003.未来の御用商人との出会い
ほんの数秒の音速を超えた空の旅。
光速も越える魔法もあるが、今は音速で満足している。
領地内の移動だけだったら、音速越えで充分だし。
と言うことで、海まで歩いて1分もかからない、ローリーペッタン王国とエルフティア王国を結ぶ街道沿いの海が見える丘にやってきた。
ブリタニアン領が発展すれば、丁度、門兵が立つ城郭の入り口になると思われる場所だ。
マーリンのパンツをこないだ魔法創造した魔法で綺麗にしてから乾かしてやり、お父さまたちの近くに近寄っていく。
白熱しているお父さまとトルネドさんの交渉中の声が聞こえてきた。
「トルネド、もう少し安くならんか? 今年も小麦が不作でな。小麦畑を増やしてはいるんだが、なかなか収穫量が伸びなくて、困ってるんだ」
両お爺さまから、支援を頂いてやっと運営できるような貧乏なブリタニアン領なので、お父さまも必死だ。
肉や魚なんて、転生してから食べたことがない。
野菜、野草、果物がメインのおかずで、ヴィヴィアンの素材の味を生かした料理が不味かったら、耐えられない食事事情だ。
まぁ、素材が美味しいんだろうけど……。
「お父さま」
お父さまとトルネドさんの視線がボクに向けられた。
お母さまとヴィヴィアンは、ちょっと離れた場所で、トルネドさんの護衛と思われる冒険者と肉体言語でお話ししている。
お母さま、元気すぎますよ。
「もしかしなくても、こちらのお坊ちゃんは?」
「ああ、俺とエレインの一人息子のランスロットだ」
「ランスロット・ベンウィック・ブリタニアンです。よろしくお願いします」
3歳児らしからぬ挨拶をする。
トルネドの表情が、キリッと締まった。
「ご丁寧にありがとうございます。私は、トルネドと申します。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
トルネドさんの品定めするような視線がボクに向けられた。
「……領主さま、ランスロットさまが次期領主に……?」
「ん、ああ、そうなってくれると平和的でいいな」
遠い目をするお父さま。
お父さまは、継承権のある爵位の男爵なので、そこだけを見れば、ボクは男爵を継いで、ブリタニアン領の領主になることは決定事項だ。
「ランスロットさまの身体が微かに輝いていらっしゃるのは、もしかして……」
「ああ、トルネドの思った通りだ。そして、シーターさまの加護も持っている」
「これはまた……微妙な立場ですね」
これだけのやり取りで察してくれたようだ。
「ランスロットは、まだ3歳だ。これから、どうなるか分からないが、このブリタニアン領を発展させておくことは無駄じゃない。と言うことで、岩塩の価格を頼むぞ、な、トルネド。きっと、将来のランスロットの覚えも良くなるぞ」
お父さまのセリフに真実味を待たせるように、トルネドさんをジッと見つめてみる。
「す、少し、魅力的なんですが、こちらも商売ですので、原価が上がった分、価格に乗せないと……。最近、ドラゴンたちの世代代わりが起きていて、ドラゴンたちの要求も上がってきているんですよ。ですから、岩塩は買うのが遅くなるほど、値段が上がりますよ」
トルネドさんも必死に食い下がる。
「ドラゴンの要求ってなんですか?」
気になったことがあったので聞いてみる。