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♯4 触れ合う日に

「――で、だ」

似非えせ金髪、キミのその不自然な密着について話し合おうとおもうのだが、いかがかな?」いまオレに抱きつくように体を密着させているセイに、やさしく話しかける。

 電車に乗った俺たちは、これからの恒例になりそうな通勤通学ラッシュなるモノに巻き込まれている。会社に行く社会人、学校にいく学生、どこにいくかわからない人たちを巻き込んだ一大イベントである。同じ時間に大量に人が移動すれば、これも必然というものだろう。

「地毛だよ! 地毛! しょうがないじゃないか……こうも混んでいたら」

 セイの言うとおり、たしかに電車は混みあっていた。

「それに……」セイがより一層強く抱きついてきた。

「こういうの……いやかい?」うるんだ瞳でセイが見つめてきた。

「……お前、次の駅で降りろ……いやでも降ろすからな」

「ひ、ひどいよアカツキ!」

 冷たくあしらったオレにセイが抗議のアピールを繰り返している。

「あ、あかつき君、電車では静かにしないと」背中から結の小声が聞こえてくる。結も苦しそうに、この人の波に耐えていた。

 さっき止まった駅からの乗車客増員により、一歩も車内は動けるような状態でなくなった。セイはオレの前になり、結はオレの背中へ固定されている。背中には結の体温となんとも言えない感触が伝わってくる。

 この柔らかい感触は是非、やめないでいただきたいものです。この目の前の似非外人がいなければ、これはこれで天国なのに……

「セイ、マジな話、その髪だと目立つな……高校で大丈夫か?」

「生まれつきだから慣れたけど、きっと大概たいがいは無視されるよ……まるで最初からそこにいなかったかのようにね」セイが悲しそうな表情を浮かべた。

 碧眼に金髪、こいつは見た目はたしかに日本人ではない。親のどっちかが外国の人で、その血が強く出て、どっからどうみても外国人だ。良くも悪くも顔が美形過ぎ、気持ち悪いと子供の頃から無視されていた。そんな子供の時にセイと出会った。

 家の裏手にセイの家があったらしいのだが、最初まったくセイに会わなかった。どうも家で引きこもってたらしい。

 ある日、近所の公園で、既に仲良くなっていた結と遊んでると、金髪の男の子と女の子が公園にやってきた。

 オレは見たこともない金髪の少年に近付き「おい金髪! おまえ名前なんていうんだ?」と話しかけた。

 結は止めたが、目の前の金髪の少年にオレは興味津々《きょうみしんしん》に聞いた。金髪の少年はずっとうつむいたまま、返事をしなかった。

 そんな金髪の少年にオレは「その髪、キレイだな! きらきらしてて!」と言った。

 そう言うと金髪の少年は頭をあげて「ぼく……セイ……セイっていいます!」と答えた。

 ――それから、セイと結の三人で遊ぶようになって、現在に至るわけだ。

 それと、もう一人いたっけ……

「セイ〜れいちゃんも、今日から登校だっけ?」

「あ、そうそう〜やっと結と同じ制服着れるようになったのに、みんなが卒業しちゃったって……少しご機嫌斜めだったけどね」セイが優しく笑う。

 初めてセイと出会った時に、セイと一緒に金髪の少女がいた。

 彼女はレイ、セイの妹だ。

 後から聞いた話だと、兄とは違いとてもとても活動的な妹のレイは、家に閉じこもっていたセイを、同じ年くらいの俺らが遊んでる公園へと、無理やりに連れ出したらしい。

 結果、ちょうどいたオレたちと仲良くなったことで兄のセイは明るい性格になり、他に友達も増えていき、いま男のオレに嬉しそうに密着してくる、変態さんへと成長した。

 ――レイ、きみの行動は間違っていたかもしれないな……いまなら声を大にして言える。

「そうそう、レイがアカツキに制服見せたがってたよ」

「え? なんで? 結の制服を三年間も間近で見てきたんだぜ?」

「そう言わず、見てやってくれよ……な?」セイが真剣な顔で頼んできた。

「わ〜ったよ! なんで女って女って制服とか見せたがるんだ?」

「そう言えば結も、高校の制服見せたいからって、春休み中に見せにきたよな?」

「わ、わたしは……」結が背中をグッと掴んできた。

「ん? 結、押されたか?」

「……ばか」結はそう言って、電車を降りるまでしゃべらなかった。




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