019.ピピンのちにアットまたはマーク…その4
終わりそうになかったけど、終わらせちゃいました。
もちろん、ピピンの話です。
と言うか、トルネドの大冒険で話が1本作れそう。
「海塩だ。味見してみな」
海塩?
海塩ってなんだよ。
他国で長い間、研究されていて、それでも、苦くて食えないモノしか出来たことがないって聞いているのに………。
でも、味見をしろってことは、その味に自信があるってことだ。
僕はガラス瓶のフタを………。
ガラス瓶?
透明度が高すぎるガラス瓶?
財宝か?
アーティファクトなのか?
「そんな目で見ても、ガラス瓶は売れないぞ。売ったら俺が仕入れできなくなるからな。その瓶に入れる分しか売ってもらえないんだ。どの道、売ったら割れるし、ピピンの所持金じゃ買えないだろうけど………」
このガラス瓶、魔道具なのか?
オヤジは、どうやって手に入れたんだ?
いかん、まずは味見だ。
僕は商売人なんだ。
取引出来ないガラス瓶に気を取られている暇はない。
これは………。
エルフティア王国で取引されている緑色の岩塩ではなく白い塩だ。
いや、ほんの少し緑色が混ざっている。
「海藻が混ぜてある海塩でな、味は自分で確かめてくれ」
知りたい情報をさりげなく教えてくれる。
オヤジはライバルと言ってくれたが、悔しいが、まだ足元にも及ばない。
泣くな。
塩の味が分からなくなる。
僕は指の先に、少し海塩を付けて口に入れる。
ああ、ダメだ。
これはダメだ。
もう岩塩を使おうとは思わなくなる。
この味をしったら、岩塩は雑味がひどすぎる。
ただ、塩辛いだけだ。
海塩の口に広がる味は、しょっぱいだけでなく、甘く、美味しい。
涙が出てきて口に入った。
ああ、もう味見は無理だが、美味しさに感動すると涙が出てくるんだな…………。
ひとつ賢くなった。
「オヤジ、この海塩ってヤツ、美味いな」
この海塩は金になる。
料理の味が数段階上がるんだ。
貴族連中が、こぞって買っていくだろう。
「美味いだろ? でもな、この海塩は最初は高く売れても、すぐに値段が下がるぞ。これは予感だ」
高く売れると思ったら、安くなるとか、それも予感とか……。
「予感って曖昧だな」
「じゃあ言い換えてもいいぞ、塩の価格は下がるぞ。これは決定事項だ」
オヤジがキラキラと子供のような目をしている。
どうかんがえても岩塩を守るドラゴンの世代交代のせいで岩塩は値上がり傾向だ。
そして、オヤジが持ってきた岩塩を超える味の海塩は岩塩とはあからさまに品質が違うので価格競争にも発展しないだろうから高値で売れる。
岩塩は元手がかかっているので、赤字になるまで価格を下げることはないだろう。
海塩の価格をわざわざ岩塩以下の値段にしなくても、売れていくだろう。
それに、価格が下がるって言っても、オヤジは楽しんでいる。
早くそうなって欲しそうだ。
と言うことは、価格が下がっても利益が増える……………のか?
でも、そういう状況だと、人口がそう簡単に増えないから、岩塩と海塩のシェアが入れ替わっているはずだ。
そうなるとドラゴンの介入があるんじゃないか?
つまり、海塩を扱うには、そのリスクもあるってことか………。
ただ、オヤジの態度を見ると、岩塩と海塩のシェアが入れ替わり、塩の流通を仕切る役をドラゴンから交代する可能性があるって感じだ。
海塩の仕入れ先であろう隣の国のブリタニアン領の領主はお姫様に一目惚れされただけで、英雄ってわけではない。
確かに近衛騎士団の副団長をしていたが、武勇というよりも知略……いやないな、間違った指揮をしない指揮力があるだけだ。
お姫様はもちろん筆頭魔法士のマーリンさまですらドラゴンには敵わないだろう。
「オヤジ。オヤジのバックについたのは誰だ?」
ドラゴンたちを従えることを出来る人物がいるんだろう。
「別にいないぞ」
あっけらかんと答えるオヤジ。
そんなわけあるか!
「オヤジの言い分だと、岩塩の流通が減るか、岩塩の価格が物凄く下がるってことだろ? そんなことになったらドラゴンが黙っているはずがない。いや、ドラゴンたちがだ。オヤジはそのドラゴンたちを黙らせる何かがあるってことを知っているんだろう?」
「どうしても知りたければ、自分で確かめるか、数年後に酒場に行け。酒場に行って、吟遊詩人が好んで歌う歌を聴くんだな」
否定しないってことは、ドラゴンたちを黙らせる何かがあるのか…………。
それに、吟遊詩人?
吟遊詩人が好んで歌う歌って英雄譚だろ?
数年後ってことは、これから生まれる英雄譚ってことか…。
失礼だが、ベンウィック卿は英雄の器じゃないだろう。
部下に………いや、そういった人物がいるのなら、王都で抱えるだろう。
ベンウィック卿とお姫様の息子が、シーターさまの加護を持ったハイエルフになったと言うのを聞いたことがある。
でも、3歳児だろ?
まさか…………、いや、貴族の3歳児って言うと、屋敷の外に出して貰える時期か!
国王の肝いりで、筆頭魔法士のマーリンさまが、その護衛についたって聞いている。
オヤジはその3歳児に会ったのか?
今回のオヤジの行商の日程を考えればその可能性もある。
「オヤジ…………シーターさまの加護って、そこまでなのか?」
考えられるのはこれしかない。
「…………ああ、噂を全て信じないといけないくらいな」
嘘だと思える話も全て本当にあったことになるレベルなのか?
「紹介してもらえるんだよ……な?」
英雄との人脈…… いや、英雄になる前からの人脈。
なんだよそれは…… いくら金を積んでも買えるモノじゃないじゃないか。
「ここまで辿り着いたご褒美だ。ピピンがきちんと仕事をやり切ってくれたら紹介してやる」
今日一番のオヤジの笑顔がここで見れた。
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オヤジが築き上げてきたエルフティア王国の人脈を引き継いだ。
その引き継ぎに使われたのは、オヤジが仕入れてきた、海塩と光物だった。
海の幸に含まれた光物と、海底から引き揚げられたという光物だ。
1週間でオヤジが貯めていた世界一の武器を買うための資金を越える資金を稼いだ。
そして人脈はそれ以上の価値がある。
オヤジは仕事といったが、儲けながら俺の有形無形の資産を作っただけだ。
孤児院のパトロンにもなった。
エルフティア王国で立場の弱いハーフエルフたちを集めてブリタニアン領での仕事も与えた。
もちろん、給与などの待遇は普通のエルフと変わらない。
犯罪奴隷以外の奴隷も買い占めた。
これは坊ちゃんからの依頼だそうだ。
その他は、料理人ではなく調理に興味あるエルフを集めた。
これはオヤジからの依頼だ。
絶対に必要になるって言っていた。
本当に忙しい1週間だったが、ピピン商会はオヤジとオヤジから仕入れた商品のおかげでエルフティア王国で1番の商会になっていた。
僕はオヤジがやってくれた以上のことをこれから出来るかもしれない子供たちにやってやれるのか?
でも、やらないといけない。
それが、俺の夢だから……。
ああ、その前に僕が一人前になるまで待ってくれている幼馴染にプロポーズしないといけないな。
ブクマ登録ありがとうございます。
脱底辺作者出来るようなペースで増えていて嬉しい限りです。
各章ごとの話の予定は以下の感じです。
第1章 光物を求めて(眷属が増えていくお話)
第2章 〇〇の少女たち(ローリーペッタン王国・エルフティア王国でのお披露目)
第3章 〇〇〇〇陥落(ローリーペッタン王国・学校編)
第4章 〇〇の遺産(エルフティア王国・学校編)
第5章 〇〇工場を救え!(ブリタニアン領でのトラブル?)
第6章 〇〇〇〇〇〇の女の子(〇〇〇で出会った女の子のお話?)
第7章 〇〇崩壊(狂気半島でのお話?)
第8章 戦国ランスロット(海を越えた先の国でのお話)
第9章 三匹が〇〇たり〇〇たり〇〇〇たり(冒険者ギルドでのお話?)
第10章 ランスロット・クエスト(勇者召喚)
第11章 ランスロット・クエスト マグナム(続・勇者召喚)
第12章 〇〇〇〇革命(一気に文明レベルをあげちゃう?)
まぁ、予定は予定であり未定ですけどね。
そんな感じなので、第2章・第4章あたりがエルフティア王国での話になりそう。
その時にピピン商会が活躍する?
あと、ヒロインは第2章以降に出てくる予定です。
ヒロインのひとりの名前は決まっている。
そう、シィルフィ………愛称はシィ……、おっとダレか来た。




