにして貰うだけなんだがな。そして、ドラゴンが住み着くと、付近の岩や石が魔石に変質するんだ。この魔石も豊かな生活に必要だから高値で取り引きされている。兵を向けても、ドラゴンたちに力で敵うわけないから、要求通りにするしかなく、各国はドラゴンたちと契約し、契約通りに宝石などの光りモノを渡すことで岩塩と魔石を確保する。今はその契約内容が見直されているんだが、昔に比べて要求が厳しくなって、岩塩や魔石の価格が値上がっているんだよ」
お父さまが、優しく教えてくれた。
ボクからの質問は、多少子供扱いが入るが、子供向けの回答ではなく、正しい情報を教えてくれる。
ただ、妹の作り方については、ウソを吐かれたけどね。
「領主さま、事情が分かってるなら、この金額でお願いしますよ」
トルネドさんがお父さまに突っ込んだ。
「いや、分かっているからこそ、この金額で頼む」
お父さまも負けずに切り返す。
「お父さま、目の前に塩の原料があるんですから、作れば良いんじゃないですか?」
見た目は子供、中身は大人気ないボクが口を挟む。
やっぱり、子供だなぁって感じ目でボクを見るお父さまとトルネドさん。
「それはそうなんだがな……」
どう説明しようかと、悩んでるお父さま。
「お坊ちゃん。お坊ちゃんが言う通り、大量の火魔法士や薪を使って海水を煮詰めたり、水魔法士で真水を取り出したりすれば、海水から塩は出来るです。でも海水から出来る塩は、苦くて料理に使うことが出来ないんですよ」
トルネドさんが、ボクを諭すように言ってきた。
「そんなことないよー。それは、作り方が悪いだけで、海水からは、美味しい塩ができるよ。ちょっと待ってて……」
塩の作り方は知っている。
でも、この世界……異世界ならではの作り方を試してみよう。
街道から海の方に向かい岩場の手頃な石を持ち上げる。
【魔法創造:魔道具創造】
【魔道具創造:簡易型海水分離器】
手に持った石が変形し、足りない部分は大気中の魔力を使って補完していった。
でれれてってれー
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【簡易型海水分離器】
バケツに四つ又の蛇口が付いた魔道具で、海水の成分を大まかに4つに分けることが出来る。
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バケツに海水を入れれば、真水と塩とニガリとその他の成分に分解してくれる便利な魔道具だ。
こんなモノを作ってしまうなんて、なんて大人気ないボク。
「マーリン、ちょっと、結界使って海水持ってきてー」
子供っぽくマーリンをこき使う。
「マーリンは、そんな便利に使われるような女じゃないですよぉ。それより、今使った魔法を教えて下さい」
マーリンのくせに生意気な!
【念動力】
躾が足りていないマーリンを念動力で持ち上げる。
「坊ちゃま。持ってきますぅ。海水くらい、すぐに持ってきますからぁ。その魔法、止めて下さいよぉ。ほんとに、海まで歩いて1分くらいですので、自分で歩いて行きますからぁ……」
「えー、マーリンって、なんだかんだ言って、すぐにゴロゴロするから、信用できないよー」
念動力を使って、マーリンを投げつけ……高速移動させる。
投げつけたら、水切りの石のようにドコまでも飛んで行っちゃいそうだったので、止めておく。
「マーリン、海水を取ってこーい」
バッピュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
本日2度目のマーリンの濁点ボイスの悲鳴が領内に響き渡った。