014.風が吹けば桶屋が…その7
隠れているつもりなんだろうか?
さっきから、ボクの隙を窺っている大きな気配がある。
実際、きぃっつい修行さえ積めば、気配を探ることくらい、魔法に頼らなくても簡単に出来るようになるぞ。
それはともかく、ボクは隙を見せるためにフラフラと海岸に向かって飛んでいく………。
フィッィィィィッシュゥゥゥゥゥゥッ
引っかかったようだ、ちょろすぎるぜ。
マジで間抜けな大きな気配がボクの真下に来た。
大きな気配がそそくさと真下に来ただけだよ。
本当に餌に喰らいついてフィッシュしてたらボク喰われてんじゃん。
ザァッパァァァン
いきなりの音にマーリンは驚いている。
これだけ大きい気配なら、普通気付くでしょ?
大きな水しぶきの中から、大きな口を開けた大きな何かが現れた。
一度攻撃を食らうとか、全部の攻撃を受けるとか、ボクはバトルジャンキーじゃないので、サクッと攻撃を避けて、鑑定魔法を使う。
【鑑定】
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【ジャイアントシーイール】
全長1,681m、重量475万t。
『クイーンオブうなぎの蒲焼』の素材。
これを食べなくては、蒲焼きを語れない。
巨大なので斬って千切れた部分からドロップアイテム化。
素材としても美味しいが、
完全回復魔法をお持ちの方には、
何度でもドロップアイテムが楽しめる美味しい仕様。
シーサンペントよりちょっと硬いくらいだから、楽勝楽勝。
ちなみに人化スキル持ち
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枯れたと思っていた涎がダラダラと出てきた。
ゴックン
「ハイパァァァ手加減攻撃ぃぃぃぃぃぃ」
ジャイアントシーイールが死なないように手加減を加えた攻撃をする。
まぁ、マーリンをさっきのようにぶつけるだけだが…………。
さすがに効かないようだ。
となると、マーリンが邪魔になる。
いや、最初から邪魔だったけど、仕方なく使っていただけだ。
いや、ほんとだよ。
ボクを鬼畜みたいに言わないでくれ。
では、マーリンは、お父さまへの伝言役に仕立てて、厄介払いをしよう。
伝えてもらう伝言は、危険なので隠れていて欲しいにしよう。
でも、隠れる場所がない。
隠れる場所がなければ、作ればいいじゃないですかぁ。
どこのマーリンですか!
でも、作っちゃうよ。
【魔法創造:超巨大建造物創造】
土魔法を駆使し汗水たらして建物を作るようなことはしません。
建物を作る魔法を作って簡単に作れるようにします。
苦労して土魔法で建物を作っても、どうせそのうち一瞬で建物を造れるようになるんですから、最初から一瞬で作れるようにしておきます。
作るのは、城郭に囲まれた都市………。
さすがに、中の街は後から作ろう。
そうなると作るのは城郭のみだ。
でも、それだけだと芸がない。
そうだ、敵に備えて周りに水堀があった方がいいな。
と言うか、ダレが攻めてくるんだ?
森から魔物や獣が来る…………、あ、ドラゴンが来るかもしれない。
そういうことにしておこう。
ドラゴンなら、空から襲ってくるかもなので、水堀よりもドームで囲って安全性を確保しよう。
水堀は材料確保のために作っておく。
砂漠の砂をつかって、ガラス………マジックミラーに……。
中から見えても、攻めてきた敵が外から中を見えるようにしておくのは安全上問題が出てきそうだからね。
だから、ダレが攻めてくるんだ?
城郭は3層で、岩、マジックミラー、岩って感じだ。
岩の部分には通路を作って、ついでに配管もしておいて、水が流れるようにしておく。
雨どいの代わりだね。
【超巨大建造物創造】
後の細かい部分は、ニューロアンドファジー効果に期待して、魔法を発動させる。
マーリンを言いくるめて、城郭について伝言を頼みお父さまたちのところにゆっくりめに放り投げた。
さて、みんな中に入ったようだ。
【御鏡流:斬山剣】
刀で山を斬る技。
本来、両刃の剣でやるモノではないが……刀で斬るんだったら、斬山刀にしとけってやつだ。
本質的には、気を乗せた短い刀で、それ以上の太さのモノを斬る。
習っていなくても、見様見真似でこれくらいは出来るんだよ。
空中にいるから、地面に剣をぶつける心配がなくて気が楽だ。
だから、気持ち良くジャイアントシーイールの胴もこうやって真っ二つだ。
シャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
少し遅れて、ジャイアントシーイールの悲鳴が聞こえた。
と言うか、うなぎって鳴くのか?
ああ、今、鳴いてるね
【完全回復:ジャイアントシーイール】
アイテム収納の自動収納が発動したので回復してやる。
さてさて、こいつのドロップ品は……。
約180億3705万食分の国産天然うなぎの白焼き(特上)!?
くっくっくっくっくっくっくっくっ、笑いが止まらない。
調味料さえ手に入れば、これを美味しくいただけるってことですね。
そして、斬って回復の作業を繰り返せば、無限にこのアイテムがドロップされるってことですか?
マジで、笑いが止まらない。
お父さまの言う通りに、木剣を真剣に振り下ろしたら、新たにこんなんゲットしちゃいました。
さすがはお父さまです。
マジで、素振りするのに、なんの意味があるかと思ったけど、こういうことですか!
と言うことで、作業開始!
延々作業をしてたら、10回目で、攻撃が外れた。
あるべきところに、ジャイアントシーイールの胴が無くなっていた。
だから、木剣が空振ったんだ。
そもそも、木剣自体はジャイアントシーイールに届いていないんだけどね。
ただ、ジャイアントシーイールが消えたんだ。
いや、気配はある。
「も、もう止めて、なんでもするから…………」
ジャイアントシーイールの気配のする幼女が、そんなセリフを呟き、海へ落下しだした。




