015.風が吹けば桶屋が…その8
顛末。
ローリーペッタン王国ブリタニアン領の謁見の間………。
とは言っても、青空の下に魔道具創造で急遽作った盗難防止の魔法回路が組み込んである宝石を鏤めた純金製の魔道具の椅子があるだけだ。
こういった光物は砂を材料にすると簡単に出来てしまう。
砂をまとめてアイテム収納にしまうと、素材ごとに分類されて塊になってくれる。
その塊になった素材で魔道具創造すれば高価そうに見えるモノも0ペッタンで完成することになる。
実際に、魔力さえあれば素材がなくてもニューロアンドファジー効果で魔力を素材に変換してくれる。
それなら、なぜ素材を使うのかって?
素材に関わっている人の生活と素材の価格を守ることと、魔道具を作って欲しいと頼まれたときに断る理由に使いたかったからである。
個人や身内的理由でならいくらでも作っても構わないと思うけど、領や国…………ひいおじいさまに頼まれたら断れない気がする。
お母さまの方のおじいさまにも………。
まぁ、単なる自主規制だ。
で、青空の下と言っても一辺約20Kmの総ガラス張りのドーム状の屋根が付いているので屋内ということになる。
「さて、ジャイアントシーイール殿の誠意はどんなモノですか? こちらは国を滅ぼされるところでしたんだけどね」
お父さまが座る椅子の前に正座をする幼女………人化スキルを使ったジャイアントシーイールだ。
今は、戦後処理っぽいことをやっていて、お父さまが、厚顔無恥なならず者がお金をせびるようなことを言っている。
あれは、きっぱり言って言質を取られると犯罪になるからぼやかすためにや、法的根拠が全くなく良心に訴えて犯罪にならないように集るためのセリフであって、この場で使うようなセリフじゃない。
それに言うなら、相手は善人でなければならない。
「両国で不戦条約を締結し、二度と争いを起こさない…よ……う………に………」
チラッチラッと、ボクの方を見ながら、お父さまと交渉している。
と言うか、お父さまもこっちを見てるし…………。
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。
甘いお父さまのセリフに乗っかるように、甘ったれたことを言われてるし…………。
誠意を見せろって言われて、誠意で報いなければならないって考えるのは善人だけで、それ以外は突っぱねれば済むだけのセリフだ。
こっちが勝利したんですよ。
むしり取れるだけむしり取りましょう。
「お父さま、ひいおじいさま…………国王さまの許可を得ないで勝手に条約なんて決めちゃってもいいんですか?」
ハッとした表情を見せたお父さまにお母さまが呆れた顔をしている。
「じゃあ、我らは10年間、領地を荒らされても、人間どもへの手出しをしない。これなら、国とは関係ないから、これでどうですか?」
慌てて次の提案をする幼女。
何、ビクビクしてんの?
ああ、ボクが魔道具創造で作った子供用の槍を向けたからか。
ハロウィンの悪魔のコスプレで使えそうな三つ又の槍だが、切れ味は抜群だ。
そもそも、気を使って斬るので得物自体にはそこまで求めていない。
「荒らすも何も、今までは、海上を船で移動中に一方的に人間がやられてただけだよね? こちらが反撃できないのをいいことにね。そもそもこれって交渉する余地あるの? 気絶する前のこと覚えてる? なんでも言うことを聞くから、攻撃を止めてって言ったよね? もう忘れちゃった? 思い出させてあげようか?」
ザクッ
幼女の腿と腿の間の三つ又の槍が刺さった。
「い、いえ、きちんと覚えていますです。はい」
ブルッと震えた幼女。
「じゃあ、なに? お父さまが優しいから、それに甘えて………」
ギロッと睨み付ける。
「も、申し訳ありません」
それからは、戦後交渉と名ばかりの命令をした。
「今まで、沈めた船の積み荷全部」
交渉はまず無理難題を吹っ掛けることから始める。
で、少しずつ条件を緩めて…………。
「わ、我が領内で沈没させた船の積み荷を全部差し上げます。とりあえず手持ちの分は、こちらのアイテム収納の魔道具とともに差し上げます。残りは随時お届けさせて貰います」
あ、うん、言ってみるモンだねぇ。
脅しの効果が抜群って感じだ。
ボク的にはドロップアイテムという食材がたくさん入ったのでウハウハなんで、魔法で作ることの出来る宝石や貴金属を貰っても全く意味がない。
ただ、お父さま、お母さまの目がキラキラしている。
なんでトルネドさんまで?
換金窓口になりたいって?
「坊ちゃん、ありがとうございます」
トルネドさん、ホクホク顔だぁ。
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「あんたたちの国の名前ってあるの?」
まだまだ、交渉の最中だよ。
「ジェリードイールと申します」
いい名前だろうと言いたいのか、ふっふーんって感じの表情をしている。。
ウナギのゼリー寄せってゲテモノ料理の英語読みじゃないか!!
「ウナギのゼリー寄せ……じゃなくて、ジェリードイールは、表向きは今まで通りでいいが、実質、ローリーペッタン王国の自治領ということで」
「どういうことですか?」
「今まで通り、船を襲ってもいいです。逆にどんどん襲って下さい。ただし……………」
「ランスロット、何を言っているんだ」
お父さまが横から口を挟んできた。
「人間を襲えってどういうことだ?」
「あの、お父さま。その話には、続きがあるんですが」
「あなた」
「バン、この戦いに勝ったのは坊主だ。坊主に任せておけ。ついでに領主の座も坊主に任せるか?」
「…………ああ、ランスロットすまん。領主の座は任せられないが、この場は任せる」
「ありがとうございます。お父さま」
「えっと、船を襲ってもいいのは、この3つの紋章を付けていない船だけです。ローリーペッタン王国王家の紋章、ベンウィック家の紋章、貸出用の紋章。これは、ひいおじいさまに確認が必要ですが、航海権を他の貴族に売ろうと思います」
独占してもいいし、航海権で儲けてもいい。
でも、ひいおじいさまには筋を通しておかないといけない。
エルフティア王国には、海がないから、まぁいいだろう。
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「我々、魔物にとって名前は神聖なモノです。名前を授かり眷属になることでユニーク個体へと進化し……」
国名からとって、『ジェリード』だと長いので、『ジェリド』…………。
『男の名前なのに、なんだ女か』とか難癖付けられて、宇宙大戦まで発展するかもしれない。
こういうのは、奇を衒って下手に考えるより最初に頭に浮かんだのベストなんだよ。
「じゃあ、うな子。あんたの名前は今からうな子ね」
シンプルイズベスト。
「そ、そんな適当に名付けられても……」
シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
『ジャイアントシーイール』改め『うな子』が煙に包まれた。
リヴァイアサンの眷属が出来た。
ユニーク個体どころじゃなかった。
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「貢ぎ物として、海の幸を…………」
【超巨大建造物創造】
そこまで巨大じゃないが生け簀を作った。
外側の流れる部分と内側の流れない部分も作ってある。
「ボク、マグロとかカツオとかの光物だい…………美味しいらしいらから食べてみたいんだ」
やっべぇ、こっちの世界ではまだ食べたことないから、大好きなんて言っちゃダメだった。
「はぁ?」
「だから、そこの生け簀が一杯になるようにしておいてね」
そう、この光物こそが、今回の交渉事で一番決めたかったことだ。
「は、はい」
「ト……」
「喜んで管理させていただきます」
トルネドさん、早いよ、早いよ、早いよ。
で、トルネドさんのお店はエルフティア王国からブリタニアン領へ引っ越しが決まった。
トルネドさんの引っ越しが決まって、トルネドさん以上にお父さまがかなり喜んでいた。
そして、ジェリードイールの国民は日々光物を求めて年中無休無給で東奔西走することになった。
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「さすがはお父さまです。お父さまの言う通りに、木剣を真剣に振り下ろしたら、信じられないくらいの利益がでました。最初、素振りするのに、なんの意味があるかと思ったけど、こういうことだったんですね!」
目を泳がせながらのお父さまの乾いた笑いが印象的だった。
とりあえずここで第1章が……………たぶん20%ほど終わった。
そして、リハビリはまだ続く……。
章名はある程度決まっていて、それに合わせて話を考えるだけ
第1章 光物を求めて
第2章 〇〇の少女たち
第3章 〇〇〇〇陥落
第4章 〇〇の遺産
第5章 〇〇工場を救え!
第6章 〇〇〇〇〇〇の女の子
第7章 〇〇崩壊
第8章 戦国ランスロット
第9章 三匹が〇〇たり〇〇たり〇〇〇たり
第10章 ランスロット・クエスト
第11章 ランスロット・クエスト マグナム
第12章 〇〇〇〇革命
って、ここまで本当に書くのか?




