死んだ俺は友達と「先輩」と出会いました
お読みいただきありがとうございます。今回は、いわゆる説明回にしたかったのですがずるずる長くなってしまいました……それでは最後までお楽しみください!
「じゃあ、どこから回りますか?」
「服屋!」
朱音が、元気の良い挙手と共に提案する。
「いやお前その服もらったばっかだろ」
「それはそうだけどさー」
「じゃあこうしませんか?」
ぐずる朱音を見かねたガイドさんが、こんな提案をした
「皆さんには、行っていただきたいところがあるので、そこにいってもらったあとは各自自由に行動、というのではどうでしょうか!」
「それならいいかもな……ってちょっと待てい!」
「――?航さん何かご不満でも?」
「不満もなにも、なんにもこの街について知らない俺たちが各自自由に行動ってのはちょっと危なくねぇか?」
「大丈夫ですよ!ここの皆さんは優しい方ばかりですし!……まぁたまに気性の荒い方もいますけどね!」
その気性の荒い方が一番困るんですけども。
そう言いかけた俺だったが、浩輔に遮られてしまった。
「じゃあまず、その行ってもらいたい場所に案内してくれますか?」
「わかりました!じゃあついてきてください!」
くるりと回ったガイドさんの後を、一列になってついていく。
「ここです!」
ガイドさんが、手で示した先には高層ビルのような木が生えていた。
「なんだこれ?」
「いや、どう見ても木でしょ」
俺の間の抜けた問いに、朱音がすかさずつっこんだ。
「やっぱりそう思いますよねー!」
ガイドさんをスルーして、木に近づく。
「あああああああ!待って待って!」
叫びながら俺たちに向かってガイドさんが走ってくる。
「私の許可がないとここには入れないんです!」
「ガイドさんの許可……ですか?」
「お前そんなに偉かったのか」
「そもそもこの木って入れるの?」
「ふっふっふー聞いて驚かないでください!何を隠そう私は、ここ穢対策所のトップなんですよ!」
ドヤ顔で腰に手を当てるガイドさんと、ぽかんとする俺たちが向かい合う。
「な、なんで黙っちゃうんですか?」
「いや、なんでって言われましても……」
「ちょっと信じられないかなーって」
「そ、そんな!航さんは信じてくれますよね」
「面白い冗談だと思うぞ!」
「う……そ、そんなー」
そんな泣きそうな顔をされても、思ったことを言っただけなんですけど。
「ふ、ふん!もうすぐわかりますよ!」
肩を怒らせながらガイドさんが近づいていく。
何やら話しているそうなので近づいて聞いてみる
「おはようございます……私です……」
「お、おはようございます……あの、泣いてます?」
「泣いてないです……早く開けてください」
鼻をすすりながら、泣いてないことを主張するガイドさんの一声で木の幹が動き出した。
「おおっ」
おもわず木と距離をとる。
「はーっはっは!どうですか!ほんとだったでしょう!?」
「ああ……悪かったな……」
代表して謝罪する俺に、「分かればいいんですよ!」と機嫌を直したガイドさん。
「じゃあ、入りましょうか!」
「おう、案内頼むぞ」
「任せてください!」
木の中は、外見からは想像がつかないほどの設備や内装だった。
歩きながらガイドさんの説明を聞く。
「ここはですね、先ほども言いましたが穢対策所と呼ばれてまして、穢闘師の活動の記録や、穢の発生の管理を請け負っています」
「じゃあここが俺たちの仕事場になるって訳か?」
「いえ、皆さまは来る事はあまりありません!」
「どういうことですか?」
「穢闘師の皆さまは、ここから出される穢の発生情報が確認されたときにだけ、ここに来ていただきます」
するとそこに1つの連絡が入った。
「第5区において穢が発生しました。担当の穢闘師は至急本部にお越し下さい」
「あらら、出てきちゃましたか!」
なんでガイドさんちょっと嬉しそうなの?
「これって俺達が行かなきゃならないやつなんですか?」
「いえいえ!あの区は皆さまの担当ではないので大丈夫ですよ~」
[担当って……」
言いかけた俺の横を、1つの人影が通り抜けた。
「久しぶりに出てきたな。おいエロ妖精、状況は?」
「だからその呼び方はやめてください!」
いつか聞いたユニークな名前の名付け親はこいつだったらしい。
「はあ……今回の穢は、人型で武器などは持っていないようです」
「了解だ」
ガイドさんに返事をした後その男は、こちらを向いた。
「新しい穢闘師か?」
「ええ!そうですよ!」
俺たちの代わりにガイドさんが答える。
「よろしく頼むよ、先輩」
握手をしようとした俺の手を払いのけ男は
「こんな貧弱な体つきで穢闘師とはな。何日もつか見ものだな」
と言った。
俺たちを馬鹿にしたような目で見る男に、朱音がキレた。
「ちょっとあんた!こっちは挨拶してんのに、何をエラそうなことをごちゃごちゃ抜かしてくれてんの?」
「威勢は一人前ってとこか」
「んんんんんんん!!!」
だんだん顔が近づいていく両者の間にガイドさんが割って入る。
「まあまあ!落ち着いてくださいよ!初対面で喧嘩なんかしたらダメですって!」
「だってこの男が!」
「朱音、それぐらいにしとけ」
さすがに俺も止めに入る。
「あんたも俺たちの相手をしてる暇なんかないんじゃないか?」
「そうですよ隼人さん!早く穢のもとに向かってください!」
「…………」
隼人と呼ばれた男はじっとこっちを見た後、くるりと背を向け穢れのもとへと向った。
「申し訳ありません!隼人さんは穢闘師としては申し分ない人なんですけど、人と話すのが不得意な人で……」
ガイドさんがフォローを入れる。そこにオペレーターの人の声が聞こえた。
「穢闘師、会敵!」
「あ、わかりました映像を出してください!」
ガイドさんがそういうと、部屋の真ん中に隼人が戦っている姿が映された。
「じゃあこの時間を使って皆さんに説明しましょう!」
ガイドさんがこちらを向いて手を叩いた。
「よろしく頼む」
「よろしくお願いします」
「うん!よろしく」
「はい!じゃあまずは穢の基本から行きましょう!」
「穢には大きく分けると人型と獣型に分けられます。今隼人さんが戦っているのが人型ですね。獣型は人型に比べて大型で力が強い傾向がありますが、めったにてこないのでそこまで心配することもないですよ!」
「なるほどな」
「続いて穢の倒し方ですが、この前は力の弱い穢だったので私がごり押しで倒しましたけど、穢にはそれぞれ弱点があってそこを攻撃しないと倒すことができません!」
「その弱点はどうやって見つけるんですか?」
「穢にある程度のダメージを与えるとその弱点が光るのでそこを狙っていってください!
あ、ちょうど光りましたね」
ガイドさんが、映像を指差す。そこには背中の一点が光っている穢が映っていた。
「アレが弱点なの?」
「そうですね!」
朱音の問いにガイドさんが答える。
「いやー!それにしても相変わらず見事な戦い方ですねー」
確かにその通りだ。
素人の俺から見てもあいつの動き方は達人のものだった。
一太刀が確実に、穢の体を削っていく。
俺の乏しい語彙力では表現しきれないものだった。
「あ!倒しちゃいましたね!」
見とれてしまっている間には隼人が穢を倒してしまった。
「……あんまり説明できませんでしたが、とりあえず今伝えたことを覚えておけばなんとかなるので安心してください!」
「ほんとですかねー?」
浩輔があからさまに疑うが、ガイドさんの注意は他のところに向かっているようで
「あ!もう隼人さんが帰ってきちゃいますね!さっきみたいになっちゃうと困るのでとりあえず外に出てください!19時にまたここに来てください!
おいたてられるように俺たちは、外に出されてしまった。
「さてと……どうしたもんかね?」
朱音が待ってましたと言わんばかりに答える。
「とりあえず賑やかな方に行かない?」
「そうだな、とにかく人のいるとこに行ってみるか」
浩輔も賛成のようだ。
「よし!じゃあ決定だ!……でもやっぱ危なくないか?」
やっぱりそこの不安は拭えない。
「大丈夫だって!ガイドさんも言ってたでしょ?」
いやそのガイドさんの言葉のせいで不安なんですけど?
「なんかあったら逃げればいいだけだろ?」
なんかあった時点でもう遅いと思うんですけど?
だが、こんなところでぐずぐずしている訳にも行かない。
「じゃあ……行くか」
「やったぁ!」
朱音が、小さなが子供のように喜ぶ。
「まずは、あっちの方に行ってみるか?」
浩輔が建物が並んでいる方を指さす。
「そうだな、そこに行こう」
こうして俺達は、不安と期待を、約1名は不安と不安を胸に街に向かった。
最後までお読みいただきありがとうございます!次回は、日本に帰ってきたら書きますので7月末になるかと思われますが、お待ちただければ幸いです。それではまた!